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2つの世界の物語 ~魔力の化け物と呼ばれた少女の物語~  作者: 星あんず
第3章 とまどいの一歩(後編)
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43 タミネアの王都へ

これからは、マルルカのお話になります

 少し遡って――


 クローネ王から「セフィス真教大神官に会ってこい)と、めいを受けたラケムとマルルカの二人はタミネアに向かっていた。タミネアとの国境までは2日、そこからタミネアの王都までは1日の距離だ。

 秋晴れの抜けるような青空が気持ちいい。

 タミネアへの街道の両側にはリンゴ畑が広がっていて、真っ赤になったリンゴを収穫している真っ最中だった。今年は大きな災害もなく、クローネ王国は国中が豊作に恵まれていた。


 私とラケムさんは、タミネアまで乗り合い馬車で移動することにした。馬車の中には、私たち二人のほかに、タミネアに住む友人に会いに行くという男の人が一人と、タミネアにしかない薬草を買いにいくという男の人の4人が乗っていた。


「もう収穫祭の季節だね。今年はどこも豊作だったから、みんな笑顔で祭りを楽しめる」


「収穫祭?」


「マルルカは知らないの? ブリドニクでも盛大にやってたと思うよ。あそこは、海の幸、陸の幸にも恵まれているいいところだからね。

 神様に豊かな恵みを感謝するお祭りだよ。広場にはたくさんの出店が出て、一番賑やかな時だよ。街中の人が歌ったり踊ったり…… それから、吟遊詩人の人たちやお芝居を見せてくれる人たちもやってくる。彼らにとっては一番の稼ぎ時だね! ブリドニクの御使い様の話も吟遊詩人がきっと歌を作って披露してると思うよ」


 ラケムさんは、いたずらっぽい笑顔を私に向ける。

 ブリドニクでやってしまったことが歌になってるなんて!! 知らなかった。

 私は、とっても恥ずかしくなってしまって、ラケムさんの顔を見れずにうつむいた。


「おや? 妹さんは祭りのことを知らないのかい?」


 薬草の買い付けに行くという男の人がラケムさんに尋ねる。


「妹と私は、兄妹と言っても、離れて暮らしていましたから……

 妹のからだが弱くて、ブリドニクの親戚のところで静養させてもらってたんですよ」


「あぁ、ブリドニクはいいところだからねぇ。静養にはぴったりだ!

 御使い様も目にされたのかい? お嬢さん」


「いえ、私は家の中にいたので、よくわかりませんでした」


 私はそう答えて、この話は終わりにしたい――と思った。


 乗り合い馬車では、知らない者どおしが狭い空間を共有するから、自然と会話が生まれる。

 旅慣れている人は、あまり個人のことを話題にせず、あたりさわりのない会話をする。相手の答えで、これ以上は話を掘り下げてはダメだと察すると、おしゃべり好きの人は違う話題に変えるし、そうでない人は、そっと口を閉じる。

 それがマナーなんだそうだ。なんとなく相手の気持ちを察すること……



 男の人は、それ以上聞いてくることはなく、外の景色に目を移した。

 私は知らない人とおしゃべりをするのは得意じゃないから、静かな人たちでちょっと安心した。


 私とラケムさんは王都に暮らす兄妹という設定で、タミネアに入ることにした。

 ジャイロと一緒よりは、気持ちも落ち着いて旅ができる気がする。あるいは、秘密にしていたことがなくなったからかもしれないけど……


 こうして、私とラケムさんの旅は順調に進み、タミネアの王都へと向かっていった。



 タミネアに入ってすぐの街は、山のふもとにある小さな街だった。

 こんなに近くで山を見るのは初めてかもしれない。秋も深まってきて、街の木々は色づいていて、とてもきれい。少し街を出ると深い森になっている。今の季節はキノコがたくさん採れるみたい。


 タミネアのキノコのスープは絶品だ。深いスープ皿の上に、パイ生地で封をしてあって、それを割ると、森の深い香りがキノコの香りが広がる。キノコのうまみがスープに溶けていてすごくおいしい!


「明日の朝出ると、夕方にはタミネアの王都に着くからね。距離はそれほどないけれど、これからずっと山道を登っていくよ」


 タミネアは小さな国だけれど、地理的にも守りが硬く攻めにくい。また、タミネアは馬を操る技術にたけていて、山岳での騎兵の機動力はクローネも及ばないらしい。


「兵力ではクローネが上だけれど、タミネアを力だけで落とそうとするのはかなり困難なんだよ。でも、クローネにタミネアを攻める理由もないし、タミネアにしても食料はクローネに頼るところが大きいから、お互い戦う意味はないのだけれどね」


 ラケムさんが、道すがらいろいろと教えてくれた。

 それにしてもかなりの山道だ。曲がりくねった道を、今度は馬に乗ってゆっくりと上がっていく。昨日着いたふもとの街は、いつの間にかずっと足元に小さく見えた。

 途中で休憩を取りながらゆっくりと進んでいく。そして、予定どおり夕方にはタミネアの王都に着くことができた。


「ずっと馬の上で、マルルカも疲れたでしょ? ここは標高も高いし、今日は、ゆっくりと体を休めるといいよ。明日は朝早くから、セフィス真教の大神殿に行くからね」


「私、少し街を歩いてきてもいいですか? そんなに遅くなりませんから」


 ラケムさんは私のお願いに、「王都の中は治安もいいから心配はないけれど、遅くならないようにね」と言って、許してくれた。




 こんな山の中腹にある街は初めて! 街の家は斜面に沿って建てられているから、自分の足元におうちの屋根があったりする。山側の家は岩山を掘って部屋がつくられているらしい。どこから見ても絶景が広がる。

 王宮は、街の外れにあるやまの壁面に沿って天高くそびえている。山なのか、それともお城なのか……

 セフィス真教の神殿は、王宮とは反対の外れ、崖側にあるようだ。さほど大きくない街は、迷路のように入り組んでいて坂道が多かった。

 ちょっとした観光気分で散策してたとき・・・・・・


(……??……)

 今すれ違った片目の男の人、なんか変な感じがした。なんだろう? この違和感……


 不思議に思いながらも、遅くならないうちにラケムさんの待っている宿に帰ることにした。



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