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2つの世界の物語 ~魔力の化け物と呼ばれた少女の物語~  作者: 星あんず
第3章 とまどいの一歩(後編)
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28 マルルカのいらいら

 レイスさん、何てこと言ってるのぉー!!


 最初のあいさつで注目されてしまったから、ずっと私おとなしくしてたのに……

 全員がまた私のほうを見ている。ジャイロさんは、「またお前か?」っていう顔をしてるし。


「いえ、別に力を貸したとか手伝ったわけではなくて…… 偶然です!

 偶然、森のおうちにレイスさんがいるときに、神の力が現れて……

 私も、本当にびっくりしたんです!

 私と兄は、レイスさんとメイちゃんが少しでも心を休めてくれたらいいなって思ってただけで」


 なんとかごまかせた――と思う。



「それにしても、またも神、神の力……か・・・・・・

 教会に続き、タミネアまで・・・・・・やっかいよのぉ」



 クローネ王は、難しい顔をして考え込んでいた。そして、ふと思い出したかのように、ラケムさんに目を向けた。


「ラケム、タミネアのセフィス真教の大神官には会えたか?」


 クローネ王は、あれからずっと目を瞑ったまま座っているラケムさんに再度聞いた。


「はい、ほんのわずかな時間ではありましたが、お会いすることができました。

 これから報告することは私の印象なので、正確な情報ではないことを最初にお断りしておきます」


 ラケムさんは、そう言って、セフィス真教での出来事を話し始めた。


 タミネア王国のセフィス真教は、セフィス教とは異なり、タミネアの地で神と対話すること――祈りを捧げることを第一と教える。

 真教は、クローネ王国のセフィス教と違って積極的に民にセフィス様の言葉を伝えることはせず神に祈りを捧げ続けることこそが、自分自身はもちろん、人びとの心にも安寧を与えることができると信じていた。それ故、セフィス教からは「隠者の宗教」と揶揄されていたのだった。


 真教の大神官は神殿の奥深くでひたすら祈りを捧げていると言われ、面会できる可能性は限りなく低いと考えられていた。


「大神官様は、セフィスの巫女アメリア様にはあまり興味をお持ちではないようにみえました。そして、プーレフェミナ様やレイス君、メイさんにも……

 『神様は、私たち一人ひとりの心の中にいらっしゃいます。どうか、ご自身の中の神様のお声をお聞きください。心からの祈りを神様に……』 とだけ、おっしゃいました。

 ブリドニクの御使い様にはお会いしたかった――と、ポツリとこぼされましたが……」


「つまりは……セフィス真教は、タミネアのプーレフェミナの子探しには、かかわっていない――そういうことだな?」


「そうお考えになってもよろしいかと……」


「己の中の神の声を聞け――か……」


 クローネ王はそうつぶやくと、円卓を離れて部屋の中を歩き始めた。

 王の足音だけがコツコツと広い部屋の中に響く。




 グゥゥウウウー……


 私のお腹の音が、静寂を破るように盛大に鳴り響いた!

 あぁー 今日、なんにも食べてなかったんだ。少しでも食べておけばよかった。

 今さら後悔しても遅い。


「またお前かよー!」


「姫君を空腹にさせてしまったようだな。

 ジャイロ、食べ盛りの2人を連れて行くがよい。ラケムとリーシャも席を立つがよい。

 あとは、3人で茶飲み話でもしていようぞ」


 ジャイロさんが呆れたように言うと、王様は、レイスさんと私、それからジャイロさんの友だち枠にも、話し合いの終わりを告げたのだった。



***************************



「ったく、なんでお前らもいるんだー」


「ほらっ! 僕たちはジャイロの友だちですからねぇ。

 親交を温めなくては――そうでしょ? リーシャ」


「3人そろうことなんか、ほとんどないし――いいんじゃない? たまには……」



 あの部屋を出た後、ジャイロさんが「こういう場所は肩凝るだろう? 気楽に飯食えるとこに行こうや!」とレイスさんと私に声をかけてくれた。

 着替えを済ませると王国の紋章のない地味な馬車が用意されていて、馬車の中では、ジャイロさんの友だち枠2人が私たちの到着を待っていたようだった。



 ジャイロさんは、にぎやかな食堂兼酒場のようなところに連れてきてくれた。結構大きな店で、時間的にも、ほとんどのお客さんがお酒を飲んでいて、どのテーブルからも楽し気な話声や笑い声が響いてくる。


 レイスさんはいつものボサボサヘアに戻れたからか、ラケムさんやリーシャさんにも心を許したせいか、なんだかとってもリラックスしているように思える。あまりおしゃべりをしないレイスさんが、とても楽しそうに話をしている。それはそれで、良かったと思うけど…… 

 

 その反面、私はというと・・・・・・


 なんだかとっても気分が良くない。「レイス」に対して特に!

 こんなイライラした気持ちになるのは初めてで、口を開いたらそのままレイスに怒りを向けてしまいそうで、だまって目の前の料理をもくもくと口に運んでいた。


「マルルカ、どうした? 食ってばかりじゃねぇかぁー 相当腹が減ってたのか?」


 久しぶりのお酒に気分が良くなっているジャイロさんが、私に声をかけてくる。


「ほっといてください……」


「マルルカ……その、怒ってるよね……? 

 おれ、約束破るつもりじゃなくて――その……」


「もう、いい。レイスの好きにしたらいい!」


 レイスの声を聞いていたら、余計にイライラしてきて、つい語気を強めて言い放ってしまった。

 悪気がないのはわかるだけに……このイライラした気持ちをぶつけるところがない。

 なんだか、楽しい雰囲気を壊しちゃったみたいだ。みんなが無言になっちゃった。

 嫌な子だなぁ……私って――

 


「私、少し外の風にあたってきますから……あの、ごめんなさい」


 少し頭を冷やさなくっちゃ・・・・・・

 そう思って、席を立って店の外に出ようと隣りのテーブルの横を通り過ぎようとしたとき、突然、手首を掴まれた。


「何っ!!?」 



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