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2つの世界の物語 ~魔力の化け物と呼ばれた少女の物語~  作者: 星あんず
第3章 とまどいの一歩(後編)
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25 クローネ王宮

第3章 後半です。

 クローネ王宮内

 ジャイロさんは馬車でまっすぐ王宮を目指すと、門の前で馬車を降りた。私たちは門番の人に咎められることなく、ジャイロさんに続いて王宮の大きな門から城の中へと入った。

 ジャイロさんって本当に王様の家臣だったんだ……。


「市井の馬車じゃこの中に入れねぇ…… 悪いが少し歩いてもらう」


 城門を通り抜けると、そこには手入れが行き届いている広大な庭園が広がっていた。庭園には低木が石畳に沿って植えられており、その両側には青々とした芝生と金色に輝く噴水が朝の光を浴びて、キラキラとして見えた。そしてその庭園の奥のほうには白亜の城が見える。

 城と言っても魔王城しか知らない私は、「これくらい広くて見通しがよかったら魔物が出てもすぐわかるし戦いやすいな」って思う。



「あいつには、夕刻くらいには会えるように時間をもらう。それまでは、ゆっくりと休め」


 城の中に入ってすぐにジャイロさんはそう言うと、私とレイスさんをおいてどこかへ行ってしまった。入れ替わるようにしてお城のメイドさんのような人がやってきて、深くお辞儀をする。

「お部屋へご案内いたします」


 私とレイスさんはメイドさんに別々の部屋に案内された。ホッと肩の力が抜ける。

(ずっと馬車の中でレイスさんと一緒だったから、緊張してたんだなぁ……)

 部屋のテーブルには軽食が準備されていたけど、私は手を付けないままベッドに入るとすぐに眠りについてしまった。



 ノックの音で目が覚めた。よく眠れたみたい。

「謁見のお時間が近づいてまいりました。お召し変えのお手伝いをさせていただきます」

 メイドさんが2人入ってきて、身支度の準備をしてくれるらしい。

 湯あみさせてもらって、準備してくれたドレスを着せてもらうと、なんだか魔王城のことを思い出してしまう。


 淡い黄色のシルクのシンプルなドレスだ。髪の毛をハーフアップにまとめて同じ色のリボンを結んでくれた。


「お似合いでございますよ」

 メイドさんはほんの少し笑みを浮かべると、そのまま部屋のドアを開けて室外に出るようにと促している。

 部屋の外には、ジャイロさんとレイスさんが待ってくれていた。

 ジャイロさんもレイスさんもきちんとした格好をしている。レイスさんはいつもボサボサの前髪で顔半分くらい隠れているのに、今日は前髪がきれいにオールバックに撫でつけられていて、ずっと恥ずかしそうにして顔を隠すように俯いている。紫水晶のような瞳がとてもきれい。


「2人ともカッコイイネ!」

「見ないでくれー!!」

 私の視線を感じたレイスさんが叫ぶと、ジャイロさんは「そのほうがいいぞー」って言いながら大声で笑っていた。



 ジャイロさんに案内されて、レイスさんと私はお城の中をしばらく歩いた。レイスさんはずっと下を向いたまま・・・・・・

 魔王城もそうだったけど、お城ってどうしてこんなに広いんだろう? ぜったいさっきの部屋にひとりでは帰れないと思う。


「レイス、部屋に入るときは顔を上げろ! 後は2人とも俺の動きのとおりにしろよ。

 声をかけられるまでは話したらダメだ! いいな?

 こういうのは……まぁ、最初の礼儀だ」


 衛兵2人が守っている大きな扉の前までくるとジャイロさんは小さな声で私たちにささやくと、私たちの前に立ち背筋をピンと伸ばして貴族然とした立ち居振る舞いに変えた。私たちもジャイロさんのとおりに背筋を伸ばして、扉が開くのを静かに待つ。レイスさんもかなりがんばっている。


(オルト兄ぃに立ち居振る舞いを特訓されて本当によかった。)


 大きな扉は静かに開いた。


 扉の向こう側の部屋は大きな会議室のような部屋だった。

 大きな丸テーブルに立派な身なりの人たちが5人座っていて、空席は3つ――私たちの席のようだ。

 謁見の間のようなところじゃなくてよかった。確かに私たちがお城に入ってきたまんまの恰好じゃ場違いっていうか、失礼だったかもしれないって思う。だからきっと着替えさせてくれたんだ。


 部屋に入ると、ジャイロさんが深く一礼したので、私たちも少し遅れて一礼する。


「おぉ、ジャイロ! 待っておったぞ。おぬしの後ろにいる者がレイスか? して、そちらのお嬢さんは……?」


 一番奥の席に座る威厳のあるおじさん? が声をかけてきた。たぶん、王様なんだろうな――あっ おじさんって言ったら失礼だ。首が飛んでしまうかもしれない!!

 亜麻色の髪を短く刈り込んでいて、引き締まった体つきをしている。王様っていうからもっとでっぷりとした人かと勝手に想像していたけれど、精悍な感じがする人だ。


「王様、この者がプーレフェミナ・スザンナの息子レイス、そして、ブリドニクの森の薬屋の娘マルルカ――レイスとメイをかくまっていた者にございます。

 2人とも王様にごあいさつせよ」


「レ、レ、レイスです」

「お目どおりが叶いましたこと感謝いたします。森の薬屋の娘 マルルカがご挨拶申し上げます」


 ジャイロさんの言葉の後に、緊張のあまり噛んでしまったレイスさん。私も緊張していたけど、オルト兄ぃから教わっていたとおり、挨拶の言葉を言った後、ドレスをつまむ指先にまで神経を使ってきれいにカテーシーもすることができた。


「……ジャイロ、こちらはどちらの姫君かね?」


 王様はじめ、他の人たちも一斉にじっと見極めようとするような冷たい視線で私を見ている。

 えっ? なんで? ちゃんと相手の身分に合わせた挨拶をしたのに、礼儀作法はきちんと守れたと思うけど…… 不愉快な気分にさせてしまったのかなぁ――もしかしたら、ヤービスとノージスだとお作法が違うのかしら!?

 あっ! 森の薬屋って言ってもどこの森か言ってなかった。失敗した!


 とても不安になってジャイロさんをチラッと見ると、眉間にしわを寄せて頭をポリポリと掻いている。


「いやぁ―― 本当に薬屋にいたんですけどねぇ……変な娘を1人だけ残しておくわけにもいかず、つれてきただけですよぉ」


 変な娘!!??――ダメだ……ここで表情を変えては! 冷静にならなくっちゃ!

 この場所にふさわしい態度をとらなくっちゃ・・・・・・

 私は話しかけられてないから、口を開いちゃダメだ。私は静かにほんのわずかな微笑みを口元に浮かべ何事もなかったように、静かにたたずむ。


「まぁ、よい。この席は改まる席でもない。お前たちも空いている席に座るがよい。

 ここにいる者たちを紹介しよう」


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