24 王都へ
第3章長くなりそうなので、ここで前編とします。
この村からは乗り合い馬車はなかったし、次の街までいく荷馬車もなかったから、歩いていくしかなかった。
「いやぁ、悪ぃなぁ…… もうちょっとだけ歩きになっちまった」
ジャイロさんはそう言うけど、たぶん、昨日、私とレイスさんのペースに合わせたせいだろう。ジャイロさんだったら、昨日のうちに次の街にいけたんだろうな、って思う。
「ごめんなさい、私の足が遅くて・・・・・・」
「ごめん、ジャイロ…… もうちょっと体力つけるようにするよ」
私とレイスさんは、ジャイロさんの後ろをついていきながら謝った。
「気にすんな! 俺の読みが甘かっただけだ!
昼過ぎには、街に入れるから、早めに宿をとる。まぁ、体を休めてくれや!」
ジャイロさんの言ったとおり、昼過ぎには次の街ナーデルに入ることができた。
ここは、平原の真ん中にある街で、低い石塀が街の中心部を守っている。石塀の外にも農家がぽつぽつと点在していて、ここら一帯はオーツ麦畑だそうだ。これからちょうと種を蒔く時期みたい。
私たちは街の中心にある、大きめの宿に部屋を取った。
「昨日から歩きづめだったろ? 今日はゆっくり休め。俺は明日の乗り合い馬車があるか聞いてくる……夕飯には声かけるからよ」
ジャイロさんの言葉にレイスさんはコクンとうなずくと、そのまま部屋に入っていった。
相当疲れたんだろうな・・・・・・レイスさん
「私、少し街を散歩してきていいですか?」
「お前、大丈夫か? 体を休めろ!」
ジャイロさんは、私の言葉にちょっと驚いた顔をしている。
でも、私は冒険者だったし、ちょっと前までは、オルト兄ぃと運動と称して毎日魔法の訓練をしていたから、これくらいは問題ない。
「これくらい大丈夫です! それに、ブリドニク以外の街って初めてだから・・・・・・」
「お前、ブリドニクの出身か?
まぁ、他の街を見たいっていう気持ちもわかるが…… この近くだけにするんだぞ。
遠くへ行くなよ! すぐ帰ってこいよ」
ジャイロさんは、私のことをあまり信用していないっていうか、かなり心配されている気がする。
石塀の中の街は、ブリドニクほどではないけれど、中心にあるセフィス教の教会を中心にして、活気のあるたくさんの小さな商店が街並みを作っていた。
こうやって、いろんな街を見て回るのも楽しい。
約束どおり、早めに宿に帰ってきて、3人で1階にある酒場兼食堂で夕食を取る。
チキンのトマト煮込みにジャガイモが添えてある。香草――バジルかな? とトマトとお塩を使っているけど、確かに胡椒は使っていない。それにサラダ菜ときゅうりのサラダと白パン。バターはない。
「ここは街で一番いい宿だから夕飯もうまいだろ? 白パンなんかここらへんじゃ出さない。良くてもオーツ麦の硬いパンかライ麦パンだ。
朝は、オーツ麦のポリッジ(粥)が定番だな」
ジャイロさんは、本当に食べ物に詳しいんだなぁ――と思っていると……
「プーレフェミナの息子はブリドニクにいるって言うのは本当かなぁ……」
「けど、画家の工房を出たんだろう? そりゃあ、ブリドニクの街に戻るだろうさ。
それに、似た奴がブリドニクのほうへ向かっていたっていう話もあるしよぉ」
「あぁ、明日にはブリドニクに入れるな…… 娘もまだ見つかっていないって言うし
もしかしたら一緒にいるのかもな・・・・・・」
「俺たちが見つけるぞ!」
隣のテーブルの男2人の声が耳に入ってきた。
レイスさんは、見つけられないように俯いて顔を隠すようにしている。
「大丈夫だ…… 奴らは、まさかここにレイスがいるとは思っていないさ!
教会かタミネアの者だろう。レイスの居場所にブリドニクに目を向け始めたってことだ。タミネアには地の利で、教会には情報で、俺が先手を打てたな。
それより、貸し切りにしてもらえる馬車を見つけた。俺と御者とで交替で走らせれば、多少の無理はきく。まぁ、馬を休める必要もあるが、馬車の中でなら野宿でもいいだろ?
すこし我慢してくれ―― これで一気に王都にいくぞ!」
次の朝、宿屋を出ると1台の馬車が止まっていた。
ジャイロさんは馬車の御者に軽くあいさつをすると、さっそく馬車に乗り込んだ。私とレイスさんも挨拶をして、ジャイロさんに続くようにして馬車の中に入ると、静かに走り出した。
「これでも大きめの馬車を準備した。今日は馬車で野宿だ。俺と御者は外で寝るから、お前らは安心してこの中で休め!」
王都への旅に出てから、レイスさんは口数が少なくなっている。もともとあまり話す人ではなかったけど、昨日から表情が硬くなった気がする。
「俺、どうなるんですか・・・・・・?」
レイスさんがぽつりと言う。
「とりあえず、城に向かう。それから先は、あいつと話してからだ」
「あいつって――王様ですか?」
ジャイロさんの言葉にレイスさんが目を丸くしている。
「もともとは、あいつの命令だからな・・・・・・ 俺が決めることじゃねぇや」
レイスさんは、それっきり、口を閉じてしまった。
私もなんだか、話す空気じゃなかったので、しばらくの間、馬車の中は沈黙が続いた。
王都までの道中は、特別危ない目に会うこともなく順調に進んでいた。私とレイスさんがあまりおしゃべりをしなくなったくらい。
馬車の中で、レイスさんと2人っきりで休むっていうことにも、すごく意識してしまった・・・・・・
心臓の音が聞こえるんじゃないかっていうくらい、バクバクしていた。
ジャイロさんのせいだよー!!
ナーデルの街を出て3日目の早朝
「この大きな川を渡れば王都だ。無事にここまでたどり着けてよかったよ!
あと少しだ。気ぃ緩めるなよぉー お前たちも疲れたろう?」
ジャイロさんの声で目が覚めた。馬車から身を乗り出して外を見ると、川の向こうに立派な石壁がずっと広がっている光景が見える。石壁の中には、尖塔らしきものがいくつか遠くに見える。初めての王都!
私たちの馬車は、王都の入り口で止められることなく、そのままクローネの王宮へと向かっていた。
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