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2つの世界の物語 ~魔力の化け物と呼ばれた少女の物語~  作者: 星あんず
第3章 とまどいの一歩(前編)
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23 森を出る

「街はずれの薬屋でこれだけの食材を揃えられるわけねぇだろうよ」


 ジャイロの視線をまともに受け止められない!

 オルト兄ぃが、なんでも完璧に揃えすぎたからだよぉー!!

 思わず泣き言を口にしそうになる。


「オルト兄ぃ――2番目の兄が、いつもはごはん担当だから、私はよくわからなくて……」


 なんとか、しどろもどろに答える。


「あぁー お使いに行ってるっていう兄貴か? 

 そうやって、いろんな食材を集めてるんだな……」


「そ、そうかもしれません……」


「まぁ、よそんが何を食おうが関係ねぇしな・・・・・・

 うまいもん食わしてもらって、文句いったらバチが当たる」


 背中に冷たい汗が流れた。あぁ 見逃してくれたんだって思った。

 ジャイロさんって、本当に怖い! 


 こうして、ジャイロさんが一緒の最初の夜が終わろうとしていた。




 次の朝、3人で森のおうちを出ることになった。

 私は、アル兄様の様子を確認したくて、ブリドニクの街に寄ってほしいとジャイロさんにお願いしたけど、「あの街にはいない!」と、即行で却下された。

 書き置きを残そうとしたのだけど、それも足がつくからとダメだと言う。


 ――私はしばらく思案して、一つの言葉を書き置きとして残すことにした。


『緑のリボンは輝く瞳とともにクローネの張りぼてではないところに』


「なんだ? これ……意味がわからん・・・・・・」


 ジャイロさんが怪訝な顔をしたので、これできっと大丈夫だと思った。



 あとは薬草畑だけど…… 時間を止める魔法なんて使えないし、枯らすしかないのかなぁ。ずっとお世話してきたのに。

 やっぱり、ここに残ろうかな……

 そういえば、オルト兄ぃが留守の間、畑をお世話してくれる人がいるって言ってたけど、どうやってお願いしたらいいんだろう?


「おい、マルルカ行くぞー あのコーヒーも少し持って来いよ!」


 そんなことを考えているうちに、ジャイロさんが声をかけてきた。

 おうちの戸締りをしっかりとして、外に出る。やっぱり薬草畑が気になって、畑のほうへ足を向ける。

 

「畑のことか? あいつがダメになった分は補償してくれるって! 気にすんな。

 それより、お前らの身の安全だ。ここが教会の連中に見つかるのも時間の問題だ。

 いろいろとやらかしちまいそうな、マルルカ1人を置いていくわけにはいかねぇなって、昨日よくわかったからよ!」


 ジャイロさんは私のそばにきてそう言うと、頭をワシャワシャしていった。


 いろいろとやらかしそう?―― 兄様たちも「おもしろいことをしてくれる」って言うけど、よくわからない。・・・・・・いや! 後で「しまったぁ!」って思う。

 考えが足りないってことかなぁ・・・・・・気を付けなくっちゃ!!


 ずっとお世話してきた草花たちがダメになってしまうのはとっても悲しい。お金の問題じゃない。


「どうか、私が留守をしている間、お世話をお願いします」

 届かないかもしれないけれど、声に出して言ってみた。

 いるかもわからないお世話してくれる人と薬草畑におじぎをして、森のおうちを後にした。


 ジャイロさんとレイスさんは何も言わず、そんな私をずっと待っていてくれた。




 森のおうちから、森の中を突っ切って東へ進むのは初めてだ。だんだんと秋の色が濃くなってきていて、葉っぱが黄色く色づく木も目立ってきた。

 この辺りには、ウサギやリスくらいしかいないって言ってたけど、森の中に入ると、どうも冒険者癖が抜けなくて、つい、魔物の気配を察しようとしてしまう。

 そういえば、ブリドニクと森のおうちの往復で、このノージスの世界では、どこも行ったことがなかった。これから行く王都ってどんなところだろう? 途中の街にも寄るよね?

 ちょっと、ワクワクしてくる。


「この森を抜けたら、街道に出る。そこからは次の村まで歩きだ。

 その村に乗り合い馬車があればそれで移動するから、今日はがんばって歩いてくれよぉー」


 ジャイロさんが、私とレイスさんに励ますように声をかけてくれた。

 回復ポーションなんてものはないから、途中で小休憩しながら、歩みを進める。家から持ってきたサンドイッチを途中つまんで、水と一緒に流し込む。

 お昼を一時(いっとき)ほど回った頃には、街道に出ることができた。そして、なんとか日が暮れる前には、小さな村に到着することができた。


 さほど人が訪れることのない村で、宿屋は1軒しかないから宿を選ぶことはできない。でも、私たちは腹ペコだったから、夕ご飯とベッドにありつけるだけでもとっても嬉しかった。


「うちじゃぁ、こんなもんしか出せないけどね……」


 そう言って、宿屋のおかみさんが出してくれたごはんは、オーツ麦のシチューとゆでたジャガイモ。

 オーツ麦のシチューにはニンジンと玉ねぎ、イノシシの干し肉を戻したのが入っている。薄い塩味しかしないし、ちょっと干し肉の獣臭い匂いがする。ジャガイモはゆでただけだ。


「ふつうは、塩味しかしねぇんだよ。これは野菜と干し肉を使ってうまく料理しているシチューだ。この辺りじゃぁ牧場がねぇから、乳製品なんかは、王都ならまだしも、大きな街じゃなきゃ卸さねぇし、手に入ったとしても高ぇ! この辺りのシチューと言えば、これがふつうだ。お前んちの食事の非常識さがよくわかるだろ?」


 ジャイロさんは、私を見てニヤリとして小声でそう言うと、「こりゃぁうまいや!」と大きな声で宿屋のおかみさんに声をかけていた。


「そういえば、シチューはオーツ麦のシチューだったな…… 懐かしいや!」


 レイスさんは、目を細めて、シチューを口に運んでいる。


(あぁー 私、やっちゃったねぇー!! )

 そう思うけど、やっちゃったものはしょうがない……

 アル兄様が、見た目と釣り合う行動が必要!って言ってたけど、まさに、これだね!

 森の外れの薬屋で、作れる料理じゃなかったってことだ。

 いつも身内ばっかりだったから、すっかりと忘れていた。


 ちょっと反省したけど、歩き疲れたせいで、硬いベッドでもぐっすりと眠れた。





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