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2つの世界の物語 ~魔力の化け物と呼ばれた少女の物語~  作者: 星あんず
第1章 はじまりの1歩
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6 ブリドニクにて(2)

 ここはブリドニクっていう街の外れにある森の中らしい。聞いたことない街の名前だった。

 アルさんは、薬草茶や塗り薬、それからちょっとしたお薬を作っていて、時々街の雑貨屋さんに卸しにいく。その帰りにいろんな野菜やお肉なんかを買ってくる。


 アルさんとの毎日は、とても穏やかだった。


 アルさんがあたしの頭の上にポンって手を置いてくれるから、それが目印になって、あたしの魔力の開放も少しずつ上達してきた。

 頭のてっぺんの印に向けて魔力をグーっと押し上げる感じ。アルさんの頭の印にぶつかるとぽわんって温かくなるから、そこから魔力が降り注いできて体全体を覆う感じだ。


 その魔力の動きに慣れたら、今度は魔力の循環。

 これはちょっと難しくて、頭のてっぺんに押し上げた魔力をお尻のほうに落としてくる。最初はぜんぜん魔力が落ちてこなかった。ずーっと頭の印のところでぐるぐるしていた。

 やっとお尻のところまで落とせるようになったら、今度は手足の指先、からだの隅々にまでずっと魔力を流していく。これはあまり時間がかからずにできた。


 その次が、流した魔力を丁寧に全部戻してくる感じなんだけど、うまく戻ってこなかった。どこに戻したらいいのかがわからない……

 最初の胸の真ん中あたりかな? と思いながら、そこに流れるように意識してみる。魔力が動いた!

 魔力をもどせるようになって、それから、一通り体を循環させるのに1日かかってしまった。

 

 でも、だんだんと1周循環させる時間が短くなってきて、しばらくすると魔力の循環もそれほど意識しなくても、ぐるぐる流れているのがわかるようになってきた。

 

 アルさんは、「木の枝を伸ばす感じだよ。大きい魔力の木を育てる感じだよ。枝葉がたくさん伸びた木は生命力にあふれているでしょ? そんな感じで魔力を育てて流すんだよ」って言ってくれた。


 なんとなく、わかったような気がする。大きい魔力の木を育てるぞ!!






 あたしは、自分のこと、魔王城でのこと 全部アルさんに話した。

「仲間に裏切られたんだね。つらかったね、マルルカは・・・・・・」


「仲間?」

 不細工でちんくしゃなあたしが、ハリーとデレクの仲間だった?

 そんなことない。あたしは2人が仲間だって思ったことは一度もなかった。


 裏切られた? そう思ったことも一度もなかった。

 あたしは、もう用済みになっちゃったんだなぁって思っただけ……


 あたしって何だったんだろう・・・・・・メザク様は魔力の化け物だって言ってた。

 化け物に仲間がいるはずなんかない。あんまり考えたことなかった。

 

 どこにいても、あたしの居場所はなかった。

 あたしはいらない子……

 親に捨てられて、孤児院でも持て余された。

 メザク様も詰め込む魔法がなくなったから興味を失くした……

 そして、ハリーとデレクも魔王を倒したからもういらないって……

 ・・・・・・なんかすごく悲しい気持ちになった。


 ほんとに、あたしって何だったんだろう……!!

 生まれちゃいけない子だったんだ。



 ここがあたしの居場所?……違う。

 アルさんは「ずっとここにいていいよ」って言ってくれたけど、いつか「いらないから出ていけ」って言うかもしれない。



 ハリーとデレクとは1年一緒にいたけど、メザク様は生まれてからずっと育ててくれたけど、あたしの帰る場所じゃない。 

 あたしを殺そうとした人のところに戻りたいなんて思わない。

 あたしを厄介払いするみたいに押し出した人のところに帰れるわけもない。


 魔王を倒した後、あたしはどうするつもりだったんだろう? どこに行くつもりだったんだろう?

 なぁんにも考えてなかった。

 自分で何かをしたいなんて、一度も思ったことなかった。


 いつもずっと、メザク様に言われたことをしてた。それが、ハリーとデレクに変わっただけ……

 

 今は?

 アルさんに言われたとおりに魔力の開放の練習をしているだけ……


 でも、ここにずっといたいと思う。

 何が違うんだろう??


 魔力の暴走を心配しないで、いっぱいぐっすり眠れるから

 おいしいごはんもいっぱい食べられるから

 アルさんが優しいから


 もしどこかに行くことになったら、ここに、アルさんのところに帰りたいって思う。


 


 メザク様は……  ハリーとデレクは……

 あぁ、あの人たちはあたしの中にある膨大な魔力を使うことしか考えてなかったんだ。

 あたしを見てたわけじゃなくて、あたしの魔力を見てた。それを利用することしか興味がなかったんだ。

 魔力の化け物、魔力タンク・・・・・・それが あたし……


 アルさんは、あたしの魔力じゃなくって、扱いきれない魔力を持ってるあたしを見てくれてる。

 それって、全然違う。

 やっとわかった。


 眠くなるころには、アルさんと、ずっと前から一緒に暮らしているような気持ちになっていた。




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