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2つの世界の物語 ~魔力の化け物と呼ばれた少女の物語~  作者: 星あんず
第3章 とまどいの一歩(前編)
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20 王の下働き

「君たちに危害を加えるつもりはないから、安心してくれないか?

 俺は、ジャイロっていうんだけどさー

 いやぁ、レイス君に会えて本当によかったよー!!


 会えなかったら、俺、『役立たずー!』って親分に半殺しにされるとこだったよー

 頼むから、まずは俺の話を聞いてくれない?

 あっ! それからお茶のお代わりもよろしくー」


 ジャイロさんっていう人は、私たちを安心させるつもりなのか、くだけた様子で話しかけてくるけど、この人、相当強い人だ。隙をまったく見せない。

 レイスさんはジャイロさんを警戒するように、私の前に立って、微動だにしない。



「困ったなぁ…… 俺、お前を守りに来たんだけどなぁ・・・・・・」


 ジャイロさんは頭を掻きながら、困惑の表情を浮かべる。


「守る? ・・・・・・何から?・・・・・・誰から?・・・・・・」


「おっ!! 話を聞いてくれる気になったか!! 

 お嬢さん、お茶3つお願いね! 

 後、しばらくドアを閉めておいてくれない? あんまり聞かれたくない話だからさぁ

 でも、ここにはめったに人は来ねぇかぁ――まぁ、用心だな!

 話が終わったら、俺も畑を手伝うからさ」


 レイスさんの問いかけに、ジャイロさんは嬉しそうにして、「まぁまぁ、座って!」と、レイスさんを手招きする。

 なんか、このジャイロさんっていう人、調子の狂う人だ。確かに何かをしようとしているわけではなさそうだ。


「嘘じゃぁないみたいだ・・・・・・」レイスさんはそう言うと、ふっと息を大きく吐いて、ジャイロさんの座っているテーブルのほうへとゆっくりと歩いて行った。

 それを合図に、私は入り口のドアを閉めて、新しくお茶を入れなおすことにした。




「森の薬屋のマルルカっていいます」 お代わりのお茶を差し出すと簡単に自己紹介して、私も席に着いた。


「まずは謝る! 怖がらせてしまったことを・・・・・・」


 第一声、ジャイロさんはそう言ってテーブルにくっつくくらい頭を下げた。


「俺はジャイロだ。クローネ王国の王様の下働きみたいなことをしてる。

 あいつ、本当に人使いが荒くってよぉ、まぁ、でも悪い奴じゃないと俺は思うぜ!」


 ジャイロさんは、顔をしかめてクシャッと笑った。


 この国の王様!?

 その王様を「あいつ」呼ばわりする下働きってどれだけ偉いの?? 

 ジャイロさんの自己紹介? に思わず突っ込みを入れたくなる。レイスさんも「何? この人!」っていう顔をしてる。


 ジャイロさんは話せる限りのことを全部話してくれた。


 スーおばさんの子ども、メイちゃんとレイスさんを教会とクローネ王国が探す理由―― 

 ブリドニクの出来事を契機にして、もっと力を誇示したい教会とそれを阻止したい国との密かな争いからきていることだという。

 教会は特にメイちゃんを必死になって探しているらしい。メイちゃんをプーレフェミナの子、聖女としてセフィス教の象徴にしようとしていると。


(あの神父様がメイちゃんのことを話さないで守ってくれてるんだ!

 ありがとう 神父様!)

 心の中でこっそりと感謝する。


 クローネ王は、最近あちこちで行われている教会裁判に何より腹を立てているのだと言う。教会や審問官にお金を積めば、セフィス様の名の下、断罪してくれるのだ。国は異を唱えているのだが、「神の裁きで国は安寧を得ている」といい、聞く耳をもたないらしい。

 それで、一部の貴族や教会が好き勝手にやってるらしい。たてつく者や邪魔者はそうやって排除している――と王国は見ている。


 何を言っても、「セフィス様」、「神」、「神のご慈悲」、「セフィス様のご加護」・・・・・・

 「もううんざりだぁ! あいつらぁー!!」って王様が叫んでる――と、ジャイロさんは言う。


 本当に叫んでるのかは知らないけど・・・・・・


 そこに、ブリドニクで御使い(みつかい)様が降臨されたのだ!!

 教会がこれを最大限に利用するのは、明らかだった。


(あぁー 私はとんでもないことをしてしまったんだぁ)

 心から、自分の突発的に起こした行動を後悔した。



 ともかく、ジャイロさんの話を聞く限りでは、王様の言っていることはよくわかる。王様を応援したくなるくらいに・・・・・・


「わかってくれたかな? じゃぁ、畑の仕事を終わらせて、とっとと行くぞ! レイス!」


 ジャイロさんは一通り説明すると、立ち上がってレイスさんをひっぱって薬草畑に行こうとしている。


「ちょ、ちょ、ちょっと待ってぇー!!

 なんで、ジャイロさんはここがわかったんですか? ってことは、教会の人もここにくるんですか?」


 レイスさんは、なんとかとどまると、ジャイロさんに訪ねた。


「おまえ、ある貴族の肖像画を描こうとしたことあるだろ? そいつがお前の名前を憶えてたんだよ。『レイスっていう男がいたが、絵を描けなかった』ってね。

 お前の工房に行ったら王都を出たって言うだろ?

 そこでお前の背格好を教えてもらったのよ。いやぁ、画家さんだけに、人相書きが上手い! 上手い! だからこっちに来れたんだよ。

 西門の門番がお前の風貌を覚えていてね! 商人らしくないし、珍しい薬でもほしかったんだろうか? と思ったらしい。


 教会もお前の存在に気づいた。でも今頃は、王都でお前をさがしてるはずだぜ。

 ブリドニクでお前を知ってる奴は、『レイスは王都にいる』って言ってるからさ。

 それに奴らの一番の獲物はメイだからな・・・・・・

 それよりかよぉ、俺に『さん』はいらねぇ、ジャイロでいいよ! 」



「あの・・・メイちゃんは、メイちゃんには会ってないんですよね?」


 私は、ずっと気になっていたのだ。メイちゃんはアル兄様と街に行ったはずだから……


「だからよぉー 誰もみつけてないって言っただろ?

 レイスんも見に行ったけど、人がいる様子はなかったぜ」


「そんな・・・・・・アル兄様と……メイちゃんは、私の兄と3週間くらい前に出て行ったんですよ? 街に行くって・・・・・・」


 私がそう言うと、ジャイロさんは興味深そうに私を見て、テーブルのところまで戻って来た。




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