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2つの世界の物語 ~魔力の化け物と呼ばれた少女の物語~  作者: 星あんず
第3章 とまどいの一歩(前編)
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18 ふしぎな手

 次の日には、口数の少ないレイスさんに戻っていた。

 レイスさんは、うまく魔力を開放できるようになったのか、目を痛がる様子もなくなった。時折、しばらくの間、両手を目に当てている。それから目を閉じると、ゆっくりと両手を離すとじっとしている。

 夜も、私が刺繍をしている横で、その動作を繰り返していた。レイスさんなりに魔力を循環しようとしてるんだなぁと思った。

 それからレイスさんの新しい日課には、森の中へ絵を描きにいくことが追加された。

 しばらくは、変わらない毎日を過ごしていた。



 そんな日を繰り返していた時、 夕ご飯の準備をしようかという時間、森から帰って来たレイスさんは、おずおずと私に声をかけてきた。


「マルルカさん・・・・・・その・・・・・・一度魔法を使ってもらえませんか?」


「魔法・・・・・・ですか?」


「はい、俺、自分の魔力は視えるみたいなんです。

 だから一度魔法を使ってもらいたくて―― マルルカさんの魔力を視てみたいんです。

・・・・・・マルルカさんの本当の姿も……その、視ようと思えば視えるようになったんです。

 あっ! でも、そんなに長い時間視るのはできなくて……ごめんなさい。

 勝手に視てしまって・・・・・・嫌な気持ちになりますよね。

 本当にごめんなさい!!」


 レイスさんは、申し訳なさそうに私に言うと、思いっきり頭を下げた。


「そうでしたか。あまり視ないでほしいんですけど・・・・・・」


 本当の姿を視ていたと言われると、確かにあんまりいい気持じゃないかも――

 レイスさんの魔眼の能力がわかったのはよかったけど、ちょっと複雑な気分になる。

 でも、正直に言ってくれるのがレイスさんのいいところなんだよね?――そう思いなおして、気持ちを切り替えることにした。


「じゃぁ、湯あみの準備をしましょうか! ずっと湯あみしていませんでしたからね」


「あぁ! やっぱり! あれは魔法だったんですね。

 あれは気持ちがいい!」


 レイスさんは湯あみを思い出したようにほゎんとした表情になる。


 そうだ! レイスさんにネモのサボン使ってもらったらいいかもしれない。まだあったはず・・・・・・



 2人でお風呂場にいくと 私はお湯の準備をすることにした。


「私の魔法は魔力の残滓が出るみたいなので、ずっと使わなかったんです。

 レイスさんに影響すると嫌だなぁと思って・・・・・・」


 そう言いながら、私は湯舟がお湯で満たされるのを想像して、それにゆっくりと浸かりリラックスできることを強くイメージする。湯舟にお湯を満たすくらいなら、時間がかからずにできる。


 前の私だったら、杖を媒介にして水魔法と熱魔法を使っていたから、今よりも時間がかかっていたと思う。


 オルト兄ぃから魔力を練り上げる力を強化してもらったおかげだ。きれいに魔力を練り上げると魔法を発動させる時間が短くなるし、残滓も少なくなる。魔法のイメージが明瞭であればあるほど、そして魔法の発動に迷いがないことも発動までの時間も短くなるし残滓が少なくなることにつながる。


 メザク様に魔法を教えてもらった時は、何度も何度も魔法を使うことで熟練度があがるって言われたけど、同じことだったと思う。回数多く魔法を使うことでも、放たれる魔法のイメージが明確になるから。

 でも、その方法は、魔法の無限の可能性に制限をかけることになる。「ウォーター」って言葉を言った瞬間に、水を作ることしかイメージできなくなる。お湯じゃない、冷水や熱湯でもない。「ウォーター」には熱のイメージがないから。

 湯あみのお湯を作る魔法に言葉はない。複合魔法が難しいって言われる所以だと思う。


 放つ魔法のイメージを強く持てること・・・・・・

 魔法の名称じゃなかった。――いや、魔法に名前をつけちゃダメだったんだ。

 でも、それだったら、魔法を教えるのがすごく難しくなるんだと思う。

 私の場合は、使用する魔力量をさほど考える必要はなかったから、イメージ次第だった。

 今ならわかる。アル兄様やオルト兄ぃに言われていたことが……

 明確なイメージと洗練された魔力――それが魔法に無限の可能性を与えてくれる。




「マルルカさん! 残滓が見えます!!」


 レイスさんの言葉に考え事が中断された。そうだ――私、湯あみの準備をしていたんだ。


「湯舟にお湯がいっぱいになるまでの間、湯舟の全体に魔力が一瞬だけ視えました。その後は、魔力は完全に消えましたが、銀色の残滓が、ふわふわと粉のように少し舞っています。

 ちょっと待ってくださいね!」


 レイスさんはそう言うと、両手で湯舟の上の空間をなでるように動かす。


「はい! これで残滓は消えました」


 レイスさんは自慢げな様子でニッコリと私に微笑む――けど……ちょっと待って!!

 今、何をしたの??


 私は、口もきけず、レイスさんをじっと見て、問いかけた。


「おれ、自分の魔力を吸い取ることができるんですよ。だから、他の人の魔力や残滓とかも吸い取れるかな? と思ってやってみたんです。

 大成功です!」


「えぇぇえぇええええーー!!!

 からだ―― レイスさん、からだは大丈夫なの? なんともないの?」


 思わず絶叫してしまった。

 そんなことをして本当に大丈夫なのか心配になってしまう。


「今のところ・・・・・・大丈夫みたいですねぇ

 おれ、湯あみしてもいいですか? 」


 レイスさんは、呑気な様子で自分のからだをあちこち触って確認している。


「あぁ、どうぞ・・・・・・

 あっ これ、ネモのサボンです。魔力の流れを整えてくれるみたいなので使ってください」


 私はそう言うのが精いっぱいだった。

 そのままレイスさんをお風呂場に残して、私は夕ご飯の準備に取りかかることにした。



 それにしても・・・・・・残滓を吸い取る? 

 だって、魔眼を持っている能力者だったはずなのに、なんで魔力や残滓を吸い取る手を持つことになってしまったのか!!

 特に体に異常はないみたいだけど、この結果で本当によかったのかなぁ・・・・・・


 私はかなり不安になった。




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