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2つの世界の物語 ~魔力の化け物と呼ばれた少女の物語~  作者: 星あんず
第3章 とまどいの一歩(前編)
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17 魔力循環の方法

 レイスさんの魔眼の魔力は、次の日の夜も同じような発作を起こした。その次の日は2回、その次の日は3回、4回とだんだんと発作を起こす間隔が短くなっていた。

 目が破裂しそうなほどの痛みは、回数を重ねる度にだんだんと収まってきて、両手で目を覆うだけで、少しずつ魔力の流れを感じることができるようになってきたみたい。


 次は魔力の循環だけど・・・・・・

 果たして、魔眼の魔力の循環ってどうなんだろう? 全身に流す必要はないと思うけど……

 アル兄様からは、魔力は外に放出しちゃダメだって言われてる。


「レイスさん、魔力の動きを感じることができるようになりましたか?」


「はい、魔力が手のひらに移動しているのがわかります! そこから外に出ていくみたいです。おかげで目の痛みもなくなりましたよ!!」


「へっ??」


 思わず、変な声で小さく叫んでしまった!

 レイスさんはうれしそうに私に魔力の流れを説明してくれるけど、魔眼の魔力って手のひらに移動してよかったの? ――私は、間違っちゃったんじゃないだろうか……


 かなり不安だ。――本当にいいんだろうか……

 修正したほうがいいと思うけど、よくわからない。

 気を取り直して、やれるだけやってみよう!


「今度は魔力の循環です。

 魔力がグルグルと回るイメージをしてください。

 たぶん、レイスさんの眼の中で魔力をグルグルと転がすのが正解なんだと思うんですけど…… ごめんなさい。私、ちゃんと魔眼のことわかってなくって・・・・・・」


 私はレイスさんに正直に言う。


「ただ、ぜったい、魔力は外に出しちゃいけない!」


 私のあいまいな説明にレイスさんは「うーん」とうなっている。

 そりゃぁ、そうだよね…… なんか、申し訳なくなる。

 しばらくの間、ずっと考え込んでいたけど、何かを思いついたように私を見ると、得意げな様子で口角をクッと上げる。


「俺の魔力を手のひらに移して、それをまた目に戻すようにしたらいいんだ!

 そうすれば、外に魔力が出ることもない。

 いや! 俺のからだの中で、魔力をぐるぐる回せばいいんだ!

 魔眼を使いたいときは、目に魔力を集めて目の中で魔力を回すんだよね?」


 レイスさんは、自分の思い付きに興奮したように一気に私に話しかけてきた。

 

 えぇぇえええー!! 魔眼の魔力を手のひらに移すって……

 それって正しいの?―― 正直いってまったくわからない。


「たぶんですけど、レイスさんは全身に魔力を流せるだけの量はないように思うんです。

 それと、魔力を使うときに残滓が周りに漂ってしまうと思います。私は、残滓が出るから、外で魔法を使っちゃいけないって言われてますから。

 このおうちは大丈夫です。家の外には魔力が出ないようになっていますから」


「えっ? それって、俺が手のひらから外に出した魔力がこのうちの中に漂っているってこと?」


 レイスさんはキョロキョロしながらうちの中を見ている。


「わかりません、私、魔力とか残滓とかは見えないから――レイスさんが一番最初に魔力を開放したときに紫色の煙のようなものが見えましたけど。

 今は全然見えなくて――あと、レイスさんの瞳、紫水晶みたいな色になってます」


 レイスさんは、驚いたように目を大きく見開くと、目をパチパチしている。ここには鏡がないから確認する方法がない。


「レイスさんの魔眼の力ってどんなのですか? もしかしたら、魔眼を使えるようになったら、魔力とか残滓を見ることができるかもしれませんね」


「俺も、わからないです。ただ、ときどき、マルルカさんの姿が違って見えるときがあるくらいで・・・・・・目をごしごしすると見間違いってわかるんですけど。

 マルルカさんのデッサンを描いていると、どうしてもその姿になってしまうんですよ」


 レイスさんは、いっときの興奮状態が落ち着いたようで、ちょっと不安な様子を見せる。



「あの・・・・・・レイスさんが見ていた私ってこの姿じゃないですか?」


 私は、思い切って茶色のマルルカちゃんの姿を解いて、銀色マルルカちゃんの姿にもどってみせた。


「!!!!! そうだ!! それだ!! おれが時々見ていたマルルカさんだ!」


 レイスさんは私を指差して大声で叫ぶ。


「これが、私の本当の姿です。

 秘密ですよ。 誰にも言わないでくださいね―― メイちゃんにも……

 レイスさんは、きっと本当の姿を見ることができるのかもしれませんね。レイスさんの前では嘘やごまかしは通用しないってことですね……」


 私はクスっと笑うと、茶色のマルルカちゃんの姿に戻った。


「そうだったのか…… 人に知られたくない秘密を持っている人もいるよね。それを知られたら、どんなに悲しいか・・・・・・

 俺、ちゃんと魔眼を制御しないと、たくさんの人を傷つけて悲しませてしまうってことだったんだ。

 それだったら見えないほうがいいよね・・・・・・

 アルさんが、俺が魔眼を制御できないと刈るって言った意味、わかったよ」


 レイスさんはふと、我に返ったように、独り言のように話すと、それっきり口を開かなくなり、肩を落として自分の部屋へと戻っていった。



 あれっ? なんかちょっと違う気がするのだけど・・・・・・

 アル兄様は、この世界に魔力や残滓が漂うのを嫌っているだけなんだと思うけど。


 レイスさんは、ちょっと不思議な感じだけど、やさしい人なんだなって思った。レイスさんのやさしい思いをこのままにしておいてもいいかもしれないって思う。


 その日、レイスさんは、それっきり部屋を出てくることはなかった。




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