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2つの世界の物語 ~魔力の化け物と呼ばれた少女の物語~  作者: 星あんず
第3章 とまどいの一歩(前編)
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13 隠れ里(4)

「里が見える! 家がいくつも見えるわー! 人が・・・人がいるわぁー」


 スザンナが人里をみつけてたどり着いた時には、アメリアは思わず大きな声で叫んでいた。


「すごい!! こんなに人がいるなんて!! 家が大きいー」


 アメリアはスザンナが見せてくれる世界に夢中になった。視界を共有する時間が長くなると、全身の力が抜けてぐったりとなってしまう。


「アメリア、それは神の力が不足したんだよ。ほどほどにしないと、命が尽きてしまうよ」


 アメリアが視界を共有できる時間はさほど長くないようだ。1日1ときくらいが限度らしい。それ以上の時間を共有していると、次の日は動けなくなってしまった。

 アメリアは、ほんの少しの時間だけ視界を共有するようにして、回数を増やすようにした。



******************************************************


 スザンナがアメリアに初めて見せた最初の里は、タミネア王国の外れの小さな集落に過ぎなかった。小さな家が30戸ほどで、外から訪れる者もほとんどいない、林業を生業なりわいにしている集落だった。


 それでも、スザンナやアメリアにとっては、大きな里だった。

 この集落にたどり着いたスザンナは、胸がふるえた。

(外の世界・・・・・・私は今、ここにいる・・・・・・)


 簡素な生成(きなり)の貫頭衣に胴結びをしめた格好に、灰色のマントだけをまとい、荷物もなく、傷だらけで集落の中を茫然として彷徨うスザンナの姿は、集落の者たちには奇異に見えた。



「娘! どこにいく! どこからきた!」


 集落で一番強いと言われている男が近づいてきて、いぶかし気な顔をしてスザンナを見定めるようにながめた。


「あの・・・・・・スザンナっていいます。

 私、山から下りてきて・・・・・・あの・・・・・・」


 スザンナは、どう話したらいいのか、何も考えていなかった。正直に話すわけにはいかない。

 どうしたらいいのだろう……思案しているそのとき、スザンナのお腹が盛大にグーっと鳴った。

 

「お前、腹がへってるのか!? 

 着の身着のままって恰好だし…… しゃーねーなぁ…… まずは何か食わしてやらぁ・・・・・・ 

 ここで死なれたら、目も当てられねぇや」


 男はそういうと、スザンナについて来いと合図すると、すたすたと歩き始めた。

 スザンナは男の歩幅に追いつこうと必死に足を運ぶが、体力が限界だったこともあって、足がもつれてうまく歩けない。しまいには派手に転んでしまった。


「しゃーねぇなぁ・・・・・・」

 男は頭を掻きながらスザンナのところまで戻ってくると、ひょいと担ぎ上げて、ある家の中に入っていった。



「おい! ばばぁ! なんか食いもん出してくれや」


 男が入っていった家は、この集落でたった1軒、雑貨屋と食堂を兼ねているところだった。


「何言ってんだい! とっくの昔にお日様は傾いてるだろー 食堂は終わりだよ!

 ・・・・・・おや、まぁ・・・・・・お前、人さらいになったのかい?」


 恰幅のいい女が出てくるなり、スザンナを抱えている男に驚いて声をかけた。


「んなことするわけねぇだろーが! ・・・・・・まぁ、頼むわ!」


 男はそう言ってスザンナを下ろすと、数枚の硬貨をおいて出て行ったのだった。


 

 こうしてスザンナは、この集落に受け入れられ、雑貨屋兼食堂の手伝いをしながら、しばらくこの集落で暮らすこととなった。

 スザンナが気立てのいい娘だったこともあってか、集落の者たちもスザンナにあまり深く問いただすこともなかった。




 集落で暮らすようになって1年が経とうとする頃、スザンナはお世話になった集落を出て旅をすることに決めた。


(外の世界をもっとアメリアに見せなくっちゃ! アメリア見てる?)



*****************************************


 姉さんと話をしている人はみんな笑顔だ。楽しそうに姉さんとみんな話している・・・・・・

 赤いスカートかわいいな! 姉さんの姿を見てみたい。



 スザンナが里を出てから、2年、3年と月日は流れていった。

 スザンナはアメリアにいろいろな景色を視せた。

 見たことのないおいしそうなごはん、最初に見た家よりももっとおおきな家、もっと大きい集落、里(街というらしい)。

 色とりどりの服や髪飾り。


 これが、私たちが守ってきた外の世界・・・・・・


 アメリアは、時間ができれば、スザンナの景色を見ていた。

 


 さらにスザンナが旅を進めていくと、街の建物の形も変わっていった。

 人があふれるくらい大勢いる。家は石づくりで、2階や3階まである!


 この大きい街では、薬草を並べているところで働いているようだ。

(姉さんは、薬草に詳しかったからぴったりだね・・・・・・)



 4年、5年・・・・・・

 最近、よく同じ男の人の顔を見る。誰だろう?


 男の人と一緒に旅をしている!


 ここは湖? でも空と水がくっついてる・・・・・・これは海よ!! 海なのだわ!!

 姉さん、すごい・・・・・・ 本当にすごい!!

 外の世界はとてつもなく広い!


 いつも同じ男の人がそばにいる・・・・・・

 家の壁に、「デイビッドと結婚しました」と書いて貼ってあった。

 これは、姉さんから私たちへのメッセージだ!

 姉さん、結婚したのねー


 あぁ、姉さんと話ができたらいいのに! おめでとうって言いたいのに・・・・・・

 私の神の力は、本当に視るだけなのね。


 アメリアは、ずっと両親にスザンナの景色を伝えていた。

 スザンナが結婚したらしいことを両親に言うと、顔をくしゃくしゃにして父親は泣いた。

 3人で、スザンナの結婚をお祝いした。


 子どもが産まれたことを言うと、「スザンナは私をおばあちゃんにしてくれたのねぇ」と、母親はコロコロと笑った。


 子どもが産まれると、壁に、名前が書かれた紙が貼られていた。

 レイス・・・・・・メイ

 スザンナの子どもたちの成長は、3人をとても幸せな気持ちにしてくれた。


 スザンナが里を出てから10年が経ち、20年が過ぎた

 隠れ里は、父親と母親は相次いで亡くなり、アメリア1人だけになっていた。でも、アメリアはあまり悲しい気持ちになることはなかった。


 私には姉さんがいるから! 外の世界があるから!!


 咎める者もいなくなった今、アメリアは神の力が続く限り、取り憑かれたようにスザンナの世界を視ていた。力がなくなると倒れる、その繰り返しの生活を送っていた。


 その日も、神の力が回復したからスザンナの世界を視る・・・・・・はずだった。


「姉さんの景色が視えなくなった・・・・・・外の世界が見えない!!!」


 うゎぁぁああああああああ――!!


 外のつながりが切れたアメリアは孤独のどん底に突き落とされた。


 ひとりぼっちはいやぁああ――!!


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