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2つの世界の物語 ~魔力の化け物と呼ばれた少女の物語~  作者: 星あんず
第3章 とまどいの一歩(前編)
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8 歓迎パーティ

「マルルカ、レイスさんの歓迎パーティの準備だ!」


 オルト兄ぃはそう言うと、台所へ行き、保存箱の中を覗き始めた。

 レイスさんの話が終わった頃には日は傾き始めて、そよぐ風もだいぶ涼しくなっていた。


「わかった! 私、レイスさんの湯あみの準備するね。メイちゃんとレイスさんは、ゆっくりしててー。お話したいこといっぱいあるでしょ?」


 手伝うって言うメイちゃんとレイスさんはソファのほうへ移動してもらい、私はテーブルの片づけから始めた。



「アル兄ぃが来るかもしれんな……」

 私がテーブルのカップ類を台所に下げて洗い物をしていると、オルト兄ぃがボソッと小声で言った。


「アル兄様が・・・・・・来るの? ・・・・・・なんで? 」


 うれしい気持ちと、ブリドニクの広場でやってしまったことを怒られるかもしれないっていう不安な気持ちが入り混じる。



「レイスさんの眼・・・・・・あれ、魔眼だよ」


「魔眼・・・・・・?」


「あぁ、一瞬、僕たちの本当の姿が見えたんだよ。ここにはマルルカの魔力の残滓が少しあるからね。それに僕たちには魔力があるから…… それに反応したんだよ。

 それに、肖像画が描けないっていうのは、本能の部分で、魔眼を通して絵を描こうとしてるからだ。魔力がないから魔眼としては機能していないけどね。

 見えないけど、意識せずに本質を感じて、それが絵に表れるんだと思うよ。

 たぶん、アル兄ぃがこの場所を選んだのは、レイスさんの魔眼が理由だったと思う」


 オルト兄ぃはメイちゃんたちに聞こえない小さな声で話してくれた。


「詳しいことはアル兄ぃしかわからないし、どうするか決めるのもアル兄ぃだよ。

 とりあえず、僕たちはパーティの準備だ!

 マルルカの魔力の残滓が少なくなってきて本当によかったよ!

 僕、この結界の中で、マルルカの魔力の残滓を吸い取っていたんだからね! 

 しばらくマルルカは魔法禁止! 湯あみの水も僕が準備するから!」


 知らなかった…… オルト兄ぃが私の魔力の残滓を片付けてたなんて……

 そりゃぁ、汚い魔法って言いたくなるよね……


 オルト兄ぃって、魂とか魔力の残滓とか・・・・・・なんでも食べちゃうんだろうか……

 ちょっと ブルっと体が震えた。



 結局、私がやったことは、野菜を切ったり、鍋の火の番をしたり、テーブルのセッティングくらいだけだった。後は全部、オルト兄ぃがひとりでやってしまった。


 レイスさんもリモリスのお湯には感動していた。メイちゃんが、得意げにレイスさんに湯あみを自慢しているのがおもしろい。


 森の生活は、少し考えると不思議なことばかりだけど、メイちゃんはぜんぜん気づいてないみたいだ。いつも新鮮な野菜やお肉、魚が食卓に並ぶし、湯舟のお湯だって、毎日使うお水の量やお湯を沸かすことを考えると、簡単にできるはずがない。


 レイスさんは、みんながお湯を使っていることにすごく驚いて、「いったいどうなってるんだ?」って言ってたけど、メイちゃんは「そぉ?」って言ったっきり、あたり前のようにレイスさんの後に湯あみしている。



 日が暮れた頃、オルト兄ぃの料理も完成した。

 魚の燻製にたっぷり野菜のサラダ、鳥のグリルにクリーミィなマッシュポテト、オルト兄ぃのコンソメスープは絶品だ。

 レイスさんとオルト兄ぃにはワインもつける。私とメイちゃんはグレープエイド。透明な赤紫の色が特別な気分にしてくれる。


「すごい!! オルトさんって本当にすごい!!

 兄さん、オルトさんのご飯ってすごくおいしいんだよ。高級レストランで食べてるみたいな、それでいて毎日食べたいような味なんだから! 」


 メイちゃん、今度はオルト兄ぃの料理を自慢してる……。メイちゃんはレイスさんが来てから、前のような明るいキラキラした女の子になっていた。レイスさんは、あまりおしゃべりじゃないみたいで、メイちゃんの言うことに「うん、うん」と頷いているだけ・・・・・・




「僕も一緒にいれてくれるかな?」


 声が聞こえた入り口のほうを見ると、そこにはいつもの笑顔を浮かべたアル兄様がいた。


「アルさん!!」


 メイちゃんはアル兄様の姿をみつけると目を大きくして驚き、満面の笑顔になった。それからアル兄様に駆け寄り、思いっきり飛びついていった。

 メイちゃん、本当にアル兄様が好きなんだなぁって思う。


「アルさん 会いたかったー 

 今日はすごい!! レイス兄さんに会えたと思ったら、今度はアルさん!!

 もう最高の日だよー」


「僕もメイちゃんに会えてうれしいよ! 

 メイちゃんの大好きなお兄さんを紹介してくれる?」


 アル兄様は飛び込んできたメイちゃんを受けとめると、少しかがんでメイちゃんに微笑んだ。


 メイちゃんはアル兄様の手を引っ張ってくると、レイスさんのところに戻ってきた。


「アルさん、あたしのレイス兄さんだよ。王都から会いにきてくれたの。

 兄さん、この人がアルさん。お店に薬草茶やお薬を持ってきてくれた人だよ。

 オルトさんとマルルカちゃんのお兄さん」


「は、はじめまして。レイスって言います・・・・・・

 メイが、お世話になりました」


 レイスさんは少し緊張してるみたいだけど、オルト兄ぃに初めて会った時みたいに、特別おびえた様子もなかった。

 私の魔力の残滓をオルト兄ぃがきれいになくしたんだろうな・・・・・・


「こちらこそ…… 僕たち、3人ともスザンナさんやメイちゃんに良くしてもらってる。

 君たちには悲しいことが起こってしまったけど、これからも仲良くしてくれるとうれしい」


 アル兄様がそう挨拶すると、メイちゃんとレイスさんの顔が少し曇り、スーおばさんのことを思い出したのか、悲し気にうつむいた。



「せっかく作ったごはんが冷めちゃうよぉ!! 

 レイスさんの歓迎パーティをはじめるよぉー!」


 オルト兄ぃは、沈んだ空気を払いのけるように大きな声でテーブルに付くようにと言ったのだった。


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