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2つの世界の物語 ~魔力の化け物と呼ばれた少女の物語~  作者: 星あんず
第3章 とまどいの一歩(前編)
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2 マックス・シェルドンの命運

 時を少し遡り・・・・・・ エリザが広場の舞台へと連れ出された時のこと




 エリザが断罪された……


 エリザはもう助からない…… 次は自分の番だ!!

 そう思ったら無性に怖くなってきて、マックス・シェルドンはエリザを置いて逃げた。

 


 屋敷に戻るなり、門を閉めて家中の鍵をかけさせて、「誰も入れるな! 誰も取り次ぐな!」と召使いに言いつけて、部屋に閉じこもった。

 そして、ベッドにもぐり頭から布団をかぶったとたん、体がブルブル震えてきた。


 

 シェルドンは、自分の目の前で起きたことが信じられなかった。


 セフィス様の御使い? ありえない……

 だが、確かに御使い様は傷ひとつ負わず、スザンナは天へと上り、そして消えるようにセフィス様のもとへと帰っていった。

 本当にセフィス様、神様はいるのか??


 シェルドンは、さほど神を信じているわけではなかった。

 教会に少なくない寄付をしているし礼拝にも出かけている。が、それは神を信じているからではなく、己のためにしていることだった。

 名実ともにこの街の名士として顔を売るには、人びとが集まる礼拝に顔を出すのが一番手っ取り早い。そして教会に、この街とともに自分の名を知ってもらうためだった。


 シェルドンにはこの街を発展させてきたという自負がある。しかし、この街の名士で満足するつもりはなかった。クローネ王国に名を馳せ、爵位が欲しかった。その功績作りと教会の後ろ盾を確かなものにするためにしていることだった。


(あぁ、どうしたらいいんだぁー

 俺は魔女の夫なのか? 騙した奴もいる、人も殺してる!

 次は俺が殺されるのか……?)




 シェルドンはふと思う。


 スザンナはセフィス様に救われた。でも、死んでしまったことに変わりはない。

 エリザとスザンナの死に何の違いがある? 神に救われた女と断罪された女……

 ただ、それだけではないか! 俺は死んだ後のことには興味がない。

 生きている今、やるべきことをやるだけだ!!


 生きることだけを考えるんだ、マックス・シェルドン!! 


 悪いがエリザとスザンナの死も利用させてもらう。

 俺は、あの審問官と同じではないか……? 自分と同じ匂いがする。

 フフ…… あいつとは気が合いそうだ。


 俺はエリザに、魔女にまじないをずっとかけられていたんだ。きっと御使い様が目を覚まさせて下さったのだ! 私の真の心が求めていたのは、御使い様が御救いくださったスザンナ…… だからこそ、あれほどスザンナを求めてしまったのだ。


 心の底で、悪魔のまじないに絡めとられた私の心をセフィス様に救ってほしかったのだろう。

 きっとそうだ!



 しばらくは、新しい女を探すこともやめ、街の発展に尽くす良き名士となろう。

 あぁ、そうだ! スザンナの子どもを養子にするのも悪くないな。

 エリザと私には子はないから、シェルドン家は私の代で終わってしまう。

 何より、スザンナの、御使い様に救われた女の子どもだ。

 いいではないか!!

 デイビッドとスザンナへの罪滅ぼしともなろう。セフィス様もお許しになってくださるに違いない。


 布団の中で、シェルドンは祈りのポーズをとった。 

 体の震えはいつしかおさまっていた。



 次の日の朝早く、シェルドンは教会へと出かけた。魔女だったエリザを妻として娶っていた夫の表情はどんなふうにしたらいいのだろうか。教会へ行く途中、そればかりを考えていた。

 きっと、自分とすれ違う街の人たちは、無表情で難しそうな顔をしているシェルドンを遠巻きに見るだけで、声をかけはしないだろう。


 広場は昨日の出来事がうそであったかのような静かさだった。朝も早い時刻のせいか、水を汲みに来る女も数人を数えるほどだった。その女たちも、歩いてくるのがシェルドンだとわかると、視線を落とし気づかないふりをする。


 シェルドンは誰とも言葉を交わすことなく、まっすぐに教会へと入っていった。



 教会の礼拝堂にはまだ誰もいなかった。

 シェルドンはそのまま祭壇の前へと進み、膝を折り両手を胸の前で硬く結び、祈りの姿勢を取った。そしてひたすらに、「セフィス様、私をどうかお助けください……」とだけ願った。


 神への祈りの言葉など知らない。己の助けを願うことしか知らないのだ……

 まだ外の光を十分に受けていないステンドグラスは暗く、まだ暗い礼拝堂のろうそくの光は周りの闇を一層深くしているようにも見えた。


(神と悪魔もすぐ隣り合わせでいるのかもしれない)

 ふと、シェルドンはそう思った。




「シェルドンさん、こんなに朝早くからお越しになるとは……」


 神父と、そしてあの審問官が礼拝堂の奥のほうから姿を現した。


(ここが、私が生き残る勝負時だ!)


「神父様、それに審問官様! 私は、ただ神様に許しを請うておりました。

 エリザの一番そばにいながら、共にセフィス様の前に膝を折ることを、なぜ、もっとしてこなかったのかと……

 実は、御使い様が天にお戻りになった後の記憶がないのでございます。気づけば、すでに日は明けており、急ぎここへと参った次第です。

 間に合うのならば、エリザと共にセフィス様のご慈悲とご加護を……」



「記憶がない……? ! それこそがセフィス様のご慈悲とご加護だったのでしょう」

「はっ? どういうことでしょう?」


 神父の言葉に、シェルドンは怪訝な表情を作る。


「魔女エリザは昨夜のうちに断罪されました」

「あぁぁああーー!!!! エリザー!!」


 審問官の言葉に、私は床に突っ伏して絶叫した。

(涙、出ろ!! これからの私の命運がかかってるんだぁ!)




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