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30 優しい嘘

第2章 終わります。

「もう、この場所にいたくない……」

「わかってるよ。このままうちに帰ろう」


 私は、オルト兄ぃの胸に顔をうずめた。もう周りの音や声を聞きたくなかった。


 ふと静かになったかと思うと、ひんやりとした風と一緒に大好きな森の匂いがしてきた。

 森のおうちに帰って来たんだ!


「これくらいの転移なら、アル兄ぃも許してくれるよ。きっと……

 広場でもマルルカを転移させちゃったしね」



「オルト兄ぃ……メイちゃん! あのおうちに一人だった!! どうしよう……」


 森のおうちに帰ってきた安心感で、ブリドニクに置いてきたメイちゃんのことを思い出した。私、自分のことばっかり考えてた・・・・・・


「メイちゃんは大丈夫。あそこは誰も入れないようにして邪魔されないようにしてあるから安心して! それに僕たちが戻るまでは目が覚めないから、一人で不安になることもない。 

 明日の朝、メイちゃんちに転移するから大丈夫!

 メイちゃんに元気の出る朝ごはんを持って行ってあげよう。

 マルルカには僕がポロ茶をいれてあげるね」


 オルト兄ぃは手際よくお茶の準備をしてくれる。やっぱりなんでもできるオルトだ!


「マルルカ、よくがんばったね! 予定と違ってちょっとひやひやしたけどね」


 オルト兄ぃが笑いながら、ソファでぐったりしている私にポロ茶をいれてくれた。


「私……、がまんできなかったの。

 スーおばさんをあんなに傷つけて、大勢の人たちが魔女だって決めつけて!

 なんにもしていないのに! あんなに優しいおばさんなのに、殺せーって叫ばれて……

 スーおばさんのことを、なんにもわかってないのに!」


 広場でのできごとを思い出すと、またあのときに感じた感情がふつふつと沸き上がってくる。


「マルルカはまだまだ子どもの魂だね」


「……子どもの魂? 」


「うん。マルルカは、スザンナさんやメイちゃんからお互いを思いやる気持ちや感情をいっぱい教えてもらったんじゃないの?」



・・・・・・スーおばさんはつらかっただろうに、あんなに私に優しくしてくれた。メイちゃんだって、おかあさんに心配をかけないようにって明るくしてた。


「自分の感情にあんまり吞まれちゃいけないよ。自分の状況を見極められる冷静さも必要ってことだよ!

 だからマルルカはまだ子どもの魂ってこと!

 おいしい魂になったら、僕が食べてあげる!」


「食べられるのはぜったい、いや!!」


 オルト兄ぃは私をからかうようにケラケラと笑うけど、どこまで本気なのかわからないのがちょっとコワイ。


 その日は、久しぶりにぐっすりと眠れた。あのポロ茶は私が作ったのだったのかな?



 次の朝、オルト兄ぃに「薬草畑のお世話をしなくっちゃ!」って言ったら、「留守の間、お世話をしてくれる人を連れてきたら大丈夫だよ」 って…… 

 いつの間に探してきたんだろう?



 朝ごはんの準備をしてからメイちゃんの家にオルト兄ぃと転移した。

 森のおうちから持ってきた食材で朝ごはんの準備をしていたら、メイちゃんが起きてきた。


「マルルカちゃん、オルトさん! おかあさんは? おかあさんのところに今日も行ける?」


 お部屋からすごい勢いでメイちゃんが下りてきた。

 私はメイちゃんになんて言っていいかわからなかった。そっとオルト兄ぃのほうを見る。




「メイちゃん、おはよう。スザンナさんにはもう会えないんだよ……」


「えっ? なんで? なんで会えないの? もう行っちゃダメなの?」


「スザンナさんは……、おかあさんはね、セフィス様のところに行っちゃった。もう僕たちじゃぁ行くことができない」


 オルト兄ぃはすこしかがんでメイちゃんと同じ高さで目を合わせると、すごく真剣な顔をして、真正面からメイちゃんの目をじっと見ていた。いつものオルト兄ぃは、ちょっといたずらっぽい表情ばっかりしてるのに。


「セフィス様のところ? どこ? 教会にいるの? けがを治してもらってるから?」


「…… セフィス様の一番お近くにいらっしゃるから…… 誰も会いにいけないんだよ。

 ……もう、この世界にスザンナさんはいない」


「この世界にいない? セフィス様の近くにいる・・・・・・?

 おかあさんは教会の人に殺されたってこと? 

 ねぇ! おかあさんは殺されたの!!??」


 メイちゃんは、泣きそうな顔をしてオルト兄ぃをずっと睨んでいる。でもそうしないと今にも泣きそうで涙があふれそうだ・・・・・・

 オルト兄ぃはメイちゃんを優しくぎゅっと抱きしめた。メイちゃんはオルト兄ぃの腕の中で、震えた声で聞いた。


「殺されたんじゃないよ。セフィス様の御使い(みつかい)様が迎えにきて一緒に天に帰っていったんだよ」


「えっ? わかんない……

 わかんないよぉー! オルトさん、わかんないよぉー!!」


 メイちゃんの目からみるみるうちに涙があふれてきて、オルト兄ぃの腕の中でずっと泣き叫んでいた。


 メイちゃんの泣き叫ぶ声を聞いていると、スーおばさんの声、笑顔がいっぱい浮かんでくる。刺繍を教えてくれたこと、おいしいごはんも作ってくれたし、思いっきり抱きしめてくれた。スーおばさんの匂い、あったかさ・・・・・・

 もうスーおばさんに会えないんだって思ったら涙がどんどんあふれてきて、ぜんぜん涙が止まらなくなってきた。

 

「メイちゃん・・・・・・オルト兄ぃ・・・・・・」


 私の中に沸き上がってくる感情で胸がしめつけられて、オルト兄ぃに抱きついた。誰かのあったかさが欲しい…… ぬくもりを感じていたかった。


 オルト兄ぃは、メイちゃんと一緒に私もそっと抱きしめてくれた。そうしたらますます胸が苦しくなってしまって、メイちゃんと一緒に大声でいっぱい泣いた。


 スーおばさんにもう会うことができないのがこんなにつらいだなんて…… メイちゃんはもっとつらい悲しい思いをしてるんだと思うと、ますますつらくなってまた涙がでてきた。



「スザンナさんは魔女なんかじゃないからね! 誰もスザンナさんのことを魔女だなんて思っていないから・・・・・・」


「もう、おかあさんに会えないの? おかあさんはメイを置いてセフィス様のところにいっちゃったの?

 メイはひとりぼっちになっちゃったの?」




「メイちゃんはひとりぼっちじゃないよ! 私もオルト兄ぃもいる。

 メイちゃんにはお兄ちゃんもいる。


 ・・・・・・それに、スーおばさんは、すぐそばにいるよ。見えないだけ・・・・・・

 うん! 見えないだけで、セフィス様と一緒にずっとメイちゃんを見守ってくれている!」




 私に友だちって言ってくれたメイちゃん・・・・・・私の初めてのお友だち。


 今度は私が、メイちゃんが元気になれるように、そばにいよう!

 おかあさんに心配をかけないようにって、自分の悲しい気持ちを隠していたメイちゃんが教えてくれたこと・・・・・・

 ちょっとだけ、嘘をつく。


 優しい嘘を・・・・・・



 【第2章 新たな1歩】 完




ここまで読んでくださった方、本当にありがとうございます。応援・評価・感想をいただければ、第3章のはげみになります。


少し書き溜めてからの更新になりますが、これからもよろしくお願いします。

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