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22 地下牢(1)

「おかあさん、スザンナに会いたいんです。スザンナの家族の者です。会わせてください!」


 なんとか日が暮れる前には間に合った。メイちゃんとオルト兄ぃと私は、役場の入り口にいた守衛さんにお願いした。


「ダメだ! 今は取り調べ中で、審問官様と神父様も中にいらっしゃる。

 そもそも、魔女の疑いにかかっている女に会わせるわけにはいかないのだ。帰れ、帰れ!」

 どんなにお願いしても、取りつく島もない。



 メイちゃんが必死に守衛さんにお願いしていると、役場の中から黒い人影が出てきた。


「神父様!」

 メイちゃんがすがるように声をかけた。


 メイちゃんの声に神父様はギョッとした顔をした。


「!!・・・・・・ あぁ、あぁ、そうだった。君たちに本を選んであげる約束だったね。

 審問官様、少しだけおいとまさせていただきます。

 申し訳ございませんが、先に教会へお戻り願いますか? すぐに戻りますので・・・・・・」


 神父様はあわてて大きな声で私たちに声をかけると、黒いローブを着た人たちから私たちを隠すようにしてお辞儀をすると、私たちを役場の中へと追いやろうとした。


「そうなのかい。君たち悪いことをしたねぇ。セフィス様のご加護がありますように」


 審問官様と呼ばれた人たちは、少し怪訝な顔をしながらも、私たちとすれ違って教会のほうへ歩いて行った。


 すれ違った瞬間、ふうぅっと濃い血の匂いが鼻をかすめる。



「メイちゃん、ここに来ちゃダメだ! 悪いことは言わない。今すぐ、この街から出たほうがいい。

 君にも危険が及ぶから、できるだけ早く、この街を出るんだ!!」


 審問官が通り過ぎたのを確認すると、神父様は険しい顔をしてメイちゃんの肩をつかんで、声を落としながらも必死に訴えていた。


「神父様、おかあさんに会わせて! お願い!!」


「ダメだ! 絶対ダメだ!! おかあさんには会えない。

 君だけでもこの街から逃げるんだ。悪いが君の力にはなれない…… 

 早く、この場から立ち去りなさい!

 そちらの方、メイちゃんをこの街から連れ出してください。

 彼女は大変危険な状況に置かれていますから・・・・・・お願いします」


 神父様は強くメイちゃんに言うと、オルト兄ぃがいることに気づき、深く頭を下げて、私たちから逃げるように去っていった。


 オルト兄ぃは、しばらく考えているふうに見えたが、「一度、戻ろう」と言って、メイちゃんと私の肩を軽くたたき、メイちゃんのおうちのほうへと足を向けた。メイちゃんはしぶしぶオルト兄ぃの言葉に従った。





「おかあさんに会えないの? どうして? どうして会えないの?」

 家に入るなり、メイちゃんはオルト兄ぃにすがるようにして叫んだ。


「メイちゃん、神父様が危ないって言ってただろう?」


「私はいいの! マルルカちゃんとオルトさんに迷惑がかかるのなら、私一人で会いにいくから!

 お願いだから、私をおかあさんのところに行かせて! 

 マルルカちゃんとオルトさんには、ここまで連れてきてもらったから、もう大丈夫だから! もう二人には迷惑かけない!」


 メイちゃんが今にも家を出て行こうとしているのを、オルト兄ぃが手を引いて止めた。


「メイちゃん・・・・・・

 君に覚悟があるのなら、おかあさんに会う覚悟があるのなら連れて行ってあげよう」

 

 オルト兄ぃがそう言うと、メイちゃんはオルト兄ぃを睨みつけるようにじっと見て、大きくうなづいた。


「暗くなって、人通りが少なくなったら出かけることにしよう。それまで、少し休むといい。

 ちゃんと起こしてあげるから・・・・・・」

 オルト兄ぃの言葉にメイちゃんは素直に従い、部屋へと上がっていった。




「オルト兄ぃ、本当にスーおばさんに会えるの? 

 あの人たち、血の匂いがしてた。スーおばさんは大丈夫かなぁ・・・・・・」


「あぁ、スザンナさんのところに行くのは簡単だよ。

 あの審問官っていう奴にちょっとお仕置きしてあげようかなって思ってさ!」


「お仕置き? 何するの?」


「ちょっとだけ・・・・・・マルルカにもちょっと手伝ってもらおうかな?

 別にマルルカが魔法を使うわけじゃないから、アル兄ぃもこれくらいだったら許してくれるよ。 きっと!」


 オルト兄ぃがうれしそうな顔をしている。なんか嫌な予感がするのは気のせい?


 それから、オルト兄ぃから私がやることを教えてもらったけど、それがお仕置きになるのかよくわからなかった。






 真夜中になってからメイちゃんを起こして、月の明かりを頼りに私たちは再び役場に足を運んだ。

 役場に向かって歩いている途中、誰にも会うことはなかった。あれほど人でにぎわっていた広場も人気はまるでなく、水汲み場の水の流れる音と私たちの歩く足音だけが響いていた。


 街の灯りはなく、教会の灯りも落ちていたから、役場の入り口の灯りがとても明るく感じた。

 役場の入り口には、やっぱり守衛さんが立っていた。オルト兄ぃは、私とメイちゃんに口を閉じているように言うと、何もなかったように守衛さんに止められることもなく、守衛さんの横を堂々と通り過ぎて、そのまま役場の中へと入っていった。


 オルト兄ぃが何かをしているのは確かだけど、何をしたのかぜんぜんわからない!

 メイちゃんは、驚きのあまり、口がきけなくなっている。私はメイちゃんの手をしっかりと握る。

 ちょっとは元気づけられるかもしれないと思って……


 オルト兄ぃは、迷うことなく真っ暗な役場の中を歩き、地下への階段まで難なくたどりついた。


 役場の地下は石壁がむき出しになっていて、初夏だと言うのにひんやりとしていた。それとかすかな血の匂いがする。オイルランプの小さな明かりがともされているだけで、ちょっと不気味な感じがする。

 メイちゃんが私の手を強く握ってくる。


 少し進むと鉄の扉が見えてきた。オルト兄ぃは別に用心をすることもなく扉に手をかけて開けた。

 

 そのとたん、生臭い濃い血の匂いが押し寄せてきた。冒険者だった私は慣れている匂いだけど、メイちゃんは気持ち悪くなってないかな・・・・・・


「マルルカちゃん・・・・・・」

 メイちゃんが足を止めた。


 鉄格子の牢の向こう側に、かすかにぼろきれの塊が見えた。


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