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20 神様への願い事

「スーおばさんはなんにも悪いことしていないのに、処刑されちゃうの?」

 すごく怖いことを聞いている気がする。


「そうだね。残念ながらスザンナさんの命は残り少ない。僕たちはこれに干渉しちゃいけないんだ。それが決まりだ」

「そんな・・・・・・それじゃぁスーおばさんとメイちゃんを助けてあげられないっていうこと? 

 だまって見てるしかないの?」


「まぁ、そういうことになるねぇ・・・・・・」

 オルト兄ぃが呑気そうにポロ茶を飲んでいる。



「オルト兄ぃは、何とも思わないの? 

 メイちゃんが助けてって言ってるのに、あんなに優しいスーおばさんが殺されるかもしれないのに!」


 オルト兄ぃの態度にだんだんと腹が立ってきて、オルト兄ぃを責めるように叫んだ。


「マルルカ、君はスザンナさんを助ける力を持っているだろう。でもね、その力をここで使う権利はないんだよ? 

 君はブリドニクの森の薬屋の娘としてここにいる。ヤービスの賢者マルルカとしてじゃない。

 アル兄ぃに薬屋になるって言ったのはマルルカ、君だ。魔法を使わない約束もした。

 それを忘れるな!」



 そうだ・・・・・・オルト兄ぃの言うとおりだ。私は薬屋の娘マルルカだった。

 でも・・・・・・助けられるよね。約束したけど・・・・・・

 ・・・・・・助ける力―― 魔法を使えば!


「アル兄ぃとの約束を破ろうと考えていないよね?

 破ったら、君は殺されるよ。 アル兄ぃに・・・・・・ そしてスザンナさんも死ぬ」


「え・・・・・・??」

「マルルカ、まだ気づいていないの? アル兄ぃのこと」

 いつものオルト兄ぃと違う、冷たい雰囲気がする。



「アル兄様も、オルト兄ぃも……ふつうの人じゃない……っていうのはわかっている」

 聞こえないくらい小さな声でつぶやいた。


 それを聞いちゃいけない、知るのが怖いからと気づかないようにしていた。いつか心の準備ができたときに、アル兄様が教えてくれるだろうと思って・・・・・・


 今、ここで、オルト兄ぃが言おうとしているの?



「マルルカ、アル兄ぃの、主様の魔力を流し込まれて受け取っただろう?

 主様の加護をいただいたとも言うが、主様の完全な支配下にあると言うことだよ。何人たりともお前に危害を加えることはできない。私でさえもな・・・・・・

 お前はすべてから守られている。・・・・・・主様ただひとりを除いて。

 そして、それは私も同じことだ。それが加護だ」



 なんか心臓がバクバクしてくる。


「オルト兄ぃ、お願いだからそれ以上言わないでほしい!

 よくはわからないけど、やっちゃいけないことだっていうことだけはわかったから」


 オルト兄ぃはじっと私をみて、私の心に刻みつけるように言った。


「愚かなことは考えるな! 必ず僕に、マルルカの思うこと、考えたことを言うんだ。

 アル兄ぃに救われた命だと言うことを忘れるな」


「もう、寝るよ! 今日はアル兄ぃの部屋を使うといいよ」


 いつものオルト兄ぃがそこにいた。






 アル兄様の部屋も私の部屋もあまり変わらない。ちょっとした本棚があって少し広いくらい。

 あんなに優しくしてくれたスーおばさんが処刑されるというのに助けられないなんて。

 魔法を使えない……

 お友だちって言ってくれたメイちゃんの力になってあげられない。


 ぜんぜん眠りにつくことができない。

 ベッドから出て、庭に出ることにした。そっと扉を開けて外に出る。


 夕方激しく降った雨のせいで、空が透きとおって見える。



 夜の風はひんやりするけど、もう初夏といって言い季節だ。空には白い満月がぽっかりと浮かんでいた。

 魔王城で見た月を思い出す。あのときに見た月とおんなじ月なのかな?

 ノージスの月はヤービスの月とおなじ? 


「ノージスの神様 セフィス様、いらっしゃるのならどうかスーおばさんを助けてください」


 教会でしたようにひざまずいて、両手を硬く結んで強く願う。

 初めて神様にお願いごとをした。

 教会じゃないけど、きっと神様は見てくれる。あの月のように、いつでも、どこでも……


 オルトがそっと見守っていたことをマルルカは知らない。





 結局、あんまり眠れなかった。私の作ったポロ茶を飲んだらよかったかな?


 メイちゃんにパンを焼いてあげよう! 私は急いで身支度を整えると部屋を出た。

 オルト兄ぃもメイちゃんもまだ起きてこない。


 パン作りはよくこねるのが大事! 心を込めて、魔力は込めないで・・・・・・

 注意しながらこねこねする。

 発酵は、魔法が使えるから便利! でもちゃんと時間と心を込めて、パンを作る。

 メイちゃん、びっくりしてくれるかなぁ? おいしいって言ってくれるかな……


 オーブンに火を入れて、丸くまとめたパンをトレイに並べて焼き上げる。

 オーブンの薪の量を調節して火加減に気を付けながら、パンが焦げないようにじっとオーブンの前で見守る。


 焼きたてパンのいい匂いがしてくる! ちょっとでも気持ちが軽くなるといいな。

 さぁ、メイちゃん! オルト兄ぃ! 朝だよー って心の中で声をかけてみる。



「マルルカ、パンを焼いたのか? いい匂いだ」 オルト兄ぃが起きてきた。


「メイちゃんにちょっとでも元気になってもらいたくて・・・・・・」

「マルルカの気持ちはきっと伝わるよ。水を汲んでくるね。後は僕にまかせて!」



 メイちゃんが起きてくるころには、おいしい朝ごはんができていた。

「すごい朝ごはん! これ、オルトさんとマルルカちゃんが作ったの?」

「メイちゃんに何かしてあげたくて・・・・・・あったかいうちに食べよう!」

 メイちゃんは泣きながら「とってもおいしい、ありがとう」って言って朝ごはんを食べてくれた。



「メイちゃん、おかあさんは今どこにいるの?」


「たぶん、役場の地下牢にいるはず。でも、危ないから会いに来ちゃダメだって……

 あぁぁあ! どうしよう! あたし、ここにきちゃいけなかったんだ!」


 オルト兄ぃが甘くしたミルク入りコーヒーを私とメイちゃんに渡しながらメイちゃんに聞くと、メイちゃんは思い出したように私とオルト兄ぃを心配そうなおびえた顔をして見つめた。


「あたし、『もし危ないって思ったら、すぐレイス兄さんのところに行きなさい』っておかあさんから言われていたの。

 あのとき、マルルカちゃん、助けて!ってしか思わなくって……

 ごめんなさい! あたし、ここにいちゃいけない。迷惑がかかる。出なくっちゃ!」


「メイちゃん、落ち着いて。マルルカも僕も大丈夫だから。迷惑だなんてちっとも思ってないから……ね」


 突然、立ち上がり出ていこうとするメイちゃんの手をひいてオルト兄ぃは止めた。



「一緒に街にいこう。おかあさんに会いに行こう」


「本当にいいの? みんな魔女だ、悪魔の手先だって言われて、捕まるかもしれないよ……」


「心配しないで。いざというときには、メイちゃんのことはちゃんと逃がしてあげるからね」


「オルトさん、ありがとぉ。 そして、本当にごめんなさい」




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