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9 はじめてのお友だち

「おかあさん、ただいまぁー」

 明るい女の子の声と一緒に扉が勢いよく開いて、赤毛の女の子が入ってきた。


「おかえりなさい、メイ」


「あっ!! アルさんだぁー 会いたかったぁー!!!」


 メイと呼ばれた女の子は、アル兄様を見止めると満面の笑顔でアル兄様に飛び込んで抱きついた。


「メイちゃん、元気だった? 少し会わないうちに女の子らしくなったね」


 アル兄様がそう言うと、メイちゃんは 「ほんと? 本当にそう思う?」と、ちょっと恥ずかしそうにアル兄様を見ている。それから小さな鏡の前に行き、いろんな角度から真剣な顔をして鏡の中の自分を覗き込んでいた。


「メイちゃん、妹のマルルカだ。少し離れたところに暮らしていたんだけど、今度こっちで暮すことになったんだよ。友だちもまだいないから、仲良くしてくれるかな?」


 アル兄様の言葉にメイがくるっと振り向くと、目を丸くして私のほうへやってきた。


「マルルカちゃん? とってもかわいい!! 

 あたしメイって言うの。お友だちになろうね!」


 今・・・・・・お友だちって言ったよ!!  友だちって! 

 私に友だち? そんなの初めて!!   信じられなくて驚いて声も出せない。


「マルルカちゃん、今日、うちで一緒にご飯食べようよ! 友だち記念のお祝いしよう!

 お母さん、いいでしょー?」


「メイ、そんなこと突然言われても、マルルカちゃんも困ってしまうわよ。

 マルルカちゃん、ごめんなさいね。わがままな子で・・・・・・」


 スザンナさんは、少し困った顔で申し訳なさそうにそう言った。

 私、何か言わなくっちゃいけないの? なんて言ったらいいの?

 ぜんぜん、話の流れについていけてない…… 友だち記念? 

 ちょっと不安に思ってアル兄様とオルト兄ぃを見る。



「もしよかったら、街のどこかで一緒に夕ご飯を食べませんか? 僕もスザンナさんとメイちゃんと仲良くなりたいし!」


「オルト! そんなことを言ったら、お前のほうがスザンナさんやメイちゃんの迷惑になっちゃうよ」


 オルト兄ぃの言葉に、今度はアル兄様が困った顔をしている。


「外でごはん? 行こうよ、ねぇ、おかあさん。 ずっと外でごはんなんて食べてないし!

 おかあさんー お外でごはんー。 ごはん、ごはん・・・・・・」


 メイちゃんの瞳はキラキラ輝きだして、「ごはん」の連呼を始めた。

 スザンナさんとアル兄様が「しょうがないね」と了解したことで、みんなで食事に行くことが決まった。

 メイちゃんは飛び上がって喜んでる。そのうち、私とオルト兄ぃの手を取り、「わーい、わーい! ごはん、ごはん、お外でごはん!」と言いながら飛び跳ねて回っていた。

 ちょっとびっくりしたけど、こんなの初めて!! 

 でもなんだか、本当に楽しくなってきて、一緒に「ごはん!」って笑いながら飛び跳ねていた。


 スザンナさんは本当に申し訳なさそうに、アル兄様にしきりと謝っている。


「オルトが言いだしたことだし、気にしないで、スザンナ。

 マルルカも喜んでいるし、おいしい魚料理も食べられるしね!」

 


 夜は街の門が閉まってしまうから、スザンナさんのお店が終わる時間まで、私たちはブリドニクの街で宿を探すことにした。

 街に宿を取るなんて、ハリーとデレクと旅をしていたことを少し思い出す。でも、今はアル兄様とオルト兄ぃと一緒! すごくワクワクしてくる。気持ちがぜんぜん違う!


 スザンナさんの選んでくれたお店は、魚料理がとっても美味しかった。

 アクアパッツァ、カルパチョ、フリッターとか、食べたことのない料理がたくさん出てきた。大皿の料理や大きな魚をみんなで取り分けて食べるのが、こんなに幸せな気分になれるなんて思ってもいなかった。それにメイちゃんが本当にかわいい。

 女の子ってこんなにかわいいの? なんかよく動くし、よくしゃべる。なんかキラキラしている。


「やっぱり、大勢で食べるごはんはおいしいね。おかあさん! 

 父さんとお兄ちゃんがいたときには、時々外でごはん食べてたのにね 」


「そうね。・・・・・・でもあまりここで話すことではないわよ、メイ」


 スザンナさんはちょっと困った顔をしてメイちゃんを見ていた。


 メイちゃんのお兄さんレイスさんは画家を目指していて、この国クローネ王国の王都で3年くらい前から見画家見習いでがんばっているみたいだ。絵がとっても上手だってメイちゃんが自慢げに話した。メイちゃんのお父さんのデイビッドさんは、1年ほど前、隣町まで仕入れに行く途中、盗賊に襲われて命を落としてしまったという。それから、スザンナさんとメイちゃんはブリドニクで2人で暮らしているという。お兄さんのレイスさんは、王都からブリドニクまでは5日くらいかかるから、ブリドニクには帰ってこれず、お父さんのお葬式にも帰って来ることができなかったという。


「ごめんなさいね。楽しい食事の席に、こんな話をしてしまって・・・・・・」

 スザンナさんは少し寂しげに笑った。


「僕たちで力になれることがあったら遠慮しないで言ってくださいね。これからいろいろとお世話になるし……」

 オルト兄ぃがスザンナさんに優しく声をかける。


「おかあさん、そうだよ! シェルドンさんをアルさんたちに追い払ってもらおうよぉー」


「メイ!! おしゃべりはおしまい!! お行儀悪いわよ!

 ごめんなさいね。この子の言うことは気にしないで・・・・・・」


 スザンナさんはメイちゃんに小声でぴしゃりと言うと、メイちゃんはちょっとふくれて、(だっておかあさん、困っているじゃない・・・・・・)とブツブツと小声でつぶやいていた。


「本当に楽しかったわ。オルトさん、お気遣いありがとう。マルルカちゃんにも会えてよかったわ」

スザンナさんはメイちゃんのつぶやきが聞こえなかったように、オルト兄ぃと私に笑顔を向けた。

 メイちゃんの言っていた シェルドンさんって悪い人なのかな?と思ったけど、アル兄様もオルト兄ぃも何も言わないから、それ以上私も口にすることはできなかった。


 スザンナさんとメイちゃんとお店の前で別れた私たちは、言葉少なに宿への道を歩く。そのままそれぞれの部屋へ入って、翌朝を迎えた。




翌朝、アル兄様とオルト兄ぃの部屋に声をかけたけど返事はなかった。もう下に降りたのかな?と思い、慌てて宿の食堂に降りていく。窓際のテーブルでコーヒーを飲んでいる2人がいた。


「おはようございます。朝ごはんは食べたのですか?」


「おはよう、マルルカ。僕たちはコーヒーだけでいいよ。マルルカは何か食べるかい?」


「いえ、リモリス茶があれば・・・・・・昨日あまり眠れなくて・・・・・・」


「マルルカ特性のポロ茶がなかったからかな? あれはよく眠れるからねー」

 オルト兄ぃがちょっといじわるなことを言う。


「リモリスはないよ。オレンジジュースでどうかな?」

 私がうなずくと、アル兄様は宿の人にオレンジジュースを頼んでくれた。少しして、陶器の小ぶりなマグに入った搾りたてのオレンジジュースが目の前に置かれる。

 少し酸味の強いオレンジが、ボーっとしている頭をすっきりとさせてくれる。

(もう少し冷えていたらいいのに・・・・・・)と思うけど、魔法がないのだから氷を作れるはずもない。季節外れの氷を買うことができるみたいだけど、ものすごく高いし、手に入れるのも大変なのだとか。


「帰る前にスザンナさんのところに行きますか?」


「マルルカは、昨日メイちゃんが言ってたことを気にかけているの?」

 アル兄様はコーヒーを飲み終えると、私に視線を向けた。


「スザンナさん、困っていることがあるのかな? と思って・・・・・・」


「スザンナが言いたくない、かかわってほしくないと思っていることに、首を突っ込んじゃダメだよ。かえって迷惑をかけることもある」


「でも!! 」


「土地の事情も知らない、会ったばかりの人がどんな人かもわからない。ましてや、マルルカは自分のこともまだちゃんとわかっていない。そんな子に何ができるのか、わかるよね?」


 アル兄様の言う通りだ。ここに来たばかりで、まだ何も知らないし、何もできない。

 でも、少しでも力になれることがあるのかな? と思っただけ・・・・・・


「帰る前に、スザンナさんのところに少しだけ顔を出して、あいさつしてから帰ってもいいんじゃない? アル兄ぃ? 

 僕とマルルカは、また時々くることになるからさー」


「オルト兄ぃ・・・・・・」

 オルト兄ぃは、私のほうに茶目っ気たっぷりにウインクした。


「しょうがないなー。2人とも・・・・・・ スザンナに挨拶をしてから帰ることにしよう。

 マルルカ、帰り支度をしておいで」

 アル兄様はオルト兄ぃを睨みながら、私に声をかけた。


「ありがとう、アル兄様、オルト兄ぃ!!」

 私は、支度をするために急いで部屋へ戻った。



「オルト、ここであまり遊ぶな。マルルカを巻き込むなよ。いいな」


「主様の仰せのままに」

 アルは窓の外に視線を移して、低い声でつぶやく。


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