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8 ブリドニクへ

 森の木々の間の小路を3人でおしゃべりしながら歩く。この森はブリドニクの西側にある。木漏れ日が暖かくて、とても気持ちがいい。近くに魔物の気配もないから、つい気が緩んでしまう。


「兄様、魔物の気配をぜんぜん感じないのだけど、ここは安全な森なの?」


「あぁ、ノージスには魔物はいないんだよ。この森に住む動物は、リスや野ウサギくらいかなぁ? 

この世界には魔気はないからね。魔物もいなければ魔石もない。だから魔力や魔法もない・・・・・・とも言うけどね」


「そうなの? じゃぁ、魔物の被害もないのねー! 冒険者の人たちも依頼が少なくて困っちゃうんじゃないかしら?」


「冒険者がいないんだよ。移動しているのは商人や吟遊詩人の人たちくらいだよ。

 マルルカ、ヤービスとノージスは魔法のあるなしだけじゃない。全く違う世界だ。

 前にも言ったけど、ここで魔法を使うとこの世界の理を壊すと言ったこと、忘れちゃダメだよ」


 アル兄様は、足を止めて私のほうを向いた。


「魔法を使うと、魔力の残滓が漂う。ほんの少しだったら影響はないけど、それがどんどん残っていくのを想像できる? 大気に漂う魔力の残滓を動物が吸い込み続けたら、長い年月の間に、もしかしたら魔物になってしまうかもしれない。

 だから、この世界に簡単に渡ってきてはいけないし、魔力の残滓をこの世界に残していってはダメなんだよ。もっとも、僕たち以外、誰も渡れないんだけどね!

 だからこそ、僕たちが気をつけなくちゃいけないことだ」


 私、アル兄様に怒られてばっかりだ。

 本当に何も知らないんだなぁーと、しょんぼりしてしまう。


「アル兄ぃ以外、誰もノージスに来たことはないし、ヤービスの世界の人たちはノージスのことなんて誰も知らないんだよ。だからマルルカはそんなにしょげることないからね!

 いざというときには、オルト爺さんが厳しく教育いたしましょう」


 オルトは優しい。そう言うと私たちの先をズンズンと歩き始めた。


「あっ! それと、前にマルルカに魔力が洗練されていないって言ったの覚えてる?

 あれは、残滓が多いってことだよ! 今はだいぶましになったけどねー」


「えっ!? 私の魔法は無駄が多いっていうのは、そういうことなの?」


「そうだよ。アル兄ぃの魔法はきれいだったでしょ? 残滓がないんだよ。マルルカの魔法は残りカスがいっぱいだったよ!」


「オルト兄ぃ! 私の魔法は残りカスの多い汚い魔法だっていうこと?」


「あぁあー 自分で言っちゃったぁー 今はだいぶきれいな魔法になってるけどね!」


 オルト兄ぃは、思い出したように、私のほうへ振り返ってそう言うと、ケラケラ笑いながら先をズンズン歩いて行った。

 

 ちょっとだけショックだった。優しいって思ったことを撤回だ!

 今までのたった一つの私の得意分野なはずだったのに、まったくダメな子に思えてくる。


「マルルカ、オルトははっきりとストレートに言うだけだから気にすることないよ」


 アル兄様がニコニコ顔で私に言う。

 アル兄様もそう思ってたってことか・・・・・・それ、もっとショック・・・・・・

 もっと魔力を循環させて練る練習をしなくっちゃダメだってことなのね。




 森を抜けると小麦畑が見えてきた。青々とした生い茂った小麦は後2か月くらいで収穫の時期になるらしい。小麦畑の向こうに石壁が見えてきた。ブリドニクの街だ。

 ノージスでの初めての街ブリドニク。

 



 ブリドニクの西の門をくぐると、海の匂いがした。


「アル兄様、海の街なの?」


「そうだよ。ブリドニクの近くにはいい漁場があるんだよ。海の街は初めて?」


「一度だけ、イストリアの海の街に寄ったことがある。その時と同じ匂いする」


「そうなんだね。これからはこの街にはしょっちゅう来ることになるからね。ここはお魚もおいしいよ。ヤービスとノージスは双子の兄弟みたいな世界だから、魔法があるかないかの違いは大きいけれど、他はみんな同じだよ。動物や植物も同じ。言葉もわかるようにしてあるから心配しないで!」


 アル兄様とオルト兄ぃは門番さんに挨拶をして何か話をしている。


「さぁ、入ろう! ブリドニクの街へようこそ マルルカ!」

 アル兄様は少しおどけた風にして、私を街のほうへといざなった。



 西の門からブリドニクの街が一望できる。

 青い海に映えるオレンジの屋根。海に面した港は、西門からずっと降りたところにある。

 ブリドニクは、港に面した丘の斜面に作られた、すり鉢状になった街だった。西門からはゆるやかな下り坂になっていて、少し降りるとブリドニクの人たちが暮らす家が建っていた。


 ブリドニクの街に入ることができるのは、私たちが入ってきた西門と東門、それから港からだけだ。西門は森と畑にしか面していないから、ブリドニクの農家の人たちしかほとんど使わないので小さな門らしい。東門のほうが大きくて、外からの人もたくさん出入りする。どちらの門も日の出から日の入りまでしか開かないので、日のあるうちに街には出入りしなければならない。

 入り江のような地形にある街なので、海側の東と西は海に面していて、ずっと石壁で囲われている。自然の地形をうまく利用して街の安全を守っている。


 緩やかな坂道は途中から下り階段となって、家々の間を通っていく。3人並んで歩くには狭い道だった。

 ちょっと迷路みたいで楽しい。

 おしゃべりしながら歩いていると、道幅は広くなり、商店街のような一角に出てきた。


「さぁ、ここだよ。これから来ることになるお店は・・・・・・」


 私たちは、葉っぱの絵が描いてある看板のある1軒の小さな店の前で足を止めた。





「スザンナ、こんにちは。足りなくなっていそうなものを持ってきたよ」

 アル兄様はそう言って、お店の扉を開けた。


 お店はそれほど大きくはないけど、サボンやてぬぐい、キャンドルやキャンドルスタンドなんかの日用品を取り扱っている雑貨屋さんみたいだ。カウンターの横には、灯り用のオイルの樽がある。カウンターの後ろには、ちょっとした傷薬やお茶、お肌を整える化粧水やクリームなんかが入った小さな壺が並んでいた。

 いろんなハーブ類の香りが混じっている。


「アル! ちょうどよかった。足りなくなっていたものがあったのよ」


 カウンターからスザンナって呼ばれていた30歳過ぎくらいのこげ茶色の髪の優しそうな女の人が出てきた。

(やっぱり、茶色の髪は定番だね! )


「あら? こちらの素敵な男性と可愛らしいお嬢さんは?」


「僕の弟のオルトと妹のマルルカだよ。これからは、この2人が品物を届けに来るから、よろしくね。 スザンナ」


 オルトがぺこりと頭を下げたので、私もまねっこをしてぺこりとした。

(オルトのまねっこをしてたら間違いは絶対ない!!)


「マルルカちゃんは、うちのメイと同い年くらいかしら?」

「14歳です」って言ったら、「メイより2つお姉さんだったのね」と、ちょっと驚いた顔をしている。

私、やっぱり、まだ幼くみえるのかしら・・・・・・


 それからアル兄様とオルト兄ぃとで、スザンナさんと品物を前に、いろいろとお話をしていた。私の出番はあまりないけど、ちゃんと知っておかなくっちゃ!と思って、アル兄様の後ろに張り付くように後ろでじっと立つ。




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