表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/128

4 マルルカの決心(1)

 気づくと、あたしは自分のベッドにいた。

「マルルカ、気が付いたかい?」


 アルさんとオルトがあたしの顔をじっと見ている。


「アルさん、オルト・・・・・・ごめんなさい。あたし・・・・・・」


 オルトがずっとあたしの手を握っていてくれてた。


 


「ポロ茶だよ。熱いから気を付けて」


 アルさんが、いつものポロ茶を渡してくれた。

 カップを受け取るとお茶の温かさがじんわりと伝わってくる。最初にアルさんに会った時もポロ茶をいれてくれたんだっけ。


「アルさん、あたし・・・・・・」


 涙がポロポロとこぼれてきて、言いたいことがいっぱいあるのに・・・・・・

何を言ったらいいかわかんない。


「マルルカ、無理をしなくていい。がまんもしなくていい。

 君は、一人じゃないんだよ。

 つらいときには僕たちがいる。ここに君の居場所があることを忘れないで」


 アルさんはそう言うと、オルトと一緒に部屋を出て行った。



 涙が止まらない。












****************************************


「少し、荒療治だったか?」

「いえ、いつの日か必ず訪れる出来事です。それが今日だっただけの話・・・・・・

 マルルカは乗り越えることができると思ったのでしょう? 主様は・・・・・・」

 

 魔王城のとある1室。テラス窓からの青い月明かりに静かに照らされている部屋にいるのは漆黒のアルレオールと深紅のオルティウスの2人。

アルレオールはテラスの窓から灯りを捧げている月をじっと見ている。オルティウスはアルレオールの足元に跪いて、アルレオールの投げかけた言葉に静かに答えた。




「無礼を承知でお伺いいたします。

 主様は、なぜマルルカにそこまでご興味をお持ちになるのでしょうか? 

 これまでに一度たりともなかったこと・・・・・・


「なぜだろう・・・・・・       私にもわからぬ。

 先が読めぬ、ということは、案外楽しいものだ。

 そうは思わぬか? オルティウス」



「主様がそう仰せであれば・・・・・・

 ところで、ハリーはいかがされますか?」

「出世欲、上昇欲の強い男よ。あれについてはマルルカの好きにさせよう。

 どうするのか・・・・・・そのほうが面白そうだ。

 しばらくはモリーを頼むぞ。 オルト兄様!!」


 アルレオールはオルティウスを見て楽しそうに笑った。


「わかったよ! 僕に任せて アル兄ぃ!」


 2人の笑顔が冷たい月明かりに浮かんだ。








****************************************************


 

 う・・・・・・目が開かない。 腫れぼったい。

 泣きながら、知らないうちに眠ってしまったみたいだ。


 メイドさんもオルトも来ない。


 そういえば、ずっとオルトがそばにいた。その前はアルさん。

 本当の時間は1か月くらいしか経ってないって言うけど、あたしがアルさんと知り合ってからは1年以上にもなる。


 その間、帰る場所のないあたしに居場所をくれて、魔力の歪みを直してくれた。

 そして、知らないことをたくさん教えてくれた。

 思い出すと感謝の気持ちでいっぱいになる。


 アルさんもオルトも普通の人じゃないっていうことはもうわかる。知りたいとは思うけど、聞くのも知るのも、なんだかちょっと怖い。

 今までもそうだったように、アルさんは、あたしに準備ができたときに、いつか教えてくれるのかな? 


 今回のことだって、きっとそうだ。

 あたし、もっと自分が元気になってると思ってた。もう谷底に落とされたことなんか乗り越えたって……

 それなのに、突然、他の人からハリーの名前を聞いただけで、あんなに動揺するなんて自分でも思っていなかった。


 ハリーを目にして、あの場に、一緒にいるのが耐えられなかった。一生懸命がまんしようと思ったけどできなかった。

 オルトがいなかったら、あのレストランを壊してたくらいに……いやだった。


 あれが、アルさんのテストだったんだなぁ…… 自分で気づくことができるように きっと


 あたしは、こうやって嫌なことを知らないふり、気づかないふりをしてきたんだ。


 あたしは、まだ全然強くなんかない。

 他の人たちとおんなじように、ちゃんとしたきれいな女の子になれたから、醜い魔力の化け物のマルルカはいなくなったって思ってた。

 でも、あたしの中にちゃーんといた……


 あのときに、ハリーやデレク、メザク様に言われた言葉、やられたこと

 他の人たちの奇異なものを見るような視線……

 そして2人に谷底に落とされたこと、 全部、知ってる。

 あたしの中に刻まれている!!


 アルさんは、それと向き合えるだけの力をくれた……と思う。


 あたしは、それをなかったことになんかできない。だって、あれもあたしだから!



 あたしは何をしたい?

 冒険者? メザク様のところ?


 ハリーとデレクを谷底に突き落とすのもいいかな・・・アハハ・・・・・・

 簡単に突き落とせそうもないけど・・・・・・


 あぁぁぁ・・・・・・これが復讐したいっていう気持ち。

 ちょっと想像したら、心が軽くなった。



 アルさんは、命ある者は他の命を糧にしているって言ってた。あたしが2人を谷底に突き落としたら、2人の命なんて私の糧にできないから粗末にすることになっちゃうし、2人の命に感謝もできない。

 できないし、できたとしてもやっちゃいけないことだ!!





 決めた! やっぱり、アルさんのおうちで薬草を育てる!!

 あたしみたいに不安になったり、心を落ち着けたい人もいるかもしれない。

 病気の人をちょっと楽にできる薬草を作りたい。アルさんがあたしを助けてくれたみたいに・・・・・・


 魔法のない世界、魔法を使えない世界。

 よくわからないけど、薬草のこととかをもっと勉強して、誰かを助けられたらいい。


 人一倍魔力量が多いのが唯一の取柄だったのに魔法のない世界か・・・・・・

 フフフ・・・・・・変なことになっちゃったけど、それがいい。


 この世界にいたら、またどこかでハリーとデレクに会うかもしれないし、会ったらまた魔力が暴走するか、もしかしたら、今度は殺したいって思うかもしれない。


 それはダメだ!! きっとアルさんに叱られる。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ