表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/128

3 再会

「ヴァニタス枢機卿様 ご歓談中失礼いたします。

 枢機卿様にご挨拶させていただきたいという方がお見えでございます。いかがいたしましょうか?」


 給仕係の人がドアをノックして部屋に入ってきた。

「挨拶? 誰だろうか?」

 アル兄様が首をかしげる。

「勇者ハリー様でございます」



 ハリー!!!!!!

 ハリーの名前を聞いたとたん、心臓の鼓動が激しくなり息をするのも苦しくなってきた。

 谷底に突き落とされた時のことをまざまざと思い出す……

 あのときの、空っぽになった気持ち、醜かったマルルカだったときの気持ち……

 私の感情が大きく揺らぎ、体の中で魔力がどんどん膨れ上がってうねっていくのがわかる。


「モリー! 」

 隣りに座っていたオルトが私の手を握りしめた。握られている手からオルトの魔力が流れてきて、体中をおおっていくのがわかる。

 アル兄様が目を細めて私をじっと見ている視線を感じる。

 あぁ、私ってやっぱりダメな子…… とっても悲しい気持ちになる。


「わかった、会うこととしよう。お通しして」

 アル兄様がそういうと、給仕係は一礼をして部屋を出て行った。


「オルト、モリーを頼むよ」

 アル兄様はオルト兄様にそう言うと、私に顔を向けてうなずいた。






「ヴァニタス枢機卿様 ハリーです」

 しばらくして、ノックの音がすると よく知っているハリーの声が聞こえた。


「入りたまえ」

 アル兄様が声をかけると、ドアが開き、ハリーが一礼をして入ってきた。



「突然のお願いにもかかわらず、許していただいてありがとうございます。

 ハリーと言います。

 偶然、ヴァニタス枢機卿様の姿を見かけたので、一度挨拶させていただきたくて

 厚かましくお願いしてしまいました」


 サラサラ金髪を自慢してたハリー、最後に見たときと同じつくり物のような笑顔!!


 この人は、私を谷底に突き落としたことを何とも思ってないの?

 もう、忘れちゃったの??

 ずっとザワザワした感じで、ちっとも落ち着かない。


 ハリーの顔を見ると、あのときのことが思い出されて涙がこぼれそうになる。慌てて私は顔を伏せた。



「わざわざありがとう。私がアルレオール・ヴァニタスだ。向かい側にいるのは私の弟妹きょうだいだよ。オルティウスと可愛い妹のモリーだ」


 オルト兄様は軽く会釈をしているが、私は顔を上げることができない。

 オルト兄様がずっと手を握っていてくれる。 体中を魔力が激しくうねっているのがわかる。


「モリーは恥ずかしがり屋さんでね。初対面の男性には、まだ緊張してしまうんだよ。

 あまり外に出したことがないものでね。許してやってほしい」


「とても愛らしい!! 

 守ってあげたくなるようなお嬢様です。大切にしているヴァニタス卿の気持ちがよくわかります」


 ハリーがじぃっと私を見て、それから視線でなめ回すように私を見つめているのがわかる。

 いやだ・・・いやだ! ・・・・・・いやだぁー!!


 叫びたいけれど声が出ない。


「ハリー殿の素晴らしい活躍とその強さは、私も聞いているよ。そのうちに、ゆっくり君の話を聞いてみたいものだ」


「ぜひ、その機会を僕にください! 必ずヴァニタス卿を楽しませてみせます!

 オルティウス様と・・・・・・そしてモリー様もぜひ!!」


「すばらしい自信家だ。さすが、勇者と称えられるだけありますね。ハリー殿。

 いずれ、こちらから連絡をしましょう。

 今日は弟妹と水入らずで時間を過ごしているので、申し訳ないがお戻りいただくとありがたい」


「はい! 貴重なお時間をいただきありがとうございます!!

 お招きいただけるときを 楽しみにして待っています」


 ハリーは爽やかな笑顔を残して部屋を出て行った。





「モリーは大丈夫か? オルト」

「いや・・・・・・手を離すと魔力が暴走する」


 アル兄様は何も言わず、私のほうへきて、いつものように頭に手を置く。

 アルさんの手の感覚! ポワッと温かいアルさんの魔力だ。

 だんだんと、温かい感覚が頭のてっぺんから体中に染みわたっていき、激しくうごめいていた私の魔力を包みこんで、吸い取っていくのがわかる。



「これでひとまずは大丈夫だろう。オルト、手を離しても問題はない」

 オルトは握っていた手をそっと離した。


「ごめんなさい。アルさん、オルト。あたし、あたし・・・・・・」

「いいんだよ。マルルカ・・・・・・もう、モリーにはなれないようだから、今日は帰ろう。

 今度また、ゆっくりと来ようね」



 気が付くと、あたしは銀色マルルカになっていた。

 アル兄様が膨れ上がったあたしの魔力を吸い取ってくれたからだ。

「ここを出るだけだから」といって、アルさんはあたしにアルさんのマントを頭から被せて抱っこした。

 レストランの人はびっくりしながらも心配そうにして、あたしを見ていた。アルさんが何か言っているのはわかったけど、よく聞こえなかった。

 そのままレストランを出て、人気のないところで、あたしたちはお城に転移した。






 ハリーの姿を見てから、あたしがずっと思ったのは、

 どうして、あたしを殺したのにハリーは平気な顔をしてられるんだろう?? ってことだけ。


 もちろん、目の前にマルルカがいるなんて、ハリーが思いもしないのもわかってる。

 でも、ハリーは生きていて、デレクもきっと生きていて・・・・・・

 でも、マルルカは死んだ。


 マルルカを殺したハリーとデレクは、普通に生きているんだっていうことが、ハリーを目にしてやっとわかった。


 ちょっとでも、悲しいって思ってくれたのかな?

 ちょっとでも悪かったかなって思ってくれた? 


 メザク様は悲しんでくれた? ちょっとでもさみしいって思ってくれた?



 きっと誰も、何も思ってやしない・・・・・・

 それだったら、あたしは、最初っからいないのとおんなじだ!!!


 だから、あたしはあのとき悲しかったんだ・・・・・・

 ハリー、デレク、メザク様の心の中に、あたしはいないって、そんなことわかってた。

 あたしはみんなに都合のいいおもちゃだったし、道具だっただけ。

 わかってたのに、それを知るのが怖くって、気づかないふりして、あたしはそれから目を逸らしてたんだ。 


 ただの道具だって、あたしが知りたくなかった。認めたくなんかなかったんだ。







 やっとわかったよ・・・・・・アルさん・・・・・・






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ