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2 ソラン聖国 ソラニス散策(2)


 アルさん、アルに・い・さ・ま・・・・・・

 声を出さないで、何度も言ってみる。なんかちょっとくすぐったい。


 アル兄様とソラニスのいろんなところを見て回った。

「欲しいものがあったら遠慮なく言うんだよ」って言うけど、欲しい物はなんにも浮かばない。


 アルさん、アル兄様とこうやって一緒に街を散策しているのが、あたしにとっては夢のような出来事に思えてしまう。

 ハリーとデレクと街を歩いていた時は、誰にも見られないように、誰とも目を合わせないように下ばかりみて歩いていた。


 ソラニスの人たちが暮らしている様子、働いている様子を見ているだけでも楽しい。

 赤ちゃんをあやしているお母さんの優しい顔、近所の人たちが水汲み場で楽しそうにおしゃべりしている様子。子どもをしかっているお母さん。

 友だちと決闘ごっこをしている男の子たち。片隅に座って、ひそひそとおしゃべりをしている女の子たち。

 お店の前を掃除している店員さんや、師匠みたいな人に怒られている弟子?のような人。


 来る日も来る日もメザク様のところで魔法の訓練ばかりしていたから、こんな街の光景をずっと見るのも接しているのも初めてだった。

 こんなにもいろんな人が、たくさんの人がいる。

 

 ハリーとデレクと一緒に、魔王を倒そう! って旅に出たとき、暮らしている人たちのことを考えたことなんか一度もなかったことに、マルルカは気づいた。

 メザク様がハリーとデレクに、あたしを押し付けただけ…… あたしの居る場所がメザク様のところから2人のところに移っただけ――それだけだった。


 あたしの住んでいた世界はとっても小さかった。



 賑わいを少し外れたところにかわいいお店を見つけた。

 小さなショーウインドウには、きれいな色とりどりのリボンや花の髪留めなんかが並んでいて、キラキラしている。

 足を止めてじっと見ていたら、「入ろう」って声をかけてくれると、アル兄様はドアを開けた。


「どれがいいの?」って聞かれたけど、よくわからない。

 こんなお店に入ったのも初めてで、何かを自分で選ぶっていう状況にものすごく戸惑ってしまう。

 

 

 お店の中をキョロキョロしているあたしに、アルさん、アル兄様は、モスグリーンのサテンのリボンを選んでくれた。お店の人が三つ編みにしている茶色の髪に結んでくれる。

 ちょっと気持ちがくすぐったい。


 それから、大通り沿いにあるテラスのあるカフェで甘いケーキを食べたり、

 おしゃれなオートクチュールサロンでドレスを注文して選んでみたり・・・・・・

 あたしには、何もかも初めてのことばかりだった。

 こんな世界があるなんて、そこに自分がいることが信じられなかった。



「ヴァニタス枢機卿様 ようこそお越しくださいました」

 アル兄様は、大通りに面している一番大きな宝石屋さんに入った。

 入口を守っている店員さんがアル兄様にお辞儀をすると、お店の中に招き入れるようにして大きなガラスがはめ込まれた扉を開けてくれた。

 広いお店の空間のところどころにあるガラスケースに並んでいるネックレスやペンダント、指輪なんかがキラキラ輝いている。

 ガラスはとっても高いのに…… こんなにたくさんのガラスをみたのも初めて!!

 歩くたびに足が沈んでしまうようなふかふかの絨毯。

 つい足を滑らせて転んでしまったら、割ってしまったらどうしよう!!

 足を1歩進めるのに慎重になってしまう。


(アル兄様って有名人なんだね)

(こういうお店では、上位聖職者の名前を知らないと礼儀知らずになってしまうからね。オルトに教えてもらったでしょ?)

 アル兄様と小声で会話しているうちに、2階の個室へと案内された。


「ヴァニタス枢機卿様、本日はどのようなご用向きでございましょう」

 ちょっとふっくらした上品なおじさんがやってきた。お店の偉い人なんだと思う。


「今日は、私の大切な妹モリーの守り石を探しに来たのだけど、何かあるかい?」

 アル兄様がそう言うと、少しお待ちくださいませと言って、おじさんは部屋を出て行った。

 その間、赤色のきれいな紅茶とクッキーが供される。


「すごいお店だねー、アルさん。こんなお店あったんだぁー」

「モリー、お行儀が悪いよ」

 キョロキョロし始めた私にアル兄様が注意をする。


 そうだ・・・・・・わたくしはモリー!

 特訓した成果を見せなくては!!


「守り石って何ですの? アル兄様」

「守り石は特別な石でね。意思を持つ石と言われている。石が所有者を選ぶんだよ。

 石は自分が選んだ所有者を守る。だから欲しくても石に選ばれなければ手には入らないんだよ。

 滅多に出回るものではないし、あっても非常に高価。それが守り石だよ」


「そんなに高価な物をわたくしに? 」

「モリーは大切な私の家族だからね! モリーを選んでくれる守り石があったらそれは絶対手に入れたほうがいいし、手放してはいけない」


 そんな話を聞いていると、さっきのふっくらおじさんが白い手袋をして、ビロードが張られたトレイを手に戻ってきた。


「今、私どもにございます守り石は3つでございます。

 今、見つかっている守り石が3つとお考えいただいてもよろしいかと存じます。

 見つかったという話はここ数年聞いておりませんので・・・・・・」


 トレイには、透明な水晶のような石、緑色の翡翠のような石、紅赤色のルビーのような石が並んでいた。

 どれも見たことのない大きさできれい!!! でも、ちょっとツンとした冷たい印象のある石ばかりだ。


「モリー 魔力を少し手に流して、石の上にかざしてごらん」


 アル兄様の言う通り、ほんの少しだけ魔力をてのひらに集めて、石の上に手をかざしてみる。


 すべての石が強く輝きだした。



「おぉー これはすばらしい!! さすが、ヴァニタス枢機卿様の妹君でございます。

 すべての石が反応しております。

 これほどの反応を示される御方に初めてお会いいたしました。

 いかがいたしましょうか? 」


「私が試してもいいかな? 」 アル兄様が言う。


「もちろんでございます」


 アル兄様が手をかざすと、透明な石がより一層強く輝きだした。緑色の石と紅赤色の石は弱く点滅して光っている。


「これは!!! 

 さすが ヴァニタス枢機卿様でございます。

 緑色と紅赤色の石が枢機卿様に対して気おくれしているという状況でしょうか・・・・・・

 わたくし、このような場面に立ち会わせていただきましたこと、感謝の念に堪えません。

 神に感謝を!」

 ふっくらおじさんは、両手を胸の前で組み首を垂れて祈り始めてしまった。



「では、透明な石をモリーの守り石としよう。この石には私の魔力も付与するつもりなのでね。石に気おくれされては困ってしまう」


「なんと!! そのようなことができるとは!!

 私、長年この仕事をしておりますが、初めてのことでございます。

 この石はどのように加工いたしましょうか? 

 通常は指輪とするのですが、石が大きいのでペンダントでも十分に目立ちますし・・・・・・」


「いや、私が石の気持ちを汲み取って形作るとしよう」


 アル兄様は、私を見てにっこりする。

 私もオルトに教えてもらった笑顔をアル兄様に、披露してみせる。


 そうして、お店の人たちに深々とお辞儀をされて、私とアル兄様は宝石店を出た。

 外はすっかりと日が落ち、ソラニスの街の灯りが温かな光を落としていた。光と影のコントラストを作っていて、昼とは違う美しさを見せてくれていた。



「アル兄様、今日はありがとうございます。わたくし、とっても楽しかったですわ」

 がんばって、お嬢様風に言ってみる。


「モリー、今日最後のご褒美がまだ残っているからね。ソラニス一番のレストランで、オルトと一緒に夕食だよ。今日はたくさん歩いたから、お腹いっぱい食べるといいよ」


(アル兄様の笑顔って怖い。何かあるに違いない)

 今までの経験上、私はちょっと警戒する。





 大通りを一つ外れた通り沿いにそのレストランはあった。この一角はフェンスに囲まれた前庭があるので、建物があまり見えない。街頭の灯りが道を照らしている静かな通りだ。

 私とアル兄様はひとつの建物のある前庭を進んでいく。

 前庭の奥のほうに瀟洒な2階建ての建物が見える。かすかにきれいなメロディの音楽が聞こえてくる。暖かい光が庭の池の水面に反映していてとてもきれいな場所だ。


 シャンデリアが煌めくエントランスでは、オルト? が待っていた。


 その姿は、私が知っているオルトじゃなかったー!!

 私と同じ薄茶色の髪に茶色の瞳!

 紺色の制服に金色のモール・・・・・・私でも知っているエクレシア聖騎士!

 オルト、アルさんより若いんですけどぉー!!!


「やぁ、モリー! 君のの2番目の兄、オルティウス・ヴァニタスだよ」

 えぇぇぇえー  何?  この設定!


 兄が2人になりました・・・・・・





 それから、兄弟妹3人で仲良く食事の時間を楽しめるようにと、レストランの個室に案内された。

 

 彩のきれいな料理が一皿ずつ丁寧に運ばれてくる。

 アル兄様と私は、オルト兄様に今日あったことをたくさん話して聞かせる。

 とても仲の良い兄弟妹だ。       

 うん、そう見える。


「オルトが兄だったとは、わたくし 知りませんでした」

「そうかい? でも執事があるじと同じテーブルで食事を楽しむわけにはいかないだろう?」

 オルトは食後のコーヒーにお砂糖を一匙入れてかき回す。


「オルトは、聖騎士なんだよ。

 聖騎士は、神の御名(みな)の下、国中の世界中の人たちを守ってあげるのが仕事だからね」

 アル兄様がニコニコとして言った。


「だから、城でわたくしの安全を守ってくれていたと・・・・・・」

「まぁ、そういうことだね!  神様は方便を使うからね!」

「方便? 」

「そう 嘘と騙し! 」

 アル兄様はケラケラと笑った。

 これが神に仕える枢機卿の言葉なんだろうか・・・・・・




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