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1 ソラン聖国 ソラニス散策(1)

第2章 始まります。

 アルさんはしばらく考えるふうにしてうつむき、それから私の顔を見ると、ニッコリとほほ笑んだ。

「マルルカ、明日は、ソラニスの街に一緒に行こう。でも、ちゃんと髪の色と瞳は変えるんだよ! 

 街のいろんなところに行って、買い物をしておいしいものをいっぱい食べよう。

 オルトも一緒に行こう。君にもがんばったご褒美をあげないとね」

 アルさんは、オルトのほうにも顔を向けると、オルトは何も言わず頭を下げるようにしてうなずく。


「明日は朝早くからでかけるから、僕たちも今日は休もう」

 アルさんはオルトにそう声をかけると静かに席を立ち、オルトがそれに続いた。


「マルルカ、おやすみ。明日は楽しみにしていてね」と、アルさんは言って、あたしの頭をポンポンすると部屋を出て行った。





 マルルカの部屋を出てからオルトはアルに声をかける。


「主様、何をお考えです?」

「明日のお楽しみさ。オルト、マルルカをよろしく頼むよ」

 オルトは一礼して、アルを見送ってから姿を消した。




****************************************************


 ソラン聖国は、エクレシアと言われるこの世界最大の宗教の神権国だった。今から200年ほど前は、王様がこの国を治めていたのでソラン王国と呼ばれていた。時のソラン王がこの国をもっと繁栄させようとして、ソランを挟むようにして東西にあるイストリアとガジスの両王国から支援を受けようとしたのだ。でもそれは、支援を受けた国の属国になるという危険があったし、うまく立ち回らないと、もう一つの国からは裏切ったとして、攻められる危険があった。

 両大国を手玉に取るような立ち回りが、ソランにできるのか? という不安が国中に広がっていった。


 それを危惧して、あるいは戦乱の地となってもしかしたら自分たちの国が消失してしまうかもしれないと恐れた民が、エクレシアの神職者に助けを求めた。エクレシアとしてもソランの情勢が不安定になることを恐れ、王を討った。それ以来、ソランは聖国と名乗り、神の名の下、国の統治をしていた。


 かつては王都だったソラニスにはエクレシア大聖堂があり、今でも聖国の中心となっている。

 ソランに住む人びとみんながエクレシアの信者ということはなく、他宗教の信者も少なからずいる。ソランは他宗教にも寛大で、それぞれが信じる宗教・神様を認めていた。エクレシア教と他宗教とでかかる税率が少し異なる程度だった。


 ソラン聖国がこの大陸の東西の交易の中継拠点にあることから、交易路を整備して旅の安全を守っていた。エクレシアの聖騎士が中心となって、エクレシア教を信じる信じないを問わず、行き来する人たちの道中を守っていた。それ故、旅をする人たちや交易商人は、エクレシア教会に感謝こそすれ厭う者はいなかった。世界最大の宗教へと発展していくのは当然の成り行きだった。


 ソラン聖国の中心都市ソラニスは、たくさんの商人が集まる場所だった。そしてエクレシア大聖堂があることからエクレシア教徒も世界中から集まり、いつも大勢の人たちで賑わいを見せていて、活気ある街だ。




 そんなソラニスの郊外南門のそばに、髪と瞳の色を変えたマルルカ、茶色の髪をいつもより伸ばして後ろに束ねているアルが、人の目に触れることなく降り立った。


「マルルカ、今日は君の行きたいところ、君のしたいこと、いっぱい叶える日だよ。夜は、今までがんばってきたご褒美に、ソラニス一番のレストランを予約しているから、楽しみにしていてね」

 アルさんはいつものように優しくマルルカに声をかけると、頭をポンポンした。


 ソラニスの南門からエクレシア大聖堂へ向かってまっすぐに大通りが通っている。大通りの左右は世界中からやってくるエクレシア教徒に向けて、青い屋根と白壁で統一された大きなホテルや商会・大店が軒を並べていた。街路樹がその通りに緑の彩を添えている。ソラニスは青、白、緑の色に彩られた、清らかで落ち着いた美しい景観を成していた。


 その道をマルルカは薄いペパーミントグリーンのドレスを着てワクワクと飛び跳ねるように歩いていく。その後ろを金糸で縁どられたロイヤルブルーのマントを羽織っているアルさんが見守るようにして歩いている。


 アルさん、ちょっとかっこいい!

 マルルカはくるっと後ろを振り向くと、いつものラフな格好をしているアルさんとは違う姿を見て、少しドキドキしてくる。


「アルさん、あたし、ソラニスに来るのが初めてなの! こんなにきれいな街だったのね。ハリーとデレクと旅をしていたときは、魔物退治をするのに国の外れのほうばかり行ってたから、こんなに大きな街を見たことなかった」


「マルルカ、言葉には少し注意しようね。2人はもう有名人だし、マルルカという名前もね」

 興奮しながら話すマルルカにアルは諭すようにして注意すると、マルルカは慌てて口を押える。


「マルルカという名前も、ちょっとまずいかな・・・・・・

 メメント・モリ・・・・・・モリーにしよう!! 今から、君はモリーだ」

「メメント・モリ? モリー?」

「死を忘れるな・・・・・・ ある意味、君にぴったりの名前だと思うけどね」


 そうだった。マルルカは死んじゃってたんだ・・・・・・ちょっとあたしは悲しくなった。


「よし! 朝ごはんにしよう、モリー」


 アルさんはあたしを元気づけるように声をかけると、大通りから外れて脇道へ逸れた。それからその道をどんどんと進んでいった。今度は、アルさんの後ろをあたしが早歩きでくっついていく。こんなふうに、誰かの後ろ姿を追って歩くのって、こころの隅っこがくすぐったい。


 脇道をさらに逸れるようにして進むと、大通りとは違った活気があふれている場所になった。ソラニスの人たちが暮らす場所だ。朝早くから開いている食堂やパン屋さんがあって、たくさんの人でにぎわっている。それにおいしそうな匂いがあたりいっぱいに漂っている。まだお店は開いていないけど、ソラニスの住民のための生活雑貨を扱う小さなお店も並ぶ地域だ。


「ここのハムサンドはとってもおいしいんだよ。モリーも気に入ると思うからね」

 アルさんは、お客さんでにぎわっている1軒のパン屋さんの前まで連れてきてくれた。


「これは、枢機卿様 おはようございます。何をお求めですか?」


 パンやのおばさんが、アルさんに枢機卿って声をかけている!?

 アルさんはハムサンドを2つ買ってくると、お店から離れたところで、マルルカに1つ渡した。


「すうききょう? アルさんは薬屋さんじゃないの? 枢機卿なの? あれ? お城に住んでる薬屋さんも確かに変だよねぇ」


「あぁ、この青いマントがね―― この世界で茶色のアルさんはエクレシアの枢機卿なのさ。そのほうがいろいろと便利だからね、それに僕の家はソラニスにもちゃんとあるよ!

 今度連れて行ってあげようね」


 また、アルさんがわからなくなってきた。枢機卿って教皇の次に偉い人だってオルトに教えてもらった。

 教会の枢機卿が、張りぼての魔王を作ったってこと???


「アルさん!! なんか変だよ!! なんで枢機卿のアルさんが魔王・・・・・・」


「マルルカ、少し黙って―― 魔王を僕が作ったなんて誰も知らないことなんだから。

 もちろん教会も知らないことなんだよ。

 マルルカが生きてることを誰も知らないのと同じくらいの秘密なんだよ」


 アルさんは、あたしの口を手で塞ぐと小さな声で言った。


 もしかして、あたしはとんでもない人と一緒にいるんじゃないんだろうか・・・・・・


「いいかい、マルルカ、 君は枢機卿の僕の親戚―- そうだ、妹にしよう!!

 だから、とってもお行儀よくしなくっちゃ駄目だ。

 オルトにちゃんと教えてもらったでしょ? 

 僕の名前は、アルレオール・ヴァニタス、 君は、モリー・ヴァニタスだ。

 アルさんじゃなくって、ここではお兄様か、アル兄様って呼ぶんだよ。

 今から、君はちゃんと姿を変えられているのか、僕のテストを受けることになるんだからね」

 アルは、私に言い聞かせるように言う。


 ご褒美じゃなかったんだ・・・・・・ちょっと騙された気分になる。

 でもって、「あたし」じゃない、「わたくし」に兄ができた・・・・・・

 でもって、茶色のマルルカちゃんは、少し大人の礼儀正しいモリー・ヴァニタスになった。


 アルレオール・ヴァニタス、一番若い枢機卿で名誉枢機卿だって、オルトに教えてもらったことを思い出した。


 おいしいよって言って勧めてくれたハムサンド、おいしいかどうか、わからないうちに食べてしまっていた。




ちょっと忙しくなってきたので、毎日の更新は難しいかもしれませんが、読んでくださっている方、またよろしくお願いします。

面白いと思ってもらえるといいなー

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