12 魔王城にて(3)
いつものように、午前中のお勉強が終わって昼食をとる。
お昼は午後から眠くならないようにと、軽めのものが準備されている。
果物や野菜を中心としたサラダ、ヨーグルトやチーズの乳製品、ビスケットやクラッカーの類だ。
それにポロ茶。
1日に何度も飲んでいるから、私はポロ茶が大好きになっていた。
「お茶も奥深いものですよ。今度はお茶を教えて差し上げましょう」
オルトは、そういうけれど、頭の中はオルトに詰め込まれたものでいっぱい。
今はポロ茶が一番!
このお茶は、絶対、アルさんが作ったポロ茶だ!
メイドさん2人とオルトに見守られる中で、1人で食べるのも慣れてきたけれど、やっぱりさみしい。
ところで、いったいオルトはいつご飯を食べてるんだろう??
朝起きてから夕食が終わる遅い時間まで、オルトはずっと一緒にいてくれる。
私がこのお城に来てからは、オルトとメイドさん2人としか顔を合わせていない。
他の人たちはいない? そんなことはないと思う。
食事を作ってくれる人、掃除や洗濯をしてくれる人、庭の手入れをしている人なんかは絶対いるはず。
それとも全部、オルトの魔法???
でも、そんな魔法を使っているのをみたことがない。オルトに思い切って聞いてみた。
「お嬢様、魔法は詠唱しなければ使えないわけではないのですよ。大声だったり、ブツブツと唱えられる方もいらっしゃいますが、愚の骨頂です。相手に使用する魔法を知らせるようなものですからね。
そういえば、お嬢様は魔法を叫ぶ癖がおありですね。早々におやめになったほうがよろしいかと……」
やぶへびだった。
でも確かに、アルさんのおうちからここに来たのは一瞬。あの時は考える余裕すらなかったけど、あれって転移か転送よね? 噂に聞いたことがあるけど、私はもちろんできないし、できるっていう人に会ったことがない。
アルさん、オルト・・・・・・この人たちって恐ろしい。
不思議なこと、知らないことだらけなのに、なんでこんなに安心していられるんだろう?
アルさんとは、あれから一度も顔を合わせていないことで、だんだんとあの恐怖は薄れていた。
オルトの厳しい教育のおかげ? かもしれない。
余計なことを考えないうちに、1日が終わってしまって、ぐっすりと眠ってしまう毎日だから。
私がこのお城で暮らしている場所は、1階にある広いお部屋とその部屋に面した中庭、それからその隣に準備されているダイニングだけ。
このお城はもっと大きいから、私がいったことのない場所のほうが断然多い。
もしかして、お城も張りぼて・・・・・とか?
王の謁見の間と鏡の間もアルさんに連れて行ってもらったけど、あれから一度もそこを訪れたことはなかった。
今まで経験したことがないくらい魔王城で快適に暮らしていること自体、普通じゃないよね・・・・・・
「お嬢様はまだ知る必要はございませんよ。お食事もちゃんと丁寧にお作りさせていただいておりますので、ご安心してお召し上がりください」
オルトは、クククと笑ってそう答えた。
そんなことを考えながら昼食も終わろうとしているときのこと。
「おや、お客様がいらしたようですね」
「お客様?」
「魔王が倒された後には、時々いらっしゃるのですよ。招かれざる客、侵入者がね」
オルトは嬉しそうに話す。
「あの・・・あたしも侵入者でしたね・・・・・・」
ここで暮らしている身となった今では、確かに勝手に入っちゃったことになるよね・・・と思ってしまう。立場が変われば見方も変わる。
そりゃぁ、勝手に家に入られたら嫌よね。
あたしのお部屋荒らされないかしら? ちょっと心配になる。
「魔王討伐の依頼を受けていらっしゃる方々は正規のお客様ですから、ご心配には及びません。
私も、ささやかではございましたが、戦い後のお疲れを癒して差し上げようとポーションを準備しておりましたのをご存じでしょう?」
アハハ・・・・・・あれ、オルトが置いてくれてたポーションなのね。
もらえませんでしたけどね。
なんか、今、複雑な心境です。
「さて、主様の留守を預かる身として、お客様のお出迎えをして差し上げなくてはなりません。
急ではございますが、今日は午後から自己学習をお願いいたします。
勉強なさらずともごゆっくりされてもよろしいのですよ」
オルトは「それでは失礼いたします」と言って、部屋を出て行った。
「第1章 はじまりの1歩」は 残るところ後数話で終わる予定です。
あまり面白く思ってもらえないみたいなので、少しじっくり書くようにします。
駄作ですみません。お読みいただいた方、ありがとうございます。
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