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2つの世界の物語 ~魔力の化け物と呼ばれた少女の物語~  作者: 星あんず
第4章 ふりだしの1歩
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11 冒険者マルルカ

「おい、何だこりゃ…… 鑑定石を半分にしろって。どういうこった?」「ギルド長が血迷ったのか?」「鑑定石半分をもらってもなぁ……何に使うんだ? ギルドを開けるってことか?」

「でもまぁ、ランク無視で誰でも受けられる依頼だ。腕試しも悪くねえな!」

「俺は、やってみるぜ! 失敗しても痛くも痒くもねぇ!」

「あぁ、半分にできるなら何をしてもいいって言うなら、1回試してみるのも悪くないね」


 センスリーギルド長の鑑定石を割るという依頼の前にも、受付カウンターにもたくさんの冒険者が集まっていた。


 私の冒険者登録の順番は当分回ってこないなって思いながら、受付にできている長蛇の列のひとつに並ぶ。

 やっと私の順番が巡ってきて、冒険者登録のためのテストを受けに来たことを伝えると、地下にある練習場に行くようにと言われた。

 教えられた地下の練習場は結構広くて、ちょっとした闘技場のような雰囲気のあるところだった。この場所で試合なんかもするのかな? と思いながら待っていると、しばらくしてセンスリーギルド長が1人やってきた。


「マルルカさん、おはようございます。

 今日はギルド職員もあの依頼のため手一杯故、私があなたの魔法の判定をしよう。

 これでも昔はそこそこ名の知れたAランク冒険者だったんだよ。年はとってしまったが、まだいけると思うぞ! さぁ、やろうじゃないか!」


 両手に剣を持ち、少し嬉しそうな感じのギルド長が声をかけてきた。


「よろしくお願いします」


 ぺこりと頭を下げて、どうしようか一瞬考える。

 詠唱をして【ウォーター・ボール】かな?


 詠唱がよくわからないから、小さな声で詠唱をしているように構えてみる。

 

「我が魔力を糧とし、我に水の加護を与えたまえ…… ……ウォーター・ボール」


 イメージ通りの小さなウォーター・ボールがギルド長へと飛んでいく。ギルド長は、それを片手剣でなんなく吹き飛ばす。


「うん。質は悪くない。君の魔法はこれくらいかな? もう少しできるだろう?」

 ギルド長はそう言うと、私めがけて切り込む姿勢を構えた。


「我が魔力を糧として、我に火の加護を与えたまえ…… ……ファイア・ウォール」


 私が炎の壁を目の前に作ると、ギルド長はそれめがけて切り込み霧散させる。

 ギルド長は私が詠唱を終えて魔法が発動されるのを待っているんだ。通常、魔法使いは魔法を発動させるまでのタイムラグが問題になる。パーティを組めば、魔法の詠唱の間、仲間が援護することで、魔法使いを守る。大きな魔法、威力の高い魔法ほど発動までの時間が長くなるのが一般的だ。仲間の力を信じて、互いの力量を認め合いながら成長していくのがパーティのいいところ。

 魔法使いと剣士との戦いでは、タイムラグが発生する魔法使いは不利だ。だから、ギルド長は私の魔法の練度を確認することで、魔法使いとして冒険者登録ができるかどうかを確認しているんだと思う。


「マルルカさん、君は水と火の魔法が得意なのかな? どちらも悪くないよ。Eランクの魔法使いとして認定しよう。これからも精進するように」


 センスリーギルド長は、これで終わりだと言うように、私の先に立って練習場を後にしようとした。そのとき……

 突然、ギルド長は振り返るなり私に切り付けてきた。とっさに、【ライト・ウォール】を発動して一歩後ろに下がる。目が痛くなるほどのまぶしい光に、ギルド長は攻撃対象である私を見失い、剣筋がにぶくなったまま振り下ろすことになった。そのまま、地面に足を付き、光で痛めた目を押さえた格好になってしまった。


「やはり……な。詠唱がおかしいと思ったんだよ。発動された魔法はごく初歩のものだが、これまでに見たことのない程素晴らしい質のものなのに、あんなインチキな詠唱で発動できるはずないとな。

 君も兄上同様に相当の使い手だね。さてと……ランクも誤魔化したいのかい?

 たぶん、鑑定石の鑑定も誤魔化そうとしたんだろうね。

 さてと、君は何をしたいんだ? 何のために冒険者になるのだ?」


 ギルド長の問いかけに何と答えていいか、わからなかった。本当のことを言っていいのか、あるいは、何か嘘をでっちあげるのか? でも嘘を言っても、ギルド長にはバレてしまうのだろう…… どうしよう。


「まぁ、冒険者になりたいという者にその理由を聞く権利はギルドにはないし、君がそれに答える必要もないがね。

 マルルカさんの個人的な理由にまで立ち入ってしまったことにお詫びする。君に少し興味を持ちすぎてしまったようだ。すまない。

 視力が戻るまでここにいるから、君はもどりなさい」


 センスリーギルド長は申し訳なさそうに言うと、その場に腰を下ろしてしまった。


「すみません。ギルド長。

 私の個人的な理由ということでご容赦ください。ギルドには、他の方々にも迷惑をかけることは絶対しませんから!」


 私はギルド長のそばにしゃがむと、ギルド長の瞳の前に手をかざして視力を戻す。


「アハハ…… ありがとう、マルルカさん。回復魔法もいけるのか。

 君は、もしかしてあらゆる魔法に精通しているのかな? 賢者のマルルカ再来か……

 いや、君の希望通り、Eランクの魔法使いで冒険証を発行するから安心しなさい」


 ギルド長の後ろをついて練習場を後にした。


 私は、自分の力で、この世界――ヤービスにマルルカという存在を残したい。

 その出発点の足掛かりを作りたい…… そんなことを言っても、ギルド長にわかってもらえるかどうか、わからなかったし、信頼していいのかもわからなかった。

 消えてしまった私……伝説の賢者としてでしか残っていない私の名前。

 それを取り戻したいだけ。


 私は死んでなんかいない!

 でも、それを言ったところで何がどうなるのか……

 ハリーやデレクはどう思うんだろうか? いや、私はどうしたい?

 まだ、答えは見つからない。



「マルルカさん、冒険者証は受付に準備しておくから受け取りなさい。それからこれはお願いですが、鑑定石の依頼は1週間後くらいに受けてくれるとありがたい。誰でも挑戦できる依頼だから、ほとんどの冒険者が挑戦しているみたいでね」


 ぼーっと考えごとをしていた私に、ギルド長はそれだけ言うと2階へと上がっていった。

 ギルドの1階は、鑑定石を半分にするギルド長からの依頼で、この時間にしては多くの冒険者でにぎわっていた。

「ちくしょー! 傷ひとつつけられねぇや」「私の最高の魔法でもダメだったわ」

「お前たちDランクじゃ無理だぜ!」「俺でこの依頼は終わりだな。俺の後に依頼を受けた奴は残念だったな」

 依頼に挑んだ者、これから挑む者が入り混じって、前代未聞の依頼の話で盛り上がっている。


「そのうち、ハリーとデレクもやってくるかもな……」

 誰かが言った言葉に思わずビクリとしてしまう。

 魔力が暴走するようなことはなくなったけれど、名前を聞くだけで心臓がバクバクするのは変わらない。

(もう、慣れなくっちゃ…… そのうち会うことだってあるんだから……)


 受付のカウンターで呼ばれて冒険者証を受け取る。小さな金属製のカードに、登録した場所ソラニスの名前とマルルカの名前が刻まれていた。自分の名前がもどってきたみたいですごくうれしい。

 この冒険者証があれば、どこにでも行ける! 一気に自分の前に世界が広がった気持ちになった。



 仕事の依頼が貼ってあるボードのところまでいって、Eランクの魔法使いが受けられるような依頼を探してみることにした。

 依頼の数はそれなりにあるけれど、Eランクの魔法使いではそれほど選べない。…… 街の清掃、ソラニス近郊での薬草採取…… 薬屋のマジックポーションの実験台――これはなしだ。

 眠り魔法の使い手求む! っていうのもある。



「お前、魔法使いなのか? 俺たちのパーティに入らないか? Dランクだぜ」


「そいつは、やめとけ! かわいい女の子には必ず声をかける軟弱もんよ。あの、ミームにさえ声をかけた奴だからな!」


 振り返ると、そこにはにやけた感じの若い男が1人立っていた。

 うん。この人は言われなくても断る! そう思う。

 でも、ミームって? 誰?



次の更新は土曜日になると思います。よろしくお願いします。

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