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2つの世界の物語 ~魔力の化け物と呼ばれた少女の物語~  作者: 星あんず
第4章 ふりだしの1歩
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9 鑑定石の依頼

「失礼いたしました。アルレオール・ヴァニタスと申します。

 センスリーギルド長にはお初にお目にかかります。

 礼を欠いた振る舞い、どうか若気の至りとご容赦を。

 私の大事な妹なのでね、守り石を身につけさせているのですよ。たぶん、その石同士が共鳴しあった結果を妹が視たのでしょう。実に興味深いことです。

 もしよろしければ、私をその鑑定石のところまで連れて行ってはもらえませんか?」


「畏まりました。ご案内いたしましょう」


 センスリーギルド長の案内で、鑑定石のある部屋へと再び戻ることになった。

 ギルド長が部屋に入り、次に兄様が部屋に入るや否や、鑑定石は虹色に激しく輝き出した。


「こ・こ・これは……!」

 

「どうやら、妹の言うとおりのようですね。この石はここを出たがっている。


 アル兄様の言葉に、ギルド長は今までにない石の輝きに茫然として見とれていた。


「そうなのですか? よくはわかりませんが、石から歓喜が伝わってくるような気がします。こんなことは初めてです!」


「石の声を聞きたいですか? マルルカの守り石の力を借りてみましょう」


 アル兄様が指をパチンと鳴らすと、私たち3人は、あの不思議な空間の中にいた。



「あぁ、アタシのお慕いしていた方にやっと会えた! ありがとう、そこのあなた」


「これが鑑定石の声? 本当なのか?」


 ギルド長は目の前の虹色に輝く鑑定石から目が離せないでいる。


「あなたは、今のギルド長ね? 話はそこの娘から聞いたでしょ? 

 アタシが言ったってことは本当だから、今すぐ半分にして、アタシをここから自由にしてちょうだい……ネ?」


「鑑定石……様・・・・・・ その、突然そのようなことをおっしゃられても、準備がございまして……」


「石よ、お前を自由にしてやろう。その前に少し私たちを楽しませてもらいたいものだ」


 しどろもどろのギルド長に対して、アル兄様はちょっと楽しそうにしている。


「わかったわ! 今までの時間を考えれば、どうってことない時間の違いだわ。

 それで、愛しい方が楽しんでいただけるのなら」


 鑑定石はそう言うと、虹色の輝きは収まり、はじめに見たときと同じ、無色透明な大きな六角形の石となった。


「ヴァニタス枢機卿様、私は魔王を倒す機会こそは得ることができませんでしたが、長い間冒険者としてそれなりに名を上げたつもりでございました。冒険者を引退してからはソラニスのギルド長として迎えられることとなりましたが、このような体験は初めてでございます。

 それに加え、枢機卿様が披露された魔法は、私の持っている常識をはるかに凌駕しているものでございました。冒険者ギルドを統括しているソラニスのギルド長という立場に胡坐をかいていた自分が恥ずかしい限りでございます。

 枢機卿様のご尊名を保証にしようとした自分が愚かでした。

 この件は、私センスリーの名で、必ずや責任をもって対応させていただきます」


「そうなのかい? 私としてはどちらでもいいのだけれどね。

 特別の待遇もいらないから、マルルカの秘密だけは守ってあげてね」


 アル兄様はそれだけ言うと、いなくなってしまった。


「マルルカさん、絶対秘密にしますから、安心してください。

 それから鑑定石のことは、私の名前で依頼を出すことにいたしましょう。それが鑑定石の意向でしたからね」


 センスリーギルド長が慌てるように部屋を出て2階へ上がってしまうと、私はギルドの1階の冒険者のたまり場スペースに一人取り残された。

 


(とりあえずは、今日やらなくちゃならないことは終わったのよね?)


 帰ろうと思い、手にしていた外套を見て思い出した。

 私、外套を脱いだままだった……

 辺りを見渡すと、お昼過ぎ位の時刻のせいか、一仕事を終えた冒険者もいて少し人が増えている。その人たちがみんな物珍しそうなものを見るような、おいしい仕事をもってきたお嬢さんを見るような目をして、私を遠巻きに見ていた。

 幸いギルド内だから、直接声をかけてくる者はいなかったが、いい気持ちになれなるはずもない。

 慌ててケープのフードを深くかぶりギルドを後にした。


 明日も来なくっちゃ……ううん、冒険者になるんだから、しばらくはずっとここに来るのよ。この視線にも慣れなくっちゃ!! 気にしてたら前には進めない。気にしない!

 


フードを押さえながら足元だけを見て、来た道を戻ろうと少し歩いた時、一人の冒険者であろう男が声をかけてきた。


「お嬢さん、護衛の方はいないんですか?

 一人は危ないですよ。お屋敷まで護衛させていただきますぜ。

 安くしとくから…‥‥」


「いいんです! お構いなく」


「いやいや、危ないって……」


 私が見向きもせずに速足で歩いていこうとするのを、ニヤニヤしながらどこまでもついてくる。


(もう! そういうあなたが一番危ない気がするのだけど!)

 思わずそう声が出そうになるのをぐっと抑えてひたすら足元だけを見てまっすぐ歩く。がまんできず魔法で追っ払ってしまおうかと思ったそのとき・・・


「そちらの方、お嬢様から離れていただきましょうか」


「エド……」


「お嬢様、おそばを離れて申し訳ございませんでした」


 エドはそう言うと、冒険者風の男を鋭く睨んだ。


「な・なんだよ! ちゃんと護衛の役目を果たせっつうの!

 この役立たずがぁ!」


 男は捨て台詞を吐くとそのまま元の道を戻っていった。

 

「お嬢様、お怪我はありませんか? 嫌な思いをされたのでは?」


 エドのやさしい声が心にしみてくる。


「ありがとう、エド。心配をかけました」


「お屋敷にお戻りになりますか?」というエドに、寄りたい店があることを伝えると、「わかりました。でもそこへはお供させてくださいね」と言うとニッコリと笑った。


 私が行きたかったお店で、なじんでいた恰好を一揃え揃えた。

 コットン糸と麻糸で織られた丈夫なゴワゴワした黒い布地のフード付きケープとごつい皮のブーツ。杖もそろえようか?と思ったけれど、今の私には不要だし、決して安い物ではないからやめた。兄様がくれたナイフもある。

 そして三角帽子もやめた。あれは、子どものように小さかったマルルカが少しでも大きく見せたかったものだったから。


 自分の姿を見ると、懐かしいような、それでいて見慣れた自分とは違う感じだった。

 ぽやぽや髪の毛しかない全身あばただらけの小さな子じゃない。

 そう…… 魔力の化け物と言われていた頃のマルルカとはまるで違った姿がそこにあった。


 ただいま・・・マルルカ。新しい私!!




次は土曜日の更新予定です。

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