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2つの世界の物語 ~魔力の化け物と呼ばれた少女の物語~  作者: 星あんず
第4章 ふりだしの1歩
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8 鑑定石

 冷静になろう……

 そうだ・・・・・・


「あの、ギルドの石? さん、あなたがここからいなくなったら、みんな困ってしまうのではないですか?」


「そんなことないわよぉー アタシの一部をここに置いていったらいいのだから。

 いえ、半分でいいわ! 私の本質は変わらないもの。今までと同じことをするわ!」


「はぁ…… でも勝手にあなたを半分にはできないわ……」


「そんなの簡単よぉ! ここのギルド長にアタシを半分に割る依頼を出してもらったらいいのよ。それで、あなたが半分に切ればいい。報酬は半分の石――つまりアタシね!

 名案でしょ?」


「この強欲石め! どこまで我の守り主様を困らせる!」


「あら…… アタシ、鑑定もできるし魔力も吸い取るのよ?

 冒険者にはありがたいと思うけど?

 それに、あの方から、お姿をいただければいろんなところを自由に……いえ……

 ともかく、ギルド長に依頼を出すように言って頂戴! あなたにしか切らせないから ネ?」

 


 気づくと、私は石から1歩下がったところにいて、石はぼんやりと全体がわずかだけ白く光っているだけだった。


「光の量からすると、魔法使いの素質はあるようですね。光に色がないので、これから得意な魔法ができる状態、偏りのない状態というところでしょうか。魔法使い初心者ですね。

 今は魔力が空っぽだと思いますから、明日、使える魔法を披露していただき、合格することで魔法使いとして冒険者に登録することになります」


 モナさんの様子は特別変わったところはなくて、あの石との会話は忘れたか知らなかったようだった。モナさんがわからないほど一瞬の間に起きたことなのか、それとも、何か幻惑の魔法がかけられていたのか?


「あの、モナさん。お願いがあるのですけれど……

 ギルド長に会いたいのですが、会えますか?」


 モナさんの表情がまた動いた。


「ギルド長に……ですか? 冒険者への登録者がお会いする用事はないと思いますが?」


「そうですよね。ないですよね……」


 あれはやっぱり夢だったのかもしれない……と思っていた矢先、


「ギルド長は、今いらっしゃいますので、お会いできる手筈を整えます。外でお待ちください」

 今さっき、ギルド長との面会を断ったモナさんが、何もなかったように発した言葉だった。


 部屋を出る瞬間、石を見ると、いたずらっ子のように虹色の光を輝かせていた。




 ギルドのホールにある隅のテーブルのところで、モナさんを待つ。

 冒険者の人たちも入れ替わっているようで、冒険者の数も少なくなっている。依頼を受けた人たちはもう出かけている時間だし、今いる人たちは昨夜依頼を達成して帰って来たのだろう。ゆっくりとした後、ギルドを訪れた人たちかもしれない。この時間からはギルドに困りごとや依頼話を持ってくる人たちがやってくる。後から入って来た人たちには依頼を持ち込んできた者だと思われているようだ。


「ギルド長がお会いになるそうです。こちらへどうぞ」

 モナさんがやってきて、今度は左手の階段を上っていく。2階がギルド長の部屋やお客様をお通しするところ、3階は冒険者のための宿泊所となっているようだ。2階に上がると、大きくて重そうな扉があり、それをあけると、青い絨毯が敷かれた廊下となっていた。突き当りまで進むとモナさんが目の前のドアをノックする。

 私は外套のままでは失礼かと思い、外套を脱いで待つことにした。フードを外した瞬間、私の銀色の髪に驚いた顔をしたモナさんだったけれど、言葉を発することなく静かにうつむいていた。

 しばらくして中から返事が聞こえると、モナさんはドアを開けて一礼をして帰っていった。


「初めてお目にかかります。マルルカと申します。

 わたくしのためにお時間をいただきましたこと感謝申し上げます」


「これは、これは、美しいお嬢様だ。

 私はこのソラニスの冒険者ギルドの長、センスリーと申す者。お見知りおきを。

 さっそくで悪いが、用件を聞かせてくれまいか?」


 冒険者ギルドの偉い人だっていうから、もっとごつい人をイメージしていたけれど、温和な優しそうな感じの初老の紳士という感じの人だった。

 ギルド石の話を信じてもらえるかどうかはわからないけれど、センスリーギルド長に話をすることにした。


「マルルカさん、つまり、私に、『ギルドにある鑑定石を半分にせよ。報酬は切った鑑定石の半分』と依頼を出せと、鑑定石がそう言った――そういうことだね?」

「そのとおりです。半分になっても鑑定の効果は変わらないとおっしゃっていました」


「それも鑑定石が言ったのだね? ところで、その保証はどこにあるのかね?」

「保証……ですか?」


「君とずっと一緒にいたモナからは、そのようなことは一言も連絡が入っていない。それが真実だという保証はどこにもないのだよ。というより、登録者をここにまで連れてきたモナの行動が解せなくて、会ってみようと思ったのだけれど。もしかしたら幻惑されているのかと思えたのでね。

 そのような怪しい人物の言う通りにすると思うかい? 今日、突然に冒険者登録にやってきた君を信じるに足るものはなにもない。そして鑑定石は、悠久の年月のギルドの要、宝だ。その要を半分にせよとは、あまりにも酷な話だとは思わないかい?」


 ギルド長の言う通りだと思う。ギルドにとって、私の言うことを信じて損をすることはあっても決して得になることはないのだから。ましてや、ギルドになくてはならないもの。

 きっとこの人でなければ、話を切り出した途端に怒られてさっさと追い返されていたかもしれない。こんな話をよく聞いてくれたものだと思う。


「そうですよね。おっしゃるとおりです。お手間を取らせて申し訳ございませんでした」


 私は深くお詫びをしておいとまをしようと立ち上がった。


「ところで、立ち入ったことを聞くようで悪いが……

 マルルカさん、あなたはどちらのご息女かな? とてもただの冒険者希望者には見えないのだが。家名を隠したい、秘密を守りたいのであればここだけの秘密としよう。

 マルルカという名も伝説の賢者と言われる名前と知ってのことかな?

 あなたを守るためにも、私にだけは教えていただきたい」


「それは…… 本当に秘密にしていただきたいのです。お約束願えますか?」


 センスリーギルド長は大きくうなずき、私に再び腰掛けるようにと促した。


「私は、モリー・ヴァニタス。アルレオール・ヴァニタスの妹です」


「なんと!! ヴァニタス枢機卿様の妹君!? 大変失礼なことをいたしました。モリー様」


「いえ、ただのマルルカです。兄には冒険者となる許しは得ていますが、どうか秘密にしてくださいませ」


 センスリーギルド長はしばらく考え込むようにして、じっと額に手を当てていたかと思うと、部屋の中をうろうろと歩き始めた。それから今度はしばらく窓の外の景色を眺めていた。


「ヴァニタス枢機卿は相当の魔法の使い手と聞き及んでおります。その妹君であるあなたもそうなのかもしれません。さっきの石の話も全くの出まかせとも思えない。

 これは、わたしからのお願いになりますが、先ほどのお話は、あなたの兄上様、ヴァニタス枢機卿からの依頼を受けての依頼ということにしていただけませんかな?

 これが今回の保証・担保にさせていただきたいのです。つまり、ヴァニタス枢機卿がすべての責任を負う――そういうことです。ソラニスのギルドの存続にもかかわること故。

 それが無理であれば、ここでのお話はなかったことにいたしましょう」

 

 あぁ、またアル兄様を巻き込んでしまった。

 こんなこと兄様にお願いしていいのかどうか……返事を迷ってしまう。


「センスリーギルド長、私は構いませんよ。

 かわいい妹のお願いごとが、私の名前一つで叶えられるのなら安い物です。

 それになんだか面白そうだ!」


「アル兄様! どうして……」


 私が驚いている以上に、ギルド長が口をあんぐりして言葉も出ない状態になっている。




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