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2つの世界の物語 ~魔力の化け物と呼ばれた少女の物語~  作者: 星あんず
第3章 とまどいの一歩(後編)
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閑話1

 〈 ブリドニク シェルドンの屋敷 〉



「マルルカちゃん、アメリアを連れて来たわ!」


 メイちゃんがアメリアさんの手を引きながら部屋に戻って来た。


「どうしたの? メイちゃん…… 他にも誰かいるの?」


 アメリアさんは突然メイちゃんに手を取られて、メイちゃんの部屋に連れてこられたから、ちょっとびっくりしている。

 


「アメリアさん! これから私とメイちゃんとでびっくりパーティをします!

 主役はアメリアさんだから、おめかししてもらおうと思って」


「おめかし? そんなの聞いてないわ……」


 私の言葉に戸惑っているけどちょっとワクワクしている様子のアメリアさん。

 アメリアさんの戸惑いを気にしないように、シェルドンさんのところのメイドさんが、アメリアさんの身支度を手際よくどんどん進めていく。


「オルト兄ぃがアメリアさんに似合うドレスを用意してくれたのよ。そして今は、厨房を借りてごちそうを作ってるから、楽しみにしていてね?」


「オルトさんのご飯は世界一おいしいの!

 それからお客様も来るのよ。 もちろんレイス兄さんも!」


「レイスも来るの? 王都から?」


 アメリアさんは本当にびっくりしている。部屋に連れてこられた時は戸惑っていたけれど、レイスが来ると聞いたとたん、とってもうれしそうに微笑んだ。

 新しいドレスに着替える頃には、「このドレスは何色? とっても滑らかな手触りだわ。羽が生えたみたいにとっても軽いわ。本当にびっくりパーティをするのね」って、はしゃいでいた。


「お嬢様、お客様が到着されました」


 ドアの向こうから執事の人が声をかけてきた。メイちゃんは「お嬢様」って呼ばれるのにも慣れてきたみたい。最初のころは、なんだかくすぐったいって言ってたのに。


「私がお迎えにいくから、メイちゃんはアメリアさんをよろしくね!」


 私はそういって、部屋の外で待っている執事の人と一緒に、到着したお客様をお迎えに玄関まで行くことにした。





「ようこそおいでくださいました。ご無沙汰しております」


「マルルカ、元気だった?」

「よぉ、マルルカ!」

「ご無沙汰していましたね。マルルカさん」

「硬い挨拶は抜きだよ。私は王都の商人――モティだ! 

 それからラケムは……ラッキィ……だな! いい名前だ!」


 私の挨拶にレイス、ジャイロ、ラケムさん、そして軽く返事をするのは、クローネ王、その人だった。ちょっと裕福な王都の商人風の恰好をしている。それがすごく気に入っているようで、くるりと1回転してみせる。

 それにしてもラケムさん――ラッキィさんは、思わず頭を抱えてる。


「ラッキィ! お前の親はいい名前をくれるもんだな」

 ジャイロは大笑いしながら、ラッキィさんをバンバン叩いてるし……


「初めて休暇をもらったのだよ…… クリフトとザクテルから…… 良き家臣を持ったものだ!

 リーシャは大神官殿と共にタミネアへ行ったよ。まぁ、そのうちあいつにも休みをやろう!」


 王様――モティと一緒にやってきたジャイロ、ラケムさんは苦笑し、レイスは相変わらずボサボサの前髪でニコニコしていた。



 そんなことを玄関先でおしゃべりしているところに、シェルドンさんが帰って来た。

 びっくりパーティのことをシェルドンさんにも内緒にしていたから、突然の来客に少し驚いている。


「この方々は?」


「王都でアメリアさんがお世話になった方々です。こちらにいらしたついでに、アメリアさんにお会いしたいということでいらっしゃったようですよ」


「あぁ、そうでしたか。どうぞゆっくりしていってください。アメリアも喜ぶことでしょう。

 あれ? あなたは…… ジャイロ殿!? 

 その節は大変世話になった」


「あぁ、久しぶりだなぁ。あんたとは縁がありそうだ」


 シェルドンさんがジャイロに気づいて、少し嬉しそうに声をかけた。


「申し遅れた――申し遅れました。私は王都で小さな商いをしているモティと言います。隣にいるのは息子のラッキィです。

 突然の訪問申し訳ありません。

 アメリアさんとはレイス君とのつながりから王都で仲良くさせてもらっていました。

 ブリドニクへ来る用事があったもので、そのついでに少しこちらに寄らせていただくことにしました。

 ジャイロ君は息子の古くからの友人でね。城の下働きをしているのです」


 王様――モティさんはシェルドンさんに丁寧にあいさつをすると、ラッキィさんもにこやかに頭を下げた。


「我が家にこれほどお客様がいらっしゃることも珍しい。ゆっくりしていってください。レイスも自分の家だと思ってくつろぐがいい。

 着替えますので、少しだけ失礼します」


 シェルドンさんはそう言うと、執事と一緒に2階の自室へと階段を上がっていった。




*****************



 着替えの終わったシェルドンは、ほとんど使われることのなかった屋敷の一番広い客間の扉の前まで連れてこられていた。それも一番上等な服に着替えさせられて……


 解せぬ……

 客の人数が4人だったとはいえ、ここに通す必要があるのか?

 客――王都の商人だとはいえ、俺がこんな格好で会わなければならない奴らなのか?

 執事に聞いても何も言わず、「こちらにお召し替えを」としか言わなかった。


 そんなことを考えていると、静かに扉が開けられた。


 そこには……


 真正面に、シェルドンを迎え入れるかのように神父が立っていた。その両側には、先ほどの客、モティ、ラッキィ、ジャイロ、レイス、メイ、マルルカ、アル、オルトが、部屋の入口から神父のところまで、両側に立って道を作っている。


「なんだ? これは……」


「神父様のところまでお進みください。ご主人様」


 執事はシェルドンにそう声をかけると、静かに扉を閉めた。



 これは…… 俺は断罪されるのか? 何がばれた? 

 スザンナのことか? 多分そうだろう……


 自分のしてきたことを振り返るが、私利私欲でしてきたことしか思い浮かばない。

 が、ここにいる者たちの顔には温かい笑顔が見える。


 いったいこれは……?

 怪訝に思いながらも神父のところまで足を進めると、神父は小さな声でシェルドンに言った。


「シェルドン殿、 花嫁-―アメリア殿をお迎えください」


 シェルドンが何か言おうとしたそのとき、扉が開き……

 そこには、全身を真っ白なレースのベールで覆った優しく微笑んでいるアメリアが立っていた。

 これは結婚の祝福?



「!! 俺は…… 俺は……」


 アメリアの姿を目に写したシェルドンの心の中には、これまで自分がしてきたことが一気に思い返されて、いろんな感情が渦を巻き、何も言葉にならなかった。


 俺は、こんなにも美しい女性(ひと)を娶る資格はない!

 己の欲のためにどれだけの人を苦しめて、殺してきたのだろう……

 スザンナを苦しめ、デイビッドを殺した俺が、アメリアを娶り、メイをそばに置くことを誰が許すと言うのだ!!

 許されるはずがない。



「ここにいる皆に聞いてほしいことがある。私がこれまでしてきたことを……」


 シェルドンが意を決してデイビッドを殺したことを告白しようとした、そのとき……



「シェルドン殿、この場でご自身の街への貢献を自慢するおつもりですか?」


「シェルドンさん、自慢話は、僕がつくったおいしいごちそうのいろどりとして取っておいてくださいね」


 アルとオルトが軽快な口調で話しながらシェルドンのそばへやってきた。そして、シェルドンの耳元でアルはそっとささやいた。


「お前のやってきたこと――デイビッドを殺したことは墓場まで持っていくことだな。その事実をメイが知れば、彼女をもっと不幸にさせるだけだ。

 お前に罪の告白は許されぬ。告白で罪の意識から解放されることはない。

 メイとアメリアの笑顔に囲まれながら、笑顔の牢獄で一生罪の意識で苦しむがいい。それがお前の罰だ。

 その笑顔を一生守ることがお前への罰だ」


 アルの笑顔で言うその言葉にシェルドンはギョッとした。

 この男は俺がデイビッドに手をかけたことを、なぜ知っている!? アルはいったい何者だ!


 シェルドンはアルの笑みに、驚くとともに、これまで一度も感じたことのない冷たい恐怖を感じた。



 アメリアがメイに手を添えられてシェルドンの前までやってきた。


「今、ここに集う私たちで、マックス・シェルドンとアメリアの結婚式を執り行いましょう」


 神父の呼びかけで、集まった者が温かい拍手を盛大に送った。

 シェルドンだけが涙を浮かべて、美しいアメリアの手を握った。



**************************



「お前の兄ちゃんの飯は最高だな!

 こんなうまいもんは、この国の王様でも食ったことねぇと思うぜ!

 なぁ、ラッキィ」


「本当にそうですね。お父さんもそう思うでしょ?」


「うむ…… 正に神の食卓……」


 クローネ王はただの一介の商人モティとして、つかの間の自由を存分に味わっていた。


【第4章】を始めるまで、もう少しお時間をください。

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