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2つの世界の物語 ~魔力の化け物と呼ばれた少女の物語~  作者: 星あんず
第3章 とまどいの一歩(後編)
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59 みんなそれぞれ

 翌日、教会に集まっていた司祭神父たちの顔はどこか晴れ晴れとしていた。クランは来なかったけれど、みんな思ったことを我さきにと話していた。

 セフィス様の教えを正しく伝えたいと言う者もいれば、教会の信頼を取り戻すために、もっと街の人と言葉を交わしたいという者もいた。


「私はブリドニクで神父をしております。

 私は子どもたちの笑顔がいっぱいの街にしたいと思いました。

 これまでも子どもたちを集めて読み書きや計算を教えていましたが、街や村によっては、さまざまな事情で、子どもたちが勉強をする機会がないところもあります。

 セフィス教教会が後押しをして、王国の子どもがみんな学校に通えるようにしてはどうかと思いました。

 それから、もうひとつは、きちんとした孤児院を作りたい。先日の聖女に担ぎ出された子も孤児だったと聞きます。王国の子どもたちみんなが安心して笑顔になれるようにしたいのです」


 ロブは、自分から声をあげたのは初めてのことだったけれど、昨日オルトと話をして思いついたことを話した。ロブの発言に、別の神父が言葉を続けた。


「私は、病人や怪我人をきちんと世話ができる場所を作りたい。神の力、奇跡の力ではなく、ちゃんと治療をしたり世話をすれば、治る人だって大勢いると思うのです。

 ブリドニクの神父様が学び舎を作りたいとおっしゃいましたけれど、病気を治す人たちを育てていくところも必要だと思いました。 病気を治せる人が今より増えたら、どの街も助かるはず!」


 昨日の悲痛な面持ちが嘘のように、みんな生き生きと話し合いを始めていた。



*************************



 リーシャは、バンクス伯爵と弟の審問官コラモ・バンクスを捕らえてからというもの、取り調べとその精査と分析に追われていた。立て続けに、教会騎士、タミネア兵、セフィス教司祭神父が捕らえられ、現王モダニウスがその座についてからずっと空っぽだった地下牢は、その人数は日増しに増えていたのだった。


 教会のことを調べれば調べるほど、ひどい話ばかり出てきた。一度でも教会に疑いの目を向けられたらその時点で終わり! ほくろがあるだとか、夫が死んだ、夜遅くまで起きているとか……とんでもない理由で処刑されていた。


「こりゃぁ、みんな誰もが悪魔と契約してることになるわぁ……

 セフィス教自体が悪魔じゃないのよぉ……」

 リーシャはうんざりしていた。教会裁判の調書は、教会と教会派貴族と言われる者たちのやりたい放題の記録だった。

 このまま放置していたら、近いうちにきっと、王が悪魔と契約しているとして、断罪される日が来たのだろうと思う。


 教会騎士は教皇や司祭に絶対の信頼を持って命令に従っていただけ――彼らには罪はないと思う。ただ、教会騎士から王国兵に編入されるとして、果たしてどこまで王国に忠誠を誓えるのだろうかと、疑問に思う。

 捕らえられたタミネア兵にしてもそうだ。セフィス降臨の地としての誇りを持ち、聖女がいるべきはタミネアの他ないと信じているから……

 彼らにとっては、聖女奪還は正義の行いだったのだ。それは絶対に揺るがない気持ちなのだと思う。

 

「自分たちは正しい、クローネこそが略奪者」 彼らにとってはそれが真実なのだと思う。


 互いの正義のぶつけ合いは何も生まない……



 リーシャの執務室は報告書や取り調べ調書の山で埋もれていたが、やっと一段落して、その結果をクローネ王に報告することができた。

 しばらく考え込んでいた王は、まっすぐにリーシャを見ると、ねぎらいの言葉もなく言った。


「リーシャ、お前がタミネア兵と共に、タミネアに行け!

 そして、うまく収めろ!」


(あぁ…… これでまた私の婚期が遅れる…… いや、そもそも私は結婚したいと思っていたか?)


 クローネの頭脳と言われていたリーシャだったが、自分のことが一番わからなかった。




***************************


 


 レイスは未だ絵はうまく描けなかったが、表向きは宮廷絵師として、クローネ王に仕えることになった。王様がレイスをジャイロやリーシャ、そしてラケムと同じように信頼できる者のひとりとして、王宮に置くことにしたからだった。レイスの力を隠すにも使うにも王のそばが一番いい場所だった。


 レイスは王様から許しを得て、アメリアと一緒にブリドニクへと向かっていた。アメリアさんと一緒に行くのはなんだかちょっと恥ずかしい気もしていたけれど、メイに会わせてあげようと思った。

 王都を出発して5日目、メイのいるシェルドンの屋敷に到着した。



「スザンナ・・・・・・!!」


 アメリアを一目みたシェルドンは、そこにスザンナの面影を一瞬見た。そして、自分のためにスザンナがアメリアを連れてきてくれたのではないか? と思えるほど、シェルドンはこの出会いに運命を感じていた。


 シェルドンは、王都のうそっぱちの奇跡の力を見ていたら、なんだか踊らされていた気分になってきて、早々にブリドニクに帰ってきていた。

 表情こそあまりなかったけれど、メイが「おかえり……」と言ってくれた一言が、思いがけず、とてもうれしかった。

 俺はさんざん人を利用することばかり考えていたのに、たった一言でこんなにも幸せな気持ちになるとは――いつからこんなに安い人間になったんだ! と、情けなくも思う。けれどもこれでいいと思う自分も確かにいた。



「おかあさん!?」


 メイもまた、アメリアにスザンナを見た。レイスにアメリアがおかあさんの妹だと紹介してもらっても、メイにはスザンナ――おかあさんが帰ってきてくれたような気がしていた。アメリアとレイスがいる間は、ずっとそばを離れず、いろんな話をして、目の不自由なアメリアを懸命に世話していた。


(このままあたしのそばにずっといてほしい!) メイはそう思った。


 アメリアは、メイとレイスが自分のそばにいることが信じられなかった。夢が叶った!

 遠回りしたけれど、ねえさんの子どもたちと今一緒にいる! 

 二人の温かいぬくもりをいっぱい感じていた。

 




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