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2つの世界の物語 ~魔力の化け物と呼ばれた少女の物語~  作者: 星あんず
第1章 はじまりの1歩
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9 魔王城再び(2)

  魔・・・王・・・・・・

 


 

 漆黒の長い髪に、冷たく輝く赤い瞳の男。

 鏡の中の男の顔は怖いくらいに美しく目が離せなくなってしまう。

でもそこに浮かぶ表情は優しさのかけらもないほどに冷たくて、体が凍りついたように動けなくなってしまった。

 悲鳴をあげたくても声が出ない。身動きすら取れない…… 

 まばたきした瞬間に、命を狩られてしまいそうだ…… 本当の恐怖だった。


 あのときに戦った魔王とはぜんぜん違う姿だけど、魔王だってわかる。


 あたしたちが戦った魔王は魔力の張りぼての作り物


 マルルカはやっと意味がわかった。

 アルさんの姿を見てしまうと、あたしたちが戦った魔王が作りものだって言うことがよくわかる。

 もし、仮に目の前にいるアルと言う男と戦えって言われたら、戦いにすらならないだろう。




「言ったであろう? 真実の姿を映す鏡だと・・・・・・」


 これが本当のアルさん?

 鏡越しで見る男の口から、頭の中に直接声が響く。

 その声を聞きたくないと、どんなに願っても、それを叶える余地すら与えない冷たい響きだった。


 それなのに、その声に魅了されてしまいそうで、自分を忘れそうになるくらいに、もっとずっとその声を聞いていたい…… 心の奥が熱くなって疼く。

 

 もう動くことも、声を出すことすらできない。

 もっとその声を聞いていたい。もっと、もっと、もっと!!


(あたし・・・・・・変だ! おかしい・・・・・・声を聞いちゃダメェ!)

 その声に意識をそっくりと呑まれてしまいそうになる。

 わずかに残っている自分の意識が悲鳴をあげている。


「マルルカ お前の体は魔力で成長する。それは人ではなく魔人・魔物の類の魔力だ。

 お前が何者かは私も知らぬ。

 

 お前を怖がらせるつもりはない。姿を変えることができることを教えるだけだ。

 魔力で構成された体は、その姿を変えることができる。私のように……

 魔物が形態を変えるのを目にしたこともあろう?」


 アルが静かに言う。

 そう言って、あたしを振り向かせる。 

 目の前には、人を畏怖させる魔力も消え、心を凍らせてしまうほど冷たい美しさのアルさんだった人がいた。


 魅了されたかのように目の前にいるアルから目が離せなくなってしまう。

 もっと自分を見ていてほしい。あたしのためだけにいてほしい。

 体が熱くなっていく…… どうにかなりそうだ……

 

 あたし、変だ!!   誰か、助けて……!! このままずっと、永遠に……

 エイエンニ……ソバニイタイ……

 このままいたら、気が狂ってしまう!!


 マルルカは、自分の中に突然沸き起こった感情に翻弄されていた。

 アルさんの言葉と声が、自分の体に刻まれていく。


「マルルカ、お前には姿を変えることを覚えてもらう。

 銀色の髪と瞳は、人の世界では目立ちすぎる。私の姿のようにな

 目立っていいことはあまりない」

 


 アルは、マルルカを右側の鏡の前に立たせた。

 

 そこにはいつもの茶色の髪と茶色の瞳の優しい笑顔のアルさんが映っていた。

 あたしは、やっと体の力が抜けて、狂おしいまでの切望から解放された。


 あのままだったら、自分が自分でなくなりそうだった。

 恐怖と驚きで大きく乱れていたマルルカの心は、、静かに落ち着いてきた。


 何か魔法をかけられてた?  心の隅でそう思う。

 アルの声が一句一句体に染みている。

 あんな魔法は知らない!! 自分が自分でいられなくなりそうだった。

 恐怖と狂気の狭間を心の奥深くに刻まれた。


 


「マルルカの髪は、今は肩に届くくらいだけど、長さも魔法で自在に変えることができる」


 いつものアルさんは、何事も起こらなかったように、いつものように優しく話しかけてきた。


 アルさんがマルルカの肩に手を置くと、マルルカの体の中の魔力がざわめき、髪は一瞬で床に届く長さになていった。サラサラと流れるような銀色の髪は、水の流れのようにキラキラと輝き、真っ白なオーガンジーを重ねた軽やかなドレスを身にまとったマルルカがそこにいた。


「長い髪のほうが似合うね。

 髪は切ってはダメだよ。全部君の魔力だからね・・・・・・」

  

(きれい・・・・・・)


 アルさんに夢を見せられているの?

 さっきの激しい感情が嘘のように、きれいに消えている。

 自分のことなのに、誰かに感情を操られているような気分だった。


「これ……あたし? 何かを見せられてる? こんなドレスなんか持ってない 」


「あぁ、お城にあったドレスを君の者にしといたんだよ。姿を変えられるようになれば、自分のドレスであれば衣装替えも練習すれば一瞬でできるようになる。便利でしょ?」


 得意げに言ってるアルさん。


「そして、髪の色、瞳の色も変えることができる。このようにね」


 また、体の中の魔力がざわめいている。

 アルさんと同じうす茶色の髪に茶色の瞳のかわいい少女が水色のエプロンドレスを身に着けて立っていた。

「これだったら外に買い物にいけるでしょ?」と、ニッコリと笑いかけてくる。


「魔力が体を作っているっていうことは、姿かたちも自由自在に変えられるっていうことだよ」

 

 今度は、マルルカが恥ずかしくなってしまうくらい大きな胸がこぼれそうなドレスを着た、アルと同じ漆黒の髪と赤い瞳をした妖艶な女性が立っていた。

 

「アルさんはこういう女の人が好きなの?」

「もちろん大好きだよ。いつか男を手玉に取るような女性にもなるのかもね」 

 アルさんはケラケラと笑った。




「1つだけ忠告しておくよ。どんなに魔法で姿形を変えても、立ち居ふるまいやしぐさは魔法では変えることはできないし、知識だって増えるわけじゃない。

 ぜんぶ身につけていくしかないんだよ。

 いくら君の外見が魅力的な女性になっても、中身は変わっていないでしょ? 

 だから外見を自由自在に変えることができても、その姿に合った振る舞いができるようにならないとダメってことだよ。


 そして一番残念なことは、君が本来の姿にふさわしい立ち居振る舞い、教養が身についていないってことなんだけどね」


 アルさんは、本当に残念そうに笑った。



「まずは僕と同じ茶色の髪と瞳の少女の姿でいられることだ。できるようになるまで少し時間はかかるけど、がんばろうね。

 そこまでできると誰も死んだマルルカって思わないでしょ? 普通に暮らすことができる。

 その後は、マルルカの好きにしたらいいよ」


 アルさんの言ったことはすごくわかったけど、なんか、アルさんにずっと振り回されて、遊ばれてる気がしてしょうがない。


「アルさんは、こうやって他の人の姿を簡単に変えることができるの?」

「そんな無駄なことはしないよ。君の中に僕の魔力が混じってるから簡単にできるのさ!」


(あたしの中にアルさんの魔力が混じってる?? そんなことってできるの? 

 あー 魔力の開放のときの温かい感じがそうだったのか・・・・・・)




「あなたは、誰なの?」

 

 マルルカはやっとのことで、その言葉を口にすると、堰を切ったように言葉があふれてくる。

「なんで魔王なんか作ったの? なんであたしを助けたの? なんであたしはここにいるの? 

 いったいあたしは何なの? 人じゃないの? 魔物? 魔人? アルさんも魔物????」


 わからないことだらけだ。





「あせるな。いくらでも教えてやるって言っただろ?

 夜も遅いから、もう寝るぞ」


 アルさんは黒いアルに戻っていた。


「魔力は魔法を使うのではない。魔力は干渉する力だ。それすらも知らない者がなぜ賢者と呼ばれる?

 人の与える称号はその程度と知ることだな。

 お前には、学ばねばならないこと、経験しなければならぬことが山ほどある。まだ子どもなのだから、その時間はいくらでもある」



 アルがそういうと、マルルカはそれっきり深い眠りに落ちていた。







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