12/12
12. 外出
ノートの最後に記す言葉は決まっている。
『絶対に忘れてはいけない。紘編と過ごした日々を。俺の大切な彼女なのだから』
俺はノートを書き終えて、シャープペンを仕舞う。
紘編と過ごした六日間は、忘れられない。
今も俺の心の中で、彼女として生きている。
「たまには、線香をあげても良いかな」
俺はジャケットを羽織り、外出の準備をする。
そして、机の上に置いてある樹枝六花のヘアピンをポケットに入れて、外に出た。
日は既に落ちていて、空は真っ暗。
けれど、そこまで道は暗くない。
ナトリウム灯が雪に反射し、一面が橙色になっている。
そして、雪がしんしんと降っていた。