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第十話:知識

誤字脱字その他ご指摘あれば感想などによろしくお願いします。

 夢を見ている。昨日見た夢の続きを。

 昨日みたいに俺の影は居なくて、1人で海の底に漂っている。ゴポゴポと息を吐くと、(かす)かな気泡は天に向かって果てしない道のりを登り始めた。

 俺は登って行く気泡をずっと眺めている。それ以外にやることがなかったから。

 息は苦しくない、それはきっと夢だからだろう。


 ずっとずっと、ひたすらに漂い続ける。少しだけ体が浮く感覚はあるけれど、空を見るのはいつになるのだろう――?


 神楽と出会ってから2日連続で見る夢。海に潜む妖怪と出会ってからこうなのだから、神楽が何か関係してると思う。


 昨日見た影は何者なのか。この夢はなんなのか。

 それは考えてもわからないこと。まったく、早く覚めてくれないものか――。


 何もすることがなく、暇な時間を持て余す。冷たいこの世界で、俺はずっと呼吸を繰り返し、口から漏れる気泡を眺め続けた――。






 ************






「てわぃやーっ!!」

「ぐぉぉおおおおっ!!!?」


 ドガッという強烈な音と共に、俺の腹は悲鳴を上げた。腹上で爆発でもしたような感覚、その直後には重さを感じて、何かが腹の上に乗ってきた事がわかる。


 眠気の吹き飛んだ瞳をゆっくり開くと、布団の上から俺に抱きついている神楽が居た。目と目が合い、少女はにんまりと笑って、


「おはよう!!!」


 元気いっぱいに挨拶をした。コイツ、なんつー起こし方だよ。察するに、俺の腹にダイブしてきやがったな!?


「おいコラ磯女、アクロバティックな起こし方してんじゃねーよ。七輪で焼いて食うぞコラ」

「うっわ、こーへい口悪いよ。それに、私は煮ても焼いても美味しくないんだから!」

「はいはい。わかったからどこうなー。クソ不味い磯女さーん」


 布団ごと抱きつく彼女を布団ごと引き剥がして俺は脱出した。部屋のカーテンを開けると、眩しいぐらいの朝日がおはようと言っている。今日も良い天気だ。


「気持ちいー天気だね〜」


 俺の掛け布団を丸めて抱き、布団の上でゴロゴロする神楽も同じ感想を口にする。今日も今日とて学校があるのだが、気持ちよく登校できそうだ。


「こーへい、このまま二度寝しよ?」

「ざけんな、学校行くだろうが。ほら、お前も準備してこい」

「ぶーっ。こーへいは真面目だな〜。神楽ちゃんは退散しますよ〜だっ」


 ムクれながら部屋を出て行く神楽。俺はその後ろ姿を追うでもなく、朝から疲れたと言わんばかりにため息を漏らした。

 顔を洗って着替えを済ませ、母さんの作った朝メシを食う。食ったらカバンを持って玄関で神楽を待つ。


 なんだかんだで磯女との同居生活にも順応し、平和を維持しているものの、こんなことで良いのかと日夜苦悩する。しかし、ドタドタと玄関に走ってくる神楽を見て、そんな考えも消えてしまうのだった。


「わーっ! こーへい、遅刻しちゃう!」

「慌てんなよ。いつもより少し遅いけど、余裕で間に合うから」


 急いで靴を履く神楽をそう言って落ち着かせる。まだ8時になってないし、普通に間に合うのだった。

 ゆっくりと玄関を開くと、眩い日差しを背景に、公道には1人の少女が立っている。電柱に寄りかかり、スマートフォンを扱う少女は俺たちの存在に気付くと、すぐにスマートフォンをカバンに突っ込んだ。


「おはよう、2人とも」


 凛とした声で挨拶してくるのは、俺のよく知る人橋綾という少女。今日も変わらず優雅な風貌だが、長い髪が長い黒髪が凛々しさを損ねている。髪を切ると言っていたし、恨めしいほどの長髪も今日で見納めだろう。


「おはよう、綾ちゃん」


 俺より前に玄関を飛び出す神楽が綾の元へ飛んで行く。それは文字通り、人間ではありえない飛距離の跳躍で、どことなく浮遊感を感じる緩やかなジャンプだった。

 たった1歩で彼女は綾の前に立つ。5mほど飛んでいたが、今更気にすることではない。


「おはよう、綾」


 俺も気怠げながら挨拶を返すも、綾はふわふわと大ジャンプをした神楽を見て俺に視線をくれない。


「海原さん、よく飛ぶわね。貴女体育で本気出さないほうがいいわよ?」

「えへへ〜♪ その辺は心配ないよん♪」

「そう。ま、貴女は既に目立っているから、なんでもいいかしらね」


 綾は投げやりにそう言って、次には俺の方に目を向けた。別に、目を向けられたからといって何かあるわけでもなく、俺が2人の側にくると、綾は学校に行こうと歩き出す。


「あ、待って」

「?」


 それを神楽が止めた。腕を掴まれ、不思議そうな目で綾は神楽の顔を覗く。神楽は空いた手でポケットを探り――


「はいっ」


 白い玉がついたブレスレットを、綾に渡した。それは俺たち家族にも配った真珠が輪を成すブレスレットで、綾は受け取ってすぐにその正体がわかったのか、怪訝そうな顔で神楽を見た。


「……これ、マザーオブパールね。私なんかより、そこのだらしない男にあげた方が良いんじゃないかしら?」

「公平やお母さんにはもうあげたの。だから、これは綾ちゃんに」

「……そ。なら、有り難く頂戴するわ。まったく、貴女のことは知れば知るほど好きになるから、困りものね」

「えへへへ〜♪」


 綾は優しく微笑みかけながら神楽の頭を撫でた。神楽もまんざらではないようで、綾の胸に飛び込んでスリスリと頬擦りしている。

 ……知れば知るほど好きになる? その意味ありげな言い方はなんだ? このブレスレットに、何か意味が……?


「おい、綾」

「ん? 何かしら?」

「知れば知るほどって、どういう意味なんだ?」


 俺が尋ねると、綾は俺の肩を優しく叩き、哀れむような声でこう言った。


「無知は罪なり」






 ************






 何事もなく学校に着いて、朝のHR(ホームルーム)の後はすぐに授業が始まり、俺はぼーっとしながら授業の様子を眺めていた。


 腕にあるブレスレットを見る。この石はマザーオブパールだと綾は言った。普通の真珠、つまりはパールと何が違うんだろう。マザーってつくわけなから、真珠の母とかなんだろうか?


「…………」


 考えてもよくわからんし、調べてみることにした。

 授業中、机の下でスマフォを出して"マザーオブパール"で検索してみる。すると、検索群のいくつかに石言葉とか石の意味とかがあって、それを見ていく。


(石言葉は【長寿】とか【健康】とか、そんな意味ばっかだな。あとは安産とか……これは関係ないだろ)


 というわけで、調べてもよくわからなかった。長寿とかは神楽みたいな妖怪が持つべき意味だと思うけど、俺にくれたって事は、何か意味があるはず……。


 訳がわからず頭を抱えていると、1時間目の授業が終わった。

この意味はわかるまい。

物語中に書きますが、ヒントはマザーオブパールにあって真珠に無い効果です。渡すなら有名どころのただの真珠でいいのに、何故わざわざマザーオブパールなのでしょうか……。


答えは本編の最終回あたりで。

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