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トキヤの疑惑調査..


 宿屋に戻り、木のテーブルの上にトランプが置く。トランプとは大衆カードゲームのひとつであり。賭け事や勝負事でも使われる人気の玩具だ。1から13のカードが4タイプ。商人、農民、貴族、聖教者のタイプがあり、帝国から大陸全土に広まった。


「やり方はわかるな?」


「トランプだぁ!! そういえば私!! これでトキヤと遊ぶの初めて!! わーい!!」


「わかるか? わかるな」


「わかる。わかる。一人でポーカーしたり…………一人で7並べしたり………………ああ、うん一人で…………」


「はい!! 元気出せ!! 俺がいる!! もう一人遊びはしなくていいぞ‼」


 ちょっと可哀想になり慌てて喋り捲し立てた。


「そ、そうだね!! 何して遊ぶの? 遊ぶの?」


 何故かネフィアの頭に犬耳のついた妄想がよぎる。かわいい、頭を撫でたくなるぐらいに。


「まぁ慌てるな。ポーカーしよう」


「よし!! 来い!!」


 2枚公開の3枚伏せ。変更一回。数回ネフィアと戦い。ワンペア、ツーペアと至って普通の役。勝敗は7勝3敗。ちょうどいい戦績になる。2枚公開する方法は賭けを行う場合に乗るか乗らないかの判断のための情報だ。


「トキヤは強いね」


「たまたまだよ………なぁネフィア。賭け勝負しないか?」


「ほう~トキヤの勝率が良いときに賭けの話をするんだね~乗ると思ってる?」


「乗りたい物を提示する。一回…………ワガママを聞くでどうだ? 何でも聞く」


「………何でも?」


「何でもだ。文句を言わない。無理なもの以外。本当に何でも」


「……………一緒に風呂」


「いいぜ」


「デート」


「……………いいけど」


「一日姫様扱い。それも最上級の」


「どんと来い」


「乗った!!…………ああ、何して貰おうかな~」


「まだ決まった訳じゃないぞ?」


「ふふふ。夢見るのはいいんですよ?」


「……………ほうほう」


 俺はカードを配る。2枚公開、俺はエースの2枚。いい役だ。


 対してネフィアの役はハートの8と9。


「トキヤ強いね…………」


「ああ、何枚交換?」


「2枚」


「…………おけ」


 交換、自分は手札にエースが1枚。スリーカード。ネフィアがにやっと笑みを浮かべる。


「トキヤ、賭け事辞めるなら今だよ」


「男に二言はない…………エースのスリーカードだ」


「じゃぁ、公開」


 不敵の笑みでカードをめくる。


「残念、私はハートのストレートフラッシュ」


 わかっていた負け。予想通りになってしまい。ため息を吐く。


「ん? トキヤ?」


「ネフィア、これは夢で描いたか?」


「なんのお話し?」


「いや…………」


 憶測の域だが。恐ろしい能力だ。


「では、勝ったので何を吹き込まれたか、私に関してんのこと」


「ん?………なにも吹き込まれてはないぞ?」


「私、トキヤの奥さんだよ? 何かを隠してることぐらいわかる。さぁ話す。仏頂面はつまらない。トキヤの悪い癖。なーんも話さない…………嫁さんは頼りにしてよ」


「………じゃぁ憶測の域なんだが」


 俺はネフィアにすべてを話す。内容もそのまま、実験みたいな事でトランプを用意したことも。


 話せば、話すたび。気が楽になる。何故気が重いのかわからないくなった。何故だろう。そして話終わるとネフィアは笑った。指を差して。


「ふふ!! バカ!! そんな能力ないよ~クスクス」


「いや、しかし………これはどう説明を?」


「運がいいだけ」


「運がいいだけ? いや………説明が」


「私って運がいいの。すごくすごくいいの」


「いや………説明………」


「トキヤ、もし思い通りに事が運ぶなら………私はそんなことすると思うの?」


「しないのか?」


「しない………トキヤは私をわかってない」


「むぅ」


 何故か少しムッとした。


「トキヤ? あれ? ムッとした?」


「ふん」


「そっぽ向くのかわいい!! ふふふ…………あっ和むのまだ先だね」


 ネフィアが音楽を流す。ピアノの音色。


「ふふ~もし夢で人生を操れるなら。生まれた場所は帝国でトキヤの幼馴染みで人間の女の子で………一緒に大きくなって結婚して家庭を持って普通の生活がしたかったな」


「ん?………普通過ぎやしないか?」


「トキヤ………物語、劇場で見る物語は見るのは楽しいけど、当事者は大変なんだよ。逆にもし事象を操れるなら今のこの状況だって操ってる」


「どのように?」


「都市ヘルカイトでこの時間ならたぶんトキヤの服、洗濯してる」


「………いや、普通すぎ」


「トキヤはわからない? 普通ほど難しい事はないの…………普通に生まれていない私は普通に憧れる物。違うものに憧れるのが生き物です」


 見た目、お嬢様なのに内面けっこう良妻。


「ですから、今は運が悪いですねぇ………平和に暮らしたい…………」


「まぁうん。そっか…………じゃぁ今までは運で乗り切ったと?」


「だから、そう言ってる!! 運と言う不確定がなんともすんなり認められないけど。『運がいい』と認めれば納得できるよ。トキヤとかエルフ族長は運じゃなく実力で掴み取るから能力とか変な思考になるんだよ。運が良ければ魔王の子として生まれません‼ あと、トキヤは『操られてる』て思ってたんだよね?」


「あ、ああ。夢も全部」


「残念、全部。トキヤの足跡です。ふふ、『夢………諦めきれてないじゃん』」


「最後? 何を言った? 聞こえなかったぞ?」


「独り言、トキヤもっと会話しましょ~」


 ネフィアが音楽を流しながら流暢に喋る。楽しそうに。だが、最後が聞き取れなかった。


「運命操作系能力者かと思った……俺は」


「残念、私はただの女の子でした」


「何処に女優も音楽の才もあって、炎魔法を独学で編み出し、音を操作し、剣を持つ普通の女の子がいるんだよ?」


「目の前に」


「………」


「私のこと『女の子』て思ってるでしょ?」


「かわいいかわいい女の子と思ってる」


「………あまい」


「あまい?」


「あまあま~」


「まぁ二人きりだしな~」


「まぁでも運が悪い所はあるけど。いい所もあるね。夢魔だったから夢の世界で特訓できるし。トキヤの夢を覗こうとすると夢の世界でドラゴンとデーモンと対峙しないといけないし。あれで鍛えられた」


「夢の世界で特訓? デーモンとドラゴンは心当たりあるけども」


「そう特訓。後は見てきた物の反芻。特に戦いかたをね。気付いた?」


「『荒削りの居合いを何処で学んだんだろ』て思ってた。『剣が違うが動きが似ていてたな』て………まぁ『気のせいか』と思ったな」


「気のせいじゃない。あなたの心に残っている彼女の戦い方を真似てる。盾を持たないから」


 思い出すのは2回斬り倒した事。刀を持つ好敵手。誰よりも鋭い剣筋を持ち。俺をある意味で鍛えた人物。


「…………」


「はい!! 落ち込まない!!」


「あ、ああ」


 落ち込んでいたのだろうか。落ち込んでいたんだろうなぁ。


「トキヤは切り捨てたり、ハッキリ区切るけど。後で悩むよね。ずっといるからわかる。そこ弱い所。全てを捨てる覚悟を持っても、最後で情が湧くのも」


「あー敵わんなぁ………」


「そんな所も好き」


「敵わんなぁ…………」


「でっ、なんてエルフ族長に報告するの?」


「女神に愛された豪運の持ち主」


「へぇ~ちょっとお洒落」


「普通の運じゃないから納得できるだろう。考えてみれば聖職者だったし……お前」


「最近トキヤが全然怪我しないね?」


「お前が前線張るからな」


 魔物に出会った瞬間、昔は後ろだったが最近は普通に前線を張り自分に強化呪文回復呪文を唱えながら殴る。だれが予想できただろうか。こんな耐久オバケみたいな奴。


「聖職者は前線で殴るのがお仕事」


「一部だけだ。帝国の下、南側の奴等だけな」


「帝国の下………あっそういえば帝国の騎士いるよね」


「いるな、襲わるかもしれない」


「帝国の騎士に会いに行ったりしないの?」


「えっ? 全員殺せと?」


「違うよ!! 知り合いとか探しにいかないのかなって」


「殺し会いになる。会いに行ったりしないな、一応裏切り者だぞ?」


「ふーん………新しい勇者がいそう」


「いる、だろーなぁ~正直、国境開放されてここまで無事に来れてるのがスゲー。おれときは厳しかった」


「堂々と魔国に来れるね」


「その差は天と地の差がある」


 本当に時代は変わってきている。流れが来てる。


「時代は変わるね」


「変わるなぁ…………」


「頑張って生き抜こう」


「そうだな」







 親友が出て行った瞬間。話し合いはお開きになった。僕は自分の奥さんを寝室に置いて行き。頂いた情報から、豪華な宿屋に足を踏み入れる。


 族長等、魔国にも貴族と言える人がいる。その人が泊まる場所。そこに………自分の親族が来ている。


トントン


「はい、どうぞ」


 護衛の騎士に挨拶をすませ。僕は部屋に入る。


「…………ランスお兄様!?」


 入った瞬間、驚いた声をあげる姫騎士。妹のネリス・インペリウム。名家インペリウムの姫だ。帝国ではアフトクラトルの分家に当たるが過去に何度も王を輩出しているため両家は仲が悪いとする風評がある。


 実際は仲が悪い人やいい人もいて、わからないのが現状ではある。


 元、トキヤの許嫁と言えなくもない。一方的ですが。


「久しぶりだね。ネリス。元気そうで何よりだ」


「お兄様もお元気そうで………ラスティお兄様はもう………ダメそうです」


「ラスティが?」


 血の繋がりは遠い親族の名前だ。彼女も血は遠い。


「はい」


「そうですか。これも権力争いです。仕方ないでしょう」


「ランスお兄様はいつこちらへ? 生きてらして驚いております。潜伏していたのかしら?」


 予想通り、僕は死んでる者と扱われているようだ。安心した。


「そうですね。ずっと冒険に出ておりました。もう二度と帝国へは帰れません。権力争いは興味なく、都市ヘルカイトで生涯を終えようと思っております」


「そうなんですか? 許嫁が沢山おりましたでしょう? どうされるのですか?」


「皆が権力欲しさに寄越す女性など、人形で十分」


「お兄様………変わりましたね。昔ならもっと優しい言葉をと思っておりました。何故か大きく見えますね」


「ああ、すいません。すでに僕にはこちらで作った奥さんが居ますので帰られないのです。もし、まだ待っていらっしゃる方がいればそう伝えてください」


「お、奥さん? お兄様? 魔国ですよ? こちらで住んでいる人より。帝国の名家のお嬢様の方がお綺麗ですよ?」


「いいえ、こちらの魔国の女性の方が綺麗な方は多いです。綺麗な方が多い所で妻を見つけるのは仕方ない事です。僕も男ですからね」


「確かに、亞人は人間に近い容姿ですが亞人………人ではないですよ?」


「そうです。人ではない。しかし、人より清らかです」


「ランスお兄様? お気は確かですか?」


「魔国で僕は亡くなったと。魔物に魅いられたとお伝えください。では…………ネリス。帝国で元気に」


「ら、ランスお兄様!? いったい何がお兄様も変えたのです!? お兄様はまだ、物わかりのいい皇子だった筈です‼ 帝国の剣も抜け、皇帝陛下の血筋であり!! 皇帝への道も」


「くだらない」


「!?」


「たった、一人の女性を愛する事以外。興味はない。僕の親友の口癖だね」


「トキヤ様に会ったのですか!?」


「ここにいるよ。情報をあげた。僕は死んでる事を伝えてくださいね」


「ま、まってください。お兄様!!」


「なんだい?」


「…………お相手の種族は?」


「さぁ、わからない」


 アラクネだけどアラクネではない。


「!?」


「では、失礼するよ」


 僕は驚いた様子の妹と別れる。帝国と絶縁を言い渡した心はすっきりしている。





 私は久しぶりのお兄様の背中を見つめながら。にやけてしまう。探した殿方を見つけたのだ。しっかり巻かれ、消えた人。噂では魔国で暴れていると聞いていた。


「あなたを連れてきた理由ですね。お兄様について行って情報を集めて。妻といいたぶらかせた女性も知りたい」


 背後に声をかける。見えない彼。


「はい」


 青年の返答に満足し、笑う。ずっと前に帝国で腕が立つ暗殺が得意な者で話題になった。元は下級兵士だったが色々あり。私の元へ来た。英雄になりたいと言い。英雄に類する者たちを屠る暗殺者として私が飼っている。


「………ふふ。英雄にさせてあげる。新しい勇者として」


 私は連合国から彼を呼び戻し。ここまで連れてきた。新しい魔王を餌に必ず来ると思い。準備をした。


「見つけたら、始末していいわ」


「ネフィアという女性ですね」


「ええ………泥棒さん」


 私の物を奪った。悪女。





「ただいま………ん?」


「おかえりなさい。あなた」


「ランスおかえり。お邪魔してる」


「ランスロットさんもどうですか? トランプ」


「トキヤ。悩んでましたよね?」


「ああ、まぁ………説明するよ。やりながら」


「懐かしいですね。僕は強いですよ?」


「知ってる。鍛えたもんな」


「ええ、君に勝てる唯一の勝負です」


「鍛えて勝てるもんなのかなぁ………そうそう、お前の嫁さん強いぞ」


「リディアが?」


「はい。では、配りますね。何故か勝てるんですよ。初めてだったのですが」


「いいでしょう。僕が勝ってみせましょう………盗賊ギルドを二人で壊した日を思い出しますね?」


「出禁になったな。お前のせいで」


「勝てるので」


「…………私が一番弱い?」


「ネフィア姉さん、運がいいだけではダメですよ? ハッタリも必要です」


「う、うーむ」


 やっぱり僕は親友と一緒にいて良かった。











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