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集会とトキヤの独白から疑惑..


 2日後、彼らは約束通りにやって来る。エルミアと旅の話をして過ごしていた午前、戸を叩く音で彼らが来たことを察する。


「どうぞ」


 扉を明け、用意していた客人用の椅子に座り、揃う。豪華なメンバーだなと思う。


 この中で意外だったのか、エルフ族長グレデンデが同じエルフのエルミアに面識が無かった事だ。名前は聞いていたらしいく、挨拶を済ませエルフ同士会話をする。


「小さい頃、森へ帰ってこなかったハイエルフが居ると聞いて大騒ぎになったお話を聞いてます。それの一人でしょうか?」


「あら、騒ぎになってたの?」


「私もまだ族長ではなく。細かい事は知りませんが………話は本当だったのですね。ずっと言われていた噂でしたが」


「話ねぇ~」


「遠くの人間が治める地でエルフを見たと言う行商人からの話で美しきエルフの姫が居るといい。帝国と戦争していたと聞いてました。非常に疑わしい話だったのですが。今日、納得しました。人生とは数奇な物ですね」


 エルフ族長が笑みを浮かべた。同胞に合ったからだろうか。


「ええ、そうです。ドン底から上まで全て見てきましたから…………」


「故郷のエルフの里へは………行かれますか? 許可証発行できます」


「いいえ、もう記憶もないです。それに種族はハイエルフでしょうが、私はマクシミリアンの家に嫁いだ者。今は『人間』です。私は報いないといけない。私は『覚えていない』といけないのです。生きているから」


 真っ直ぐ、族長に言い放った言葉はすごく重たいものだった。覚悟以上の物。


「そうですか。よかった。あなたはもしかしたら、不浄としてエルフの里へは入れてもらえないでしょう。仲間で剣を交えない事を願うばかりです」


 マクシミリアン騎士団は人間の騎士団。だからもし、何かあれば魔国と戦うのだろう。エルミアは種族は同じでも、彼女はもう人間側だから。


「そうですね。ですから、無理を言って来たのですから………招待状の趣旨は簡単ですよね。私も驚いてます」


 「無理を」と言うのは孫たちの制止を振り切って来たことだ。護衛もいらないといい。困らせたらしい。


「では、本題へ。実はトレイン様の狙いは敵味方を区別するために誘ったようです。招待状の宴会後、じっくり吟味して取引を行い。覇権を広げようと考えておられます」


「そうなんだ。ふーん」


「そうだぞ、ネフィア。帝国も連合国も……スパルタに地方都市国家郡も全部、いざこざしているからな。群雄割拠と言えばいいかな」


「ええ、そうでしょうね。私たち騎士団も誘うとは思っても見ませんでしたがね。私たちは東を統べる領地主ですが。帝国の膝元ですよ」


「だからでしょうね。そして、やはり膝元でしたか………そういう情報も無いのですよ。ここには」


「Zzzz」


「あの人寝てるね。ランス」


「お仕事で疲れてるんだ寝かせてあげよう」


「バルバトス………」


「寝かせてあげましょう。決まったら伝えればいいです」


「はい」


 疲れているのか反応なく、ぐっすりだ。座った瞬間に落ちてしまった。夢を覗くと私との戦いを夢見ている。何故かボコボコに殴られて負けて悔しい思いをしているようだ。そこまで私は酷くないですよね。


「彼は夜通し警護の指揮を取ってますから仕方ありません。無礼を」


「畏まらなくていいって」


「しかし、まだ姫様は正式に魔王であります」


「エルフ族長。真面目なのはいいですが考え方を変えましょう。現時点で兵を動かせる権限は私に無く。形だけであり、今の本当の魔王は彼ですね。長い間、不在だったでしょうが国は平和です」


 やり方はどうあれ荒れていない、都市インバス以外でそんな暴動なども起きていない。


「そうですね。今の所は……」


「それより本題へ」


「はい、では…………姫様は参加されると伺ってましたので最初からご参加はどうでしょうか?」


「最初から?」


「はい、姫様が乱入するよりも穏やかに進めます」


「あら、それなら私と参加します? マクシミリアンの従者として」


「そんなことしたら騎士団の汚名になりますよ?」


「いつから私は帝国に絶対服従と言いましたか? 残念ですが、切るときはある。目を瞑っている事はあるんですよ、ええ、今は考えないだけで」


 エルミアは頭を下げ、悲しそうな表情をする。私は昔を見ているため、何となく、だがきっと処刑で殺された息子の事を思い出したのだろうと思う。何年たっても子の事を忘れないのだろう。母と言う存在は。


「私たち、エルフ族は長く生きてしまう。だからこそ悲しい事も多い。ハイエルフが森から出ない理由だろうな。別れが辛いんだ」


「…………あっ!! ごめんなさい‼ 雰囲気悪くしましたね!! ネフィアちゃん。私の従者で大丈夫よね?」


 エルミアお姉さんは顔を上げて慌てて笑みを溢す。


「はい、懐かしいですね!! トキヤに館に置いていかれて、メイドとして働いたことを。ね、お嬢様?」


「ええ、たくさん叱って。たくさん怒鳴って。たくさん叩きましたから」


「ちょっと、お嬢様。表へ出ませんか? 決着つけません? 私強くなったんですよ。見てみませんか?」


 ちょっと理不尽な尻叩きを思い出した。今になってちょっと、ゆるせん。


「ネフィア姉さんが炊事とかお上手なのはメイドとして働いてたからなんですね」


 リディアが感心する。


「そうですね。僕はマクシミリアンに面識があることに少し驚いてたけど。修行なら納得だよ。それよりもあまり僕たちに関係のある話じゃないね」


 ランスがリディアと見つめ合い。二人だけで何かを相談しておる。アイコンタクトだ。


「すまんなぁランス。荒事なら手伝って貰おうと思ったけど。丸く収まりそうだ」


「僕は丸く収まった方が好きだけどね。トキヤ」


「ネフィアちゃん。まぁ昔の事はやり過ぎましたね。ごめんなさいね。で、従者としてお願いします」


 畜生、姉さんがみんなの前で頭下げたから怒られない

よ。


「………はい、お嬢様」


「纏まりましたね。では、ドレスをお貸しします。当日は私が用意した従者がご案内させていただきます」


 話が決まったとエルフ族長が感じ取り、ダークエルフ族長を起こした。決まったことを彼に話す。寝惚けながらも理解しダークエルフ族長は寝ていたことを謝まった。


 そのあと、エルフ族長が立ち上がり周りを見渡しながら話を続ける。


「では、決まりましたので少しご相談があります。皆様のお時間をいただけませんか?」


 各々がそれぞれ肯定の仕草をする。「何か重要なことでも話すのだろうか?」と思った事だろう。


「ありがとうございます。そして、姫様………一つお願いしたいことがあります。対価としてドレスとトキヤ殿の正装に従者を一人お貸ししますので」


「いいですけど、お願い事とは?」


「申し訳ないのですが席を外していただいてもよろしいでしょうか?」


 席を外す。私だけ。いったい何故なのかはわからない。私がいたらダメな話なのだろう。ならば潔く引く。


「除け者にするわけではありません。ただ、姫様がいらっしゃいますと話が進まなくなる恐れがあり、申し訳ないのですが席を外していただければと思います」


 深々と彼は頭を下げる。


「わかりました。借り物もありますし、トキヤ行きましょう」


「申し訳ないのですがトキヤ様にも伺いたい事があります」


「………そうなの?」


「ネフィア。露骨に落ち込まなくていいぞ。終わったらすぐに部屋に向かうから」


「わかった。では、先に失礼します」


 私は立ち上がり、お辞儀をして部屋を出た。何の話かはわからないがきっと政略の話だろうと思う。


「まぁ、私には才能はないです。わかってます」


 王になる者は才がいると思っている。少なからず私には無いと思っている。私の事は私が一番知っている。


「さぁ、部屋で待つのもあれですから。バルバトスさんが入れてくれたワンちゃんの体でも洗いましょう」


 そう、言って。馬小屋へ向かうのだった。





「行ったみたいだな。部屋じゃなく馬小屋に行くみたいだ」


「ドレイクの手入れですか。さすが姫様は自分の馬を大切にされますね。他の方は任せっきりが多いのに」


「そうですね。私も馬の手入れはメイドにやらせてます」


「でっ? エルフ族長。話はなんだ?」


 静かにエルフ族長は目を閉じ、机に腕を置き悩む素振りを見せる。私は全く関係ないので皆さんのお茶を入れ直す。


「ありがとう、リディア」


「いいえ、ランス」


「…………元の名、ネファリウスさまについて色々考えたいと思います」


「考えたい事とはなんだ?」


 トキヤお兄様が話を促す。


「姫様は一体、何者なんでしょうか?」


 沈黙。皆が首を傾げる。トキヤお兄様に関しては眉を歪ませており、心当たりがあるのだろうと推測する。


「私は姫様のことが知りたく。調べました。たくさんの事をね。父である前王、母である淫魔を」


「………確かにネフィアが聞きたくない話かもなぁ」


「ランス、私は……ちょっとよくわからないです。ネフィア姉が聞きたくないとは思えないです」


「君はわからなくて問題ないよ。後でゆっくり教えてあげるから。今は黙りましょう」


「はい」


 エルフ族長が続ける。


「前王は正直なお話。無能でしたが力、魔力だけは強く。部下である私たちがサポートで仕事しておりました。力だけで覇を持つ者であり、兄弟も全て殺された方です。そして、非常に子を多く残されましたが…………トレイン殿によって全て処分されました。魔王共々。姫様を除いて」


「知っている。俺もそれは知っていた。残された理由もな………俺に殺させようとしてたのも」


「ええ、トレインは魔王となった姫様を勇者さまに殺させ。仇討ちの大義名分で魔王となる簒奪の予定だった。人間に対しての敵となる大義名分をも手に入れるつもりでした」


「しかし、結果は俺が拐っただけ」


「計画は破綻しました。だからこそ賞金首として情報を集め。暗殺するか持ってきていただくかを考えました。次に替え玉を用意も考え。長い時間をかけて作り上げました」


「替え玉?」


「淫魔の少女を買い。調教して今、城の中で姫様の替え玉として生活させてます。『能力がない』と言うことで摂政をし…………数日後、替え玉に魔王の譲位を宣言させる予定です。実は姫様はまったく何もせずとも魔王を辞めることは出来ます。しかし………何故、刺客が後を絶たなかったのか? 疑問ですよね」


 エルフ族長が問いかける。


「ネフィアちゃんが怖いから。自分の地位を脅かす唯一の汚点。見えない物に怯えるのよ。権力者は」


 エルミアが素早く、答えを言う。私には話を聞いてからでしか理解ができない。特に感情は難しい。アラクネの魔物である私には。


「そうです。自分以外の誰かの手に渡れば大義名分はその者の手に渡る。しかし、杞憂。姫様は強かった」


「ああ、本当に強い。ダークエルフ族長の俺が保証する。これでも族長一の力強さを持ってると自負してたんだが………ボコボコにされた。あっけなく得物も奪われてな……あまりの敗北に心は折れた」


 ダークエルフ族長が悔しそうにし、嬉しそうにもする。


「そうですね。僕も彼女の剣技はなかなかの物と思っています」


「ランスと同じでネフィア姉は確かに弱いと思わない」


「ネフィアちゃんは私が育てた。ドヤァ」


「エルミア嬢のお陰ではあるな」


「あっう………すまない。トキヤ殿が違うと言うと思ったんですけどね。大本は彼女の努力でしょう。どうみても魔法使いが適性です」


 エルフのお姉さんが照れながら口を押さえ笑う。


「いや、本当だって。剣が無くても殴り合う戦い方はマクシミリアンの騎士の特徴だからな」


「そうか………私の教えを守っているね」


「ええ、予想外ですね。閉じ込めていた子が恐ろしい程の魔力を持っていた事に。全くそんな気配はしませんでした」


「それで? エルフ族長は何を考えてる?」


「まぁトレインの考え方と姫様の強さの認識はわかりました。トレインは姫様を疎んでいます。本当にそれだけです。次に母である者はもう死んでおり。処刑されてます。あまり特徴はありませんが綺麗な淫魔の売春婦でした。お金で雇われた用意した産母ですね」


 全く脈絡もなくネフィア姉の母親の話になる。一同もまた首を傾げる。


「何が言いたい? 俺たちにこと細かく説明させて………何がある?」


「まぁお待ちを、目的は淫魔と言う下級のイメージで弱い子を用意する。劣等種として魔王の威厳を減らす事でした。まぁうまく行き、誰も魔王に忠誠なんかを抱きませんでしたがね…………ですが。結果それが……まぁお強い」


「……………ながったらしい。聞きたいことを言え」


「トキヤ殿はせっかちですね。わかりました。聞きたいことは…………『姫様は何者なのかを聞きたい』です。いいえ、姫様の情報を集めたい」


 最初の問い。聞きたいことは最初から聞いていたのだ。


「集めてどうするんだ?」


「いえ、気になるのですよ全て………そして。女神の声も」


 女神の声。ネフィア姉の妄言のような話。


「ここに私の支援した友からの手紙があります。内容は都市インバスであったことの経緯。これを読むと女神の声が聞こえた話を書かれております」


「教会の者か」


「いいえ、教会の主です。私と同盟関係になりました。読み上げる前に簡単に皆様からも情報をお願いします。姫様という存在の考察が欲しいので」


 エルフ族長が話を促して、手をどうぞと前に出した。わたしたちに向けて。





 俺は静かに成り行きを見る。エルフ族長グレデンテの好奇心に見える行為に少し引っ掛かりを覚えたのだ。


「お二人はどのように関わりを?」


「えーと、ネフィア姉とは名も無き商業都市で出会いました」


 アラクネのリディアが出会いを語る。ランスロットは「妻よりは面識がない」と言って静かに話を聞いていた。


 アラクネの内容については助言をいただき。魔物以外の生き物に対しての常識の違いをしっかり教えて貰ったらしい事をはなす。女性らしい言葉使いも何もかも、ネフィアが導いたと言う。


「だから、私はネフィア姉の事は尊敬しますし唯一の相談できる相手なんです」


「僕も親友の妻である彼女は信頼しております」


「そうですか。ありがとうございます。では、エルミア・マクシミリアン様は?」


「私はですね。トキヤ殿が手を焼いていた時を知ってます。皆さんご存じですか? 元男の子だった事を。そう、出会ったときはまだ自分の体を忌み嫌い、男に戻りたいと愚痴っていた時ですね」


 俺は懐かしい気分になる。1年前だが古い時代のことのような感覚になった。毎日が濃く充実しているのだろう。


「言葉も優しくなく。刺があり、『余』とか『我』、『俺』と男口調でガサツで品のない女性でしたね」


「ネフィア姉さまにそんな時代が!?」


「リディア? 目が輝いてない?」


「姉さまの赤裸々な話ですよ? 楽しくないですか?」


「君も本当に正真正銘の女の子なんだね………」


「楽しくないですか?」


 アラクネの姫が首を傾げる。乙女な仕草に何を感じたのかランスロットが俺を睨み「怒りたくない、助けて」と伝える。俺は無視した。


「面白いですよ。スゴく、わがままだったわ」


「ネフィアは最初も今もわがままですよ? ずっと」


「それはトキヤ殿、貴方にだけよ。甘えてるの」


「ああ、まぁ………甘えてるのはわかるんですがね」


「誰にでも甘えてる訳じゃないでしょう………本当に心から信頼してるのよ」


「知ってますよ」


「知っているなら、私が言うことはないわ。で、最初は…………」

 

 エルミア嬢が過去にあった事を楽しそうに話す。楽しかった日々だったのか、毎日ちょっかいを出していたらしい。その話の途中。エルフ族長が質問する。


「魔都では………どうでしたか?」


「魔都では? 魔都では………そうね。威張るほどの強さを感じなかったわ。トキヤ殿が護らなければ倒されるほど弱かったわね。実はあまり強いって感じしませんでした。今もですね。だけど『能ある鷹は爪を隠す』ものでしょう?」


「そうですか。ありがとうございます」


「ふふ、本当に………どうしてここまで変わったのかな? トキヤ殿、何故、あそこまで心を許せたのでしょうね?」


「ネフィア姉の昔話を聞くと本当にそう思います。1年………何があったのですか?」


 皆が自分の話を待つ。期待の目が自分に注がれる。「何があった」と言えばあったが、ネフィアの心の変わりようまでは説明できない。わからないのだ。


「…………何故、あそこまで変わったのかわからないな」


「わからない? ずっと一緒に居たでしょ?」


「居たけども。そうだな………最初っから可愛い女性と思ってたからな。落ち着いただけのような気もするし、あれが本来の『少女』なのかもな。でも………」


 そういえば俺は全てを見ている。ただ深くは見ていなかった。夢を追いかけていた事もあるからだろう。


「長くなるが………いいか?」


「はい、私はあなたの見てきた事が一番知りたいのです。姫様の軌跡を」


 最初っから、皆に振って………思い出話に花を咲かせて俺に語らせるつもりだったのだろう。何処から話すか…………やはり。最初っからだな。

 

「どうしました悩まれてますが?」


「…………占いからだったな全て」


 俺は静かに語る。誰も遮ることなく俺の人生を含んだ話を聞いた。




 一人語るなんてガラでもないが………たまにはいいだろう。あいつのご友人が多いからな。


 最初は占いからだった。有名な占い師から見せてもらった結果だった。丘の上でネフィアに似た女性の笑顔それに俺は心を奪われ。そして聞く。その人物に近い存在は男であり。魔王となり死ぬ運命と女性の彼女はこの世に生まれていないと言う歪な占い。


 本来なら、そんな占い。どうでもいいだろう。他の奴ならどうするかわからない。だが俺は、笑顔に魅せられた。


 それが本当の始まりだったな。数年、夢にも出る程に。ランスは知ってるよな色々してたこと………そこは想像にお任せする。そして俺は勇者の一人として魔国を荒らす使命を帯び旅立った。が、ご存知。魔王を盗みに来た。


 唯一占いに近い存在を求め、珍しい薬を持ってな。そして、潜伏から毒を盛ること知った俺はそれを入れ換えた。案の定、効果があり。薬で苦しんだネフィアを庇って帝国に逃げた。それも、この世に数個しかない神具を用意しこのための使ってな。


 上手く行った時、嬉しかったさ。自分を抑えられないぐらい。目の前に求めていた人に似た女性がいるんだ。そして、楽しそうに声をかけたさ。護るって誓ってな。


 魔都へお金を稼ぐために依頼でエルミア嬢と出会った。そのときはまだネフィアは弱かった。しかし、それがよかったのか庇った時の俺の背を今でも誇らしく語ってくるし、背中をよく触ってくる。ああ、ちょっと脱線したな、すまん。まぁ………エルミア嬢に預けたのもそのときだ。


 それから、引き取り。盗賊ギルドに拐われもしたな。もちろん、虐殺した。今のあいつでは考えられないぐらい弱かったんだよ。そうそう、そのときエルミア嬢に出会う前も店で働いたりしていたし社交性は高かったなすでに。


 まぁでも、魔王とバレてしまい。帝国に居られなくなり連合国へ逃げ出したな。旅をするつもりで遠回りと…………色々な物を見せたいしそう………エスコートしたかったんだよな。文句は言うが大人しくなった。戦いも魔法も教えたなそのときに、そこそこ戦えるようになったかな。


 色んな事を話したな、本でしか知らなかった事を目で見るんだ。ゆっくり心を開いてくれたよ。好きな童話もあったな。今はヘルカイトの家に…………おっと。また脱線した。うん。


 連合国の首都へついたとき、そこで初めて宝石に興味を持ったかな。そう、少しづつ女性らしくなっていったな。ワイバーンの群れが来ていたのを倒せるぐらいは成長したな。炎の魔法の扱いは上手かった。魔力もあるから芽が出るのも早いし才はあったんだよ。日を見ることがないだけだった。強さの片鱗はあったな。色々あって賞金首で追われ連合国からも逃げたな。


 そうそう、白金の鎧はその逃げる時に用意していたものを渡したんだ。今の炎のブロードソードは出会ってすぐだったが。着てくれたな………あれからか少しづつ少しづつ大人しく。仕草も変わっていったのは。色々、俺について苦悩していたらしい。


 それからか、大きく変わった出来事があった。黒騎士に追い付かれた時だ。別に追い付かれて変化した訳じゃない。黒騎士を撃退し、命からがら運良く生き延びた時、そう…………すごく運のいい出会いで俺が命を拾った時。今のネフィアになったな。


 口調はいつから私っと言うか忘れたが。俺の呼び方が変わったのは覚えている。ああ、そうか………心が変わっていった時に………呼び方が変わったのか………ん? ああ、すまない。俺にしかわからんことだ。最初は、俺、余、我とか言ってたのがいつしか私になって。おまえとかから勇者と言い。そして『トキヤ』と呼んでくれるようになったな。


 それからだ。本当に完全に今のネフィアになった。悩んでいる事もなく。天真爛漫になって、何処から見ても若い少女であり。自分に肯定的になった。しかも、昔の男だった事を利用してセクハラを働くようになった。花が咲いたような程に変わった。「婬魔を誇りとしている」て言ってるしな。


 強さもそう、護られるだけの姫を否定し。俺の隣で歩ける強さを求め。「いつしか前を歩いてみせる」と言いきった通り。炎魔法使い、剣士、として開花したな。婬魔であった生まれもった能力を使い。気付けば本当に護る必要は無くなり、俺の目の前を楽しそうに歩く。ワガママに育ったよ。


 「きっかけは自分を好きになる事」て言ってたな。女は愛一つで変われるってのも………今のネフィアが悪魔らしからぬ輝いて見えるのはそうなんだろう。まぁ~もっと色々あるが話せばキリがないな。


 


 細かな補足や、話を俺は終える。静かに聞いてくれた。


「以上かな………あんまり強くなった理由なんてないな。元々才能を沢山持っていただけの事。それが咲いただけ」


 俺は腕を組み唸る。それしか思い付かない。短期間の急成長はそれしか説明つかないからだ。


 もし、今のネフィアが魔王であったなら、さぞ強敵だっただろう。苦戦を強いられ捕まえるなんて出来ない。そういう姿も見てみたいもんだ。


「そうですか。ありがとうございました」


「参考になったか?」


「充分です。姫様はやはり姫様でした」


 エルフ族長が目を瞑り。唸る。


「やはり、姫様は何か得体の知れない誰かに護られている気がします。あまりにも…………」


 一同が一同、何となくだが。考え方を察する。


「今まで上手く行きすぎてませんか?」


「?」


「姫様視点でお話しします。姫様の最初の望みは?」


「ネフィア姉の望み?」


「ネフィアちゃんの望みは…………トキヤ殿はしっているか?」


「望み………夢…………」


「私は隔離されている時の警護の兵士に話を聞いただけですが童話が好きと伺っており………何が一番読まれたかを知っています」


 童話って確か。


「ドラゴンスレイヤー。拐われた姫を騎士がドラゴンから救い出す話ですね。姫様はいたくお気に入りだったとか」


「ドラゴンスレイヤー?」


「近似の内容で題名違いは多くありますが、元の本の題名ですね」


 何故か頭に引っ掛かりを覚える。俺は恐ろしい事を考えた。そんな存在がいるのかと。


 一同は自分とエルフ族長のなりゆきを神妙な顔で見つめる。


「姫様は騎士に憧れ。別に姫のように隔離されている状況を打破して欲しいと夢見たのではないのでしょうか?」


「それがどうした?」


「トキヤ…………僕は何故か頭に思い浮かんたのですが。鋼竜を倒していたね?」


「ああ、倒している」


「やはり、そうでしたか………冒険者のランクにありましたね。ドラゴンスレイヤーと」


 皆が驚いた顔を俺に向ける。まてまてまて。


「たまたまだろ!?」


「元黒騎士であり、竜狩り、ドラゴンスレイヤーであるあなたが姫を連れ出しました。ドラゴンではありませんがエリック・バルボルグと言うデーモンから」


「まて!! あいつは男だった!! 姫になりたいより騎士になりた……………」


 ふと、今のネフィアを思い浮かべた。


「今の姫様のお姿。立派な女騎士でありますね。姫騎士と言えば分かりやすいでしょうか? 帝国にもいらっしゃるかと。強い騎士が」


 俺は背筋が冷える。今まで自分の意思だと思っていた事は違うのかと。


「童話と類似が多いです。そして童話の最後はもちろん。殆どの作品で………」


 勇者と結ばれる。


「……………」


 俺は沈黙した。


「姫様が夢を描きそのとおりになっています。では次にトキヤ様。今、姫は何を描いてますか?」


「…………魔王を辞め、俺と生活すること」


「叶うでしょう………姫様は夢魔です。婬魔は恐ろしい種族なのかもしれません。勇者様、夢で洗脳は?」


「……………わからない。『出来ない』とは言った。まぁでも………うーむ」


「私は思うのです。姫様は………」


「違うな」


 俺は遮るように否定を口にし、立ち上がる。


「ちょっと悩んだがあいつはあいつだ。そこまで考えちゃいない。ネフィアはネフィアだ。そろそろ寂しい思いをしてるだろうから行くぜ。じゃぁな」


 大剣を担ぎ、部屋を後にする。少し胸騒ぎがした。


「トキヤ様…………くれぐれも」


「何もない」


 逃げるように俺はその場を後にした。変な考えが頭を巡る。





 昼、太陽は世界を照らしているのだろうが自分の心には今、影が落ちている。疑いが拭いきれない。


 エルフ族長は疑っている。上手く行きすぎていることに。そうだ………上手く行きすぎている。


 宿屋から少し離れた場所の馬小屋。色んな乗り物動物が飼育され、色んな場所から来たことが伺える。騎士等も見え、鎧を確認すると帝国の証がある者なども散見された。連合国の騎士も。騒ぎがないのは敵国だからだろう。


「ネフィア」


 俺はそれらを横目にドレイクの体を洗い終えたばかりのネフィアに声をかける。綺麗に泡を洗い流しながら。声を出す彼女。


「トキヤ、話は終わったの? それよりも!! 見て見て!! 綺麗になったよ!!」


 鱗に光沢がある。土色のちょっと暗い色だが、太陽で反射しキラキラ輝いていた。


「…………ネフィア」


「トキヤ?…………………話し合い。何かあったんだね」


 彼女は笑みが収まり。キリッとした目で自分の顔を伺う。


「ああ。宿に帰らないか?」


「うん」


 ネフィアは真面目な顔で頷くのだった。




















 










 

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