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淫らに落ちる魔王..


トントン!!


「どうぞ………あっ」


 私は自分の部屋で服を脱ぎ。火傷の様子を鏡で眺めていたとき。ノック音にすぐ反応してしまい慌てて近くの布を体に巻く。相手が男性だったら、はしたない姿を謝らなくては。


「ヨウコ?」


 ドアを開け。入ってきたのはちょっと伏し目がちな。金狐の獣人だった。女優の余裕ある表情じゃぁない。ゆっくり小さく自信なさげに口を開く。


「………うむ。その………謝りに来たのじゃが………何故ゆえ、その姿なのじゃ? そういう趣味かの?」


「あっ……ええっと火傷の跡の確認を。綺麗な体ですから」


「………」


スッ


 ヨウコが床に座り、ゆっくり頭を床につける。


「すまんかった!!」


 私はそれが東方の土下座と言う謝罪と知っている。多くの人に広まった謝罪方法。私は溜め息一つ吐く。


「許す!!」


 そして、大きく声を張り上げて言い放った。


「………いいかの? そんなに簡単で?」


 ヨウコ嬢はゆっくり顔を上げ驚いた表情をする。そりゃ死闘だった。しかし生きている。


「つべこべ言わない。こう言うのはすっぱり許せば丸く収まるの!! 結果良ければ全てよし。さぁ立って手伝って背中の火傷後に薬が濡れないのよ」


 私は布を取り背中を見せる。


「ふふ、そうじゃの………流石、一度は玉座に座った者じゃの」


「関係ないよ。早く~」


「わかったぞえ~。ん? 背中に傷はないのぉ」


「えっ? そうなの?」


 私は「やったぁ」と思い喜んだ。


「そうじゃ、綺麗なもんじゃ」


「うーむ、そういえば戦いで背後を許してないね。トキヤ以外で背後見せてない」


「……まぁ、強かったのじゃ。手加減されてもの~。やっと空にある、あの光は消えたのじゃ」


「そっか。良かった~眩しかったもんね。エリックも大丈夫だった?」


「そうじゃの。心身疲れておったが………憑き物は取れたの。あの鬼気迫る感じは無くなったの」


「良かったね」


「………ありがとうなのじゃ。謝るよりも感謝したかったのじゃ。幾度、我の恋路を救ってくれての」


「御安い御用よ!! だって!!」


 私は振り替えってしたり顔で言い放つ。


「友達!! そして殴りあった親友でしょ‼」


「………ふふ、はははは!! 殴りあった親友は男同士の話じゃぞ!!」


「ふふ、別に男の専門じゃないでしょ? ごめん、そこの濡れたタオル取って」


「ん?」


 私は水の入った木桶を指を差す。


「風呂とか水浴びはまだ染みるから」


「背中を拭いてあげるのじゃ」


「うん」


 背後で水を絞る音が聞こえる。


ピトッ


「ひゃ!? つめた!!」


「おっと、すまぬ」


「大丈夫、最初は驚いたけど慣れた」


「にしても………肌綺麗じゃ。手入れしてるのかの?」


「冒険者だからする暇ないかな? でも、傷は全力で癒してる。好きな人の前では綺麗な体でいたいから」


「………ごめんね。全力で戦ってしもうて」


「許したのに‼ もう蒸し返さない!!」


「ごめんなさい」


 「すいません」とは言わず本当に申し訳なさそうに喋る。


「謝りすぎ!! もういいって~笑顔だよ。好きなひとにはそんな顔しないでしょ?」


「そうじゃの!! 湿気た面はよろしくないの!!」


「そうそう!!」


「………にしても本当に肌綺麗じゃの」


「ヨウコも綺麗だと思う」


「我のは手入れを欠かしておらんぞ。特に尻尾はの~9本あるし、すぐに埃を巻き取ってしまうんじゃ」


「大変そう。尻尾があると」


「大変じゃぞ、一本一本神経が通っておっての~変な当たり方すると痛いんじゃ」


「触ってもいい?」


「いいのじゃが? 根本は止めてくれの」


「はーい」


 私は振り向いて背後に回って撫でる。ツルツルした毛。しかしふかふかで柔らかい。狐の変化のときのあの尻尾はもっと凄いのだろうと予想。触ってみたい。


「変化出来る?」


「今は無理じゃ。声は聞こえぬ故、力を蓄えなくちゃならん。ん…………ね、根本は止めるのじゃ!! あふぅ………」


「変な所が性感体だね?」


「最近知ったのじゃ。ほら、離せ!!」


「はーい。で、声が聞こえないとは?」


「そうじゃの、女神じゃったか。囁きが聞こえないの………変わりに優しい声は聞こえたのじゃ」


「ん? どんな?」


「『ごめん、そして。これからはお幸せに』じゃ」


「それって………もしかして。こんな声?」


 私は今までに囁かれた声を全く同じように表現をする。どちらかと言えば私に似た声質。可愛い声の主。


「そうじゃ。ネフィア似のその声じゃ………やっぱり女神かの? 居るんじゃの?」


「居ますよ。見てくださってます。私たちが愛を持ち続けてるかぎり」


「ふむ、わかった。じゃぁ…………ネフィア。力をくれた女神は一体何者?」


「…………?」


「我は始めに聞いた声と今の声は全然違うのじゃ………お主の囁く者と我の囁く者は違うのじゃ」


「ん?」


 少しだけ。キナ臭い話になってきた。


「そしての、囁くのは魔王を殺せじゃ」


「………なんですかね?」


「わからんのじゃが。もう聞こえないのじゃ………でも気を付けるのじゃ」


「わかった。肝に命じる」


「………最後にの」


「うん」


「その、胸揉ましてくれぬかの? どんな感じなのじゃ?」


「あっ!! 私もヨウコの揉んでみたい!!」


 そこからは二人で胸の感触を味わった。ヨウコの胸はちょっと垂れ気味だったが手を包みような柔らかさだった。私の張りの強い胸とは違った感触だった。





「ふぁあ~眠い。戦闘後からそのまま夜通しじゃぁ………やはりきついか。昔なら2、3日は戦えたがな」


ガチャ


 ボーッとする頭を押さえながら借りている寝室へ足を運ぶ。戦後処理っというよりか。お金の用意とこれからの事を話し合い。情報交換も行った。体が重いが、やることをやらなければいけない。やっと……終わったので後は寝るだけだ。


「ふぁ~ネフィア。遅くなってすまん………色々あって……………」


「「!?」」


 目に前でヨウコ嬢とネフィアが胸を揉み合っていた。ネフィアの手いっぱいでも掴みきれない程に大きいのが分かり、逆にネフィアの胸はしっかりと掌いっぱいに収まっている。元気であれば喜べるほどの光景だが今は眠気が強く反応できない。一体何があってそうなったのかわからなかったが、理由だけは納得していた。


「とうとう女を襲ったかネフィア。すまんが外でやってくれ眠いんだ」


「えっ!? 違うよ!!」


「大丈夫、お前は元男でもあるんだ。襲ったって不思議じゃない………ふぁ~ねむ。エリックも帰って来て寝てるだろうな。エリックも寝てるだろうから別の部屋で盛ってくれ。エリックには秘密にしといてあげるから」


「と、トキヤ!! 誤解!! わ、わたしは女だから女同士じゃ無理だよ!! それより欲情しないの!?」


「ごめん。睡魔が強い………飲みすぎて頭が痛い」


「え、えっと!! そうじゃの!! 我は帰るのじゃ!!」


 そそくさと服を着て、飛び出すように部屋を出る。焦った姿はなんとも可愛らしかった。別に気にしない。それよりも睡魔が強く。


 俺はベットに倒れるように体を横にする。


「と、トキヤ!! 話を聞いて!!」


「………すまん。起きてから話し聞くわ………おやすみ」


 ネフィアが何かを叫んでるが自分は魔法で音を遮り。安眠するのだった。





「おはようトキヤ」


「お、おう?」


 目を覚まし体を起こす。疲れは一切取れていないが眠気はない。少し首を傾げる。


「まだ、数時間も寝ている気分じゃない? 今さっき寝たばっかりですぐに目が覚めてしまった。いや、あんだけ眠かったんだそうそう起きれる筈はない…………っとなると」


「……………ぴー」


「口笛吹けてない。何した………いやこれは夢か」


「無防備だからスッと入れたんだよね‼ 操ってこの部屋を出したの」


「………まぁ起こした訳じゃないし。いいか」


 一応は寝ている。


「そ、そう!! トキヤ、勘違いだからね!! 私は襲ってないから!!」


「…………俺の目には行為に走る一歩手前だった気がするが?」


「違うよ!! 信じて!! 私は、えっと………そのぉ………つ、つ………えっと………女の子だから!! 女の子だからね!!」


 真っ赤になりながらネフィアが抗議する。下ネタを思い付いたのだろうが言える勇気は出なかったようだ。かわいい。


「わかったから……っで何であんなことに?」


「えっと、私の胸と他の人の胸を比較したくて………頼んだの。あっ!! ヨウコの胸ね!! 大きくてすっごい柔らかかった!! だから、ちょっと垂れちゃいそう」


「いや、カミングアウトしなくていい……死闘の後に変な理由で仲良くなるんだな……すごいよ、お前」


「でも、女の子同士だから触りっこ出来たんだよね」


「本当に凄いなそこも……元男って知って触らせるんだから」


 ある意味、口に出すより勇気がいるだろうに。しかし、女子だけになると気が大きくなるのかも知れない。


「それだけ今の私は女の子なんですけど~もう元男とか元男とか、ええっとしつこいです!! あれもついてないの!! 立派な女なの!! 今は穴なの!! 昔は昔!! 今の私を見て!! ほら!!」


 スカートを捲って確認させようとしてくる。


「だぁあああ!! スカート捲るな!! 知ってるから知ってるからな!!」


「本当に~なんか最近よく言う」


「誰がお前を女にしたんだよ」


「……………凄い説得力」


 うんうん頷きながら納得するネフィア。はい、かわいい。


「ふぅ、まぁそう言うことだ。女の前に家族だけどな」


「か、家族?………ふふ、へへ~そうだよね家族だよね。ああ、本当に夫婦なんだぁ~今でも現実味がなくって夢みたい」


「今は夢だけど?」


「起きても、夫婦ですぅ~へへへ」


 自分の体に擦り寄せてくる。


「ねぇ、お話し長かったね」


「長かった。一応、教会は現状維持の徹底しこの都市の勢力争いを静閑するだってな。あと、エリックと俺でデーモン倒したから報酬、山分けになり。仕事も終わったから自由だ。明後日でも都市を出よう」


「うん。わかった」


「ああ、後。エリックもついて来る。パレードだってさ」


「一応行くんだね」


「ああ、それと一緒に教会の主も呼ばれてるから行くんだってさ。有力者は集まり出してるな」


「………ちょっと道草し過ぎたかな。ヘルカイトさん元気かな?」


「まぁ帰っての楽しみだな」


「………そうだね。ねぇトキヤ~淫夢見ない?」


「夢でいいのか?」


「夢も現実、断るなら。キスを受け入れないで」


「…………」


 俺は目を閉じてネフィアの朱を奪うのだった。






 仮眠を取り起きた後に私は予備の仮面を付ける。そして、仕事の段取りを終わらせて自室へ戻ってきた。


「エリック。仮面を何故つけるのかの?」


「オペラ座の怪人として。最後まで演じますよ。パレードは終わりませんでした」


「魔王城にいくのじゃな」


「ええ、見たくないですか? 姫様の実演を………魔王と言う地位を捨てる瞬間を。いい台本を作るためにも欠かせませんよ?」


「台本、書くのかの?」


「ええ、演じるのはある講演を最後に辞めようと思っております」


「やめてどうするのじゃ?」


「………それはですね。ヨウコ嬢!! 私と共に理由を聞かずついてきてくれませんか‼」


「…………ふむ。いいじゃろ。ここより地獄はないじゃろう。だから、何処へでもついていきます」


「ありがとう!! では、幕をあげましょう‼ あなたを幸せにする演目を!!」


「…………うれしいのじゃ………ずっと待ってたのじゃ。心からの言葉を。うぅう………すまん、ちょっと胸貸して」


「いいですよ。昨日は私が。今日はあなたが泣き虫になる番ですか?」


「そうじゃの………でも。嬉し、涙じゃの」


 私は、新しく仮面を被る。恥ずかしさを隠すため。そしてそれ以上に仮面の有無が彼女の愛を左右するものではない事を知っている。知り得た。


「姫様、一つ…………甘い口づけはいかがでしょうか?」


「いただきましょう。満足させてくださいね」


「もちろん」


 その日は、深く二人で絡み合った。互いを求めるように貪欲に、深く、甘く。劇場より激しく。





 








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