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魔王様、演技する..


 九尾のヨウコである私は冒険者のトキヤ殿について行き。宿屋の狭い一室に連れてこられる。大きいベットが一つあり、そこに腰かけ待つこと1時間。ネフィアさんが現れた。


「おまたせ、金額出来高だってね」


「どうやって聞いていたのじゃ? 昼間もそうじゃが…………あまりに耳がいい。魔法と言っていたが恐ろしい。どこまでなのじゃ? 聞き取れるのは?」


「そうだね……都市の中でトキヤの話し声を聞き取れるほどいいと思っていればいいよ。浮気できないねトキヤ」


「そうじゃったのか………」


 とんだ冒険者を見つけたものだ。とくに異常と思える執着心は見習わないといけない。


「じゃぁ、話の続きだが。明日はこいつが表彰されるわけか?」


「詳しく聞けば……予定としては特別賞を用意するらしいのじゃ」


「驚きですね? そんなに良いものでしたか?」


 煽りに聞こえそうなのだが。演技せず本当にそう思っているのだろう。そう、彼女は持つ者であり。ただ、愛を語っただけだろうと感じておる。それが……才能と言うのだ。


「私よりすばらしい。だから頼める。オペラ座の怪人と何度か講演し糸口を見つけてほしいのじゃ。オペラ座の怪人に惚れない子が必要なのじゃ」


「仮面を剥がす事は難しいと思うが………」


「そうそう」


「難しいから頼むのじゃ」


「それもそうか。俺はどうしようか?」


「私がやっていることを遠くから見てて」


「わかった。まぁ追々工夫しよう」


「よし、決まりじゃの………」


 案外あっさり依頼を受けてくれたのじゃ。


「一つよろしいでしょうか?」


「ん? なんじゃい?」


「何故、彼を好きに? 彼は飄々とし……まるで額縁の外を見ているような達観した視点です。他の女性は彼を好意を向ける理由は皆が簡単な表面的な理由です。私ならお断りですね」


 私はネフィアがトキヤをしっかり内面を見ていることに驚いてしまう。これが持っている人の余裕なのだろう。外面では靡かない程に。


「長くなるがワシはあやつに助けられたのじゃ……」


「助けられた?」


「そうじゃ、逃げていた。東の国では九尾は政権を脅かす存在として迫害されたのじゃ。稲荷の一族に偽装し尻尾を切り落とすことも出来たが、結局バレたら殺される。だから、ここまで逃げてきたのじゃ。わしらは稲荷族に負け。捨てられたのじゃな」


 過去の苦労を思い浮かぶと今は幸せだろう。私以外の種族はどうなったか不明である。


「助けられたのはその時に?」


「そうじゃ。売春や踊り子で生計をたてながらここまで逃げてきたのじゃが……東国の旅行者に九尾を知られての………なんの恨みか忍者に襲われたんじゃ」


「にんじゃ?」


「ああ、東の国にいるアサシンだよ。ネフィア」


「よく、生きてたね? トキヤだったら絶対死んでる」


 ネフィアの肩をトキヤが叩き。首を振っていた。私はその否定が謙遜だと感じている。


 要は暗殺も出来ると言うことだろう。腕がたつのだ。


「そりゃー腐っても九尾一族じゃ。狐火で返り討ち……………じゃったらよかったがのじゃが死にかけた。そこで拾ったのはあいつじゃった。手厚く看病してくれたのじゃ」


 懐かしむ私。あの時の腕の中での暖かさは覚えている。


「ああ、なるほど。好意をその時に」


 なるほどとネフィアはポン手をっと叩く。


「そうじゃ。もう、十数年前の話じゃ。ワシがまだ幼い子じゃったときのな。そんとき話をした。生きているだけで殺されたりすることに悲しいことを喋った筈じゃ。その後は本当に優しかったの~」


 少女だった私は彼に育てられたのだ。


「それで………どんどん好きに?」


「当たり前じゃ。看病し、しかも格好良かった。幼子じゃが大人の女性扱いしてくれる。あやつは生粋の女たらしじゃ………すぐにコロっと惚れたの。演劇でも魅せられ。気付けば自分も憧れ。褒められたい一心で歌を努力した。奴も教えてくれた色々………歌をとくに」


「あっわかる!! 褒められたいよね!! トキヤ!! もっと褒めていいのよ?」


「褒めろと言わんばかりにドヤ顔やめたらな……簡単に褒めてやるよ」


「天の邪鬼め」


 ひねくれた人なのかもしれない。トキヤと言う冒険者は。


「まぁ、そういう事もあってあいつの一番弟子で今はそこそこの女優で通っておるの。いつの間にか舞台の上で演劇の姫様役等で歌っている。それからかの? 私に対して東の国から来る旅行者に何も言われず。逆に握手や色紙を書いてくれ言われるとようになったのは。わざわざ遠いところから来るんじゃで」


 忍者が諦めたのも居る中で足を洗った者も都市にいた。気付けば……多くの人に望まれる存在になっていた。


「そこそこの女優? 私には観客席であなたを見て喜んでた人もいましたよ?」


「そうかの? そうかの? ふふふ………ありがたい事じゃ。嬉しいんじゃ」


 照れてしまう私。認めて貰っている気がする。辛くない居場所が出来て幸せを噛み締めている実感があった。


「ネフィア。俺たちの事を話してもいいか?」


「ん?………んん~トキヤに任せる」


「わかった。依頼人には信用して貰うために身分を明かそう」


 二人が仮面を外す。彼女の腰に手を回す行為はなれた手つきであり、絵になる姿だった。寄り添う二人に憧れてしまう。彼とこうなれたらどれだけ幸せだろうかと。


「仲がよいのぉー。で、何処の姫様と従者じゃ?」


「私の名前は………名はネファリウスだった。現放逐魔王です」


「俺の名前は、そのままだが。元黒騎士で元勇者だ」


「お、おぬしら!? あの噂は本当じゃったのか!?」


 私は立ち上がってまじまじと顔を覗く。吃驚し、嘘かと疑う。


「本当です」


「まぁ依頼人の判断かな。信じるかは」


 確かに嘘に聞こえるかもしれないが。ここで嘘をついても何もないし、彼らは魔王と勇者であることに納得できる部分はある。


 落ち着き考えれば……多くの理由で納得できよう。


「…………信じる。無礼をすいません」


「気にしないでそのままの口調でいいですよ‼ 魔法と言っても摂政トレインが実質魔王ですし。私は何もないですから」


「ありがたいの………本当に依頼いいのかい?」


「いいですよ‼ 私も演劇に興味が出ました。ヨウコさんのその輝く瞳に演劇の良さが見える気がしました。彼の誘い方より何倍も魅力です」


「へへ、照れるの………それより。明日から台本持って練習しようぞ。あいつをハメるために」


「あっはい。よろしくお願いします。台本って始めて見ますね‼ わくわくします!!」


「一次一句間違えずに頑張るんじゃぞ」


「魔法でズルします。間違わないようにトキヤが色々工夫してくださいね」


「まぁ台本を読み上げ、風で伝えるだけでいいな」


「はい」


 私は自分の運の良さに感謝する。彼等ならエリックをしっかり調査が出来るだろう。早く本当の彼を知りたいという願いが叶うと喜んだ。






 次の日、私は早朝にエリックに会いに行く。あいつの家はころころ変わるが私には教えてくれるため……わかるのだ。オペラ座の管理人や座長の連絡の橋渡しでもある。エリックは偽名だったのを最近知った。本名な何だろうか。


ドンッドンッ


「エリック、いる?」


ガチャ


「おお、これはこれは。朝から麗しいお姫様直々のお見送りですね。おはようございます。ヨウコお嬢様」


「そんなことよりも話があるの単刀直入に言うのじゃ」


「はい、なんでしょうか?」


「今日、ネフィア・ネロリリスが現れる。その2週間後に講演をします。よろしい?」


「おお、何とも素晴らしい報せでしょうか‼ しかし………大丈夫なのでしょうか?」


「2週間後。あなたは午前の講演を。私たちは午後の講演を行うのじゃ。教えるのは私が行うのじゃ心配はなかろう?」


「わかりました。2週間後ですね。題目も軽い物にしましょうか………で、姫役はされるのでしょう?」


「いいえ。他の女優を頼って」


「わかりました。てっきり姫様をおやりになると思ってたのですが?」


 白々と思ったが……気にしない。我慢の時だ。


「午後で忙しいのじゃきっと」


「それは残念ですね」


「…………思ってないくせに」


「何をおっしゃいます。あなた様の演技は熱を持っている素晴らしい物です。他の誰にもないリアルさがいいのです‼」


「………それは私が本当にあなたを愛しているから」


「ははは、それはそれは。愛してますよ。お姫様」


 彼は呼び捨てにしない。絶対に呼び捨てにしない。だからわかる。想いが込もっていない事を。だからこそ……その仮面を剥いでやろうと意気込む。


「………はぁ~まぁいいのじゃ。帰るから、またな」


「ええ、今度一緒に上がりましょう。オペラ座で愛を語り合いましょう」


「ええ、語り合いましょう」


 毒は用意した。さぁ、オペラ座の怪人。どうなるかを見せてみなさい。




 オペラ座の壇上に表彰の発表で集められた女性たちが目つぶり。今か今かと受賞されるのを待つ。その姿にちょっとわかってしまっているので馴染めない私は忍び込んでいる夫に声を伝える。


「皆、真剣だよ~うぅ~」


「別にお前は特別賞なんだから関係ないだろ」


「だってぇ~皆。努力でここへ上がってるのに………私なんか」


「昔から、一人で歌ったり踊って遊んだりしてたんだ。努力してるしてる」


「…………遊んだりだけで。申し訳ない」


「まぁあれだ。小さいとき皆は自由だったがお前は自由じゃなかった。その不運のツケで今があるんだよ」


「……………そっか」


「胸を張れ。そこは劇場で一番明るい場所。暗い顔は他に迷惑だ。努力したことを尊敬するなら。お前が胸を張って努力をした風にすればいい。皆はお前を知らない。夢を潰さないのも必要だ」


 トキヤの熱い声援に顔を上げる。


「わかった。顔を上げる」


 顔を上げると司会者と目が合った。ちょっとビックリするが彼は他の女性を指名して劇場が沸き立つ。選ばれた獣人の女性は泣き崩れ、他の人は嘆息だったり悔し涙を流した。


 自分は握り拳を強く閉め。彼らの顔を感情を努力を尊敬し。心の奥で覚えておく。絶対に、彼らの行為を無駄にしない。上に立つ者は必ず下に皆がいるのだ。1番の後ろに何人も控えている。


 パッと出の私がここに立っている理由を演技する。絶対に………彼女たちを悲しませない。


「ええ、実は。今回、特別賞としてある1名にオペラ座の怪人直々に賞が贈られます」


 劇場がざわつく。そして皆が口々に話し合い。私に視線を投げ掛ける。ばれてーら。


「ネフィア・ネロリリス嬢、前へ」


「はい」


 劇場がシーンと静かになる。胸を張り、ゆっくりと歩き。司会者の前へ立ち、スカートをたくしあげて一礼をする。


「ネフィア・ネロリリス。今、ここに」


「では、オペラ座の怪人から一言」


「今回、私が用意させた賞を受け取りに来ていただき誠に感謝をします。これから、あなたが演じる姫がどのようなものなのか興味があり。これから、同じ俳優として頑張って行きましょう」


「はい」


 お辞儀をして花束をいただく。赤い薔薇。あまい香りと拍手の音が私を包む。そして、劇場の脇からヨウコ嬢が現れ私の近くへ歩く。観客が何があるのかと面白がった。


「宣言します。彼女の初演を2週間後の今日に行います!!」


 観客が叫びだす。驚きを口に出す。声を出しながら何事かと話し出すのだ。


「私が教え!! 2週間後に会いましょう!! さぁ………来なさい」


「はい」


 ヨウコ嬢が私を連れて荒れに荒れた声が飛び交う劇場を後にした。


 このあとの全ての会食等は不参加であり。私は宿屋に帰る。


 そして……その日、都市はネフィア・ネロリリスの名前で持ちきりになる。そう、一部の人にはその名前が偽名だと知る者たちを驚かすまでに。





 宿屋の一室で本を広げる。


「ねぇ、ヨウコさん。これ………なに?」


 どう見ても恋愛劇。


「台本じゃ。どっちがええ?」


「違う、そうじゃないけど…………あ~う~あ~う~吸血鬼にしよ」


「よかろう、ワシは無知の天然姫を演じればええのぉ」


「ネフィア。お前の方が姫っぽいぞ?」


「トキヤ。私が元男だった事知ってるなら何とかなるよ」


「いや、あのな……ネフィア……」


 トキヤが不満顔だ。そう……無理だと思っている。ヨウコもそれがわかったのか聞いてくる。


「ネフィア。無理せんでもええと思うのじゃが。わしゃ~どっちでも演じることができる。やったことがあるからの~」


「百合ものじゃん……」


 どっちも役が女性である。


「そうじゃ!! じゃが非常に好まれてる分野じゃ」


「ああ~婬魔だから察した………皆、好きだね」


「好きじゃな」


 内容は非常に甘い。昔は片方は男だったキャラだったが。時代により台本が変わり……好みの変異で中身が変わってしまったらしい。人々の業が深い。変態。


「でも、面白いね」


「じゃろ? なりきろうぞ」


「はーい」


「ネフィア、ヨウコ嬢。俺は外で見回ってくる。ネフィア・ネロリリスは裏ではネファリウスってバレてるし。いい賞金首だからな」


「わかった………トキヤ見回りだけ?」


「ああ、見回ってくるだけ」


 彼は部屋から出る。きっと、色々と手を回すのだろう。私にはわからない事だけど応援するために頑張ろうと思う。


「さぁ!! ヨウコさん!! 演技教えてね!!」


「ああ!! 厳しくいくのじゃ!!」


 皆が頑張ってきたことを2週間で覚えるつもりである。無理かもしれないがやってから後悔しようと思うのだった。





 俺は宿屋を出た後。一人で酒場を廻る事にする。噂の情報収集と情報屋から情報の売買をしようと思う。それとは別にのんびり歩きながら思考に耽る。


「2週間で物にするかぁ………」


 出来るか出来ないかで言えば出来る。ネフィアは才能と言ったが才能ともうひとつ天性の物がある気がした。


「種族。婬魔」


 婬魔は多種多様に変化をする種族。変化をし異性を虜にするのが得意な種族だ。そして、調べた妖狐と言う種族も同じ理由で得意なはずだ。


「あー、昔に聞いたことがあるな。妲己っと言う女が九尾だったな」


 過去、一緒になった鋼竜の知識で思い出す。九尾が忌み嫌われる理由に妲己と言う女が王の寵愛を受け国を衰退させるほどお金を使い込んだ話は有名である。


 あれも誘惑が得意な種族だ。婬魔と一緒であり。劇場は観客を誘惑する場所とするならこれ以上に天性の職業はないだろう。だからこそ2週間後で物になるだろう。誘惑が得意なのだから。


「んん………ひとつの都市を滅ぼしたときは妲己は女王様だったな。人間、皆を捧げ物で食った記憶が………んん?」


 自分はそんな記憶はないがそんな記憶があり、意識が変な感じになる。


「竜の時は都市ばっか壊して遊んでいた屑なのに………今では愛妻家か………今の方が楽しいがな…………変な気分だ」


 混ざり歪むが皆がネフィアを護る事が一致してるため自我は崩壊せずにいる。人間を辞めるために魂をまぜ混んだ結果だった。


「ええっと落ち着いた。情報屋を探そう」


 自分はゆっくり都市に溶け込む。あいつは言った。四天王は自分が倒すと。それ以外は発言がない。と言うことは他は狩り取ってもいいと言う解釈だ。


「何人が釣れるかな」


 口元を歪ませて歩く。あいつの敵を狩る事の喜びを噛み締めながら。


 




「ネファリウスが見つかりました」


「………そうか。何処だ?」


「トレインさま。オペラハウスです」


「ほう。治外法権都市か」


「過去に攻め入ったとき、ゴブリンに敗北しましたね」


「先代の時の遠い過去だ。で、そこで何を?」


「3日後。公演するそうです」


「………公演?」


「噂では素晴らしい歌声を披露し。抜擢されたと」


「………………私の常識外を易々と越えていくな」


「ええ。如何致しましょうか?」


「お前が行ってこい。故郷だろ」


「畏まりました。ネファリウスの首をお持ちいたします」


「失敗、ばっかりだったが今回はうまく行けるな?」


「はい」


「いい報告を待っている」


「はい、行って参ります」


「…………魔王ネファリウス。お前の狙いはなんなんだ? なんなんだ? わからぬ」


 胃薬はまだ必要そうだ。










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