表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
732/732

烏の鳥葬


 その日、俺はその戦闘機に乗った。いや、戦闘機と言うよりも兵器。いや、もう簡単に言おう。爆弾に乗った。


 天使に護られながら。輸送機に乗って、竜の棲む空島へ向けて移動する。泣きながら見送られることもなく。ただ名誉と言われた。


 そのまま乗るだけでいい。そんな任務だった。


 片道切符が切られた瞬間にスイッチを押し、操縦桿を強く握る。


 打ち出された爆弾を抱きながら。目の前に居る竜を避けていく中で「青い空」を見た。


 綺麗な空に多くの爆弾が竜を落とす中で目的の島を視認し、願わくば来世で「好きなだけ空が見れる人生」を思いながら。






「機体限界空中分解する前にハッチ開ける」「骨董品が!! 仕方ない。落とす」「そのザーザー」「無線ザー害」「準備しろ!!」「落ちる!!」「無理にでも飛ばせ!!」


 声が途切れ途切れで聞こえづらくなる。だが、変わりに焦る声が聞こえ、私は静かにそれに耳を澄ます。操縦桿に手を乗せて知りもしない操作方法がわかる。雑音が消えた中で声が重なった。幻聴が聞こえる。


「「「「あとは頼んだ行って来い!!」」」」


「ありがとう」


 言葉に答えた瞬間に切り離され打ち出される感覚がある。スイッチを押し、ロケットに火を灯す。その瞬間に真っすぐ真っすぐ飛んでいき、目標がどこかを勘で感じ取った。


 背後の機体は燃えて分解しただろう。もう、ここが異国なのだとも空気で感じる。魔法を全く感じない旧時代の空気感を感じる。夜空の中で突き抜ける火花を散らす機体が揺れる。


「見えた。あそこに『居る』」


 敵島を見つけた。敵島の中枢を見定める。覚えのない「怒り」が「覚悟」が「悲しみ」が背中を押す。死ぬわけじゃないのに。死ぬような感覚のあと。私は空に浮く島に突っ込むのだった。





 帝の隣で修羅の猛攻をトラップや、自動制御機器で耐える中。夜になり、時間稼ぎも危うくなる。


 扉の向こうに「修羅の部隊」が展開し、扉を破ろうと機械を用意していた。そんな映像の中に轟音が響く。爆弾が爆発したような轟音と振動に帝が画面を操作しだして多くの生き残ったカメラで何かを見つける。


 爆発して夜空が見える空間に翼の卵が転がってきたのだ。翼の卵がゆっくりと開き中の荷物を投げ捨て、右手に緑色の剣を用意した。


 扉の前の部隊も、全ての部隊も動きを止めては爆発事故の所へ向いた。そのまま移動を始め、刀や銃を持って援軍に来た「魔王」に向かう。


 銃弾を白い翼が弾き、そのまま兵士を薙ぎ払い。


 緑色の聖剣で刀を振る腕を切り落とし、廊下に白い羽根を散らしながらもただただこっちに向かって歩き出す。


「魔王ネフィア」


 だれか声を出したか、わからない。だが皆が声に出した。声に出さざる得なかった。奪った刀で、銃で残忍に周りの環境を変える。そんな中で一人の兵士が魔王ネフィアの前に立ちはだかる。


 そのボロボロの体は修羅の顔が張り付いている。


「修羅」「魔王」


 そして、名を呼びあった瞬間。ネフィアは翼でガードする。銃弾を防いでいた翼は切り裂かれて散り散りになるが、ネフィアは剣を構えて居らず。単発の大口径のデリンジャーを両手で構えていた。自分の羽根を目くらましにし、引き金を引く。大口径から放たれる緑色の銃弾に修羅が刀で受けたが緑色の粒子になり、修羅の体を「消し飛ばした」。


 散弾。散弾だった。緑色の粒子の散弾。それが撃ち込まれたのだ。修羅だった物はアンドロイドらしくそのまま金属片となる。


 一瞬で決着し、修羅の部隊が再度ネフィアに襲うが。今度は「時間稼ぎ」のような動きになる。


 帝を護るドアへ、丸鋸が用意されドアを貫通する。しかし、映像はネフィアがドアの前に来るのが見え。銃で丸鋸の触る男の頭を吹き飛ばす。「やれやれ」と声が聞こえたが、それはドア越しの男のセリフだろう。


「来るのが早すぎる。修羅は『戦うな』、言ってたがやりたいね。でも修羅が『帰って来い』とうるさい。だからすまないな。帰るよ」


 一目の声と共に残ったクローンがネフィアに向かって一斉に飛びかかる。ネフィアが翼で振り払おうとした瞬間にクローンが爆発し弾け飛んだ。自爆特攻の動きに元々はそう言うために用意されたクローンなのがわかり胸糞悪くなった。


「帝を抱きつかせる作戦だったようですね。ですが……魔王には火力低いようで」


 ネフィアは無傷だった。俺はドアを叩き声を出す。聞こえているだろう彼女にお願いをする。


「そっちから開けられないか?」


 ドアがドロっと溶け出す。ネフィアの翼が扉を溶解させて帝の前に現れた。


「ネフィア・ネロリリス。参戦いたしました」


 我が魔国の女傑が静かに静かに争いを負わせた。帝はそのまま御礼をのべて手を合わせる。


「早い参戦ありがとうございます。どうしてここが?」


「途中、見失いましたがすごくすごく明るい所が見えたんです。聞けばそこに居ると散った怖い怖い幽霊たちが教えてくれたんです。『ここに突っ込め』とね。気を揉んでましたので安心させてあげてください。怖すぎるんですけどぉ」


 震えるネフィアが指を空に向ける。それはある意味で全員の理解するには十分だった。







「修羅や、修羅や。俺を引かせるたぁなんの意味がある」


「無駄死にを止めただけのことじゃ。非常に好調の魔王は止めあれへんかったじゃろうに。ええとこだったが紙一重で逃げられちまったなぁ」


「あとほんのちょっぴり戦力たらんのはワザとか?」


「負けるつもりじゃぁあらへんかったんじゃよ。武はこちらにあるさかいのぉ」


「初戦偽物の器じゃぁ。本物は仕留められないか。どうする? 防衛するか? 粗削りの野戦向けだぞ」


「どうしたい? 首を落としても首を掴み逃げなきゃ勝てない。心の臓は致命傷になり得ない。魂を壊すには魂がデカすぎる」


「援軍を俺達に負わせ背後から叩かせる。賞金も出すし、個人として無視した結果。遊軍となって脇を突かれるかもしれない。監視は継続。2層3層に降りてくるだろう。鍵を求めに。要は『飛車角』を避けながら先に『王手』すればいい。『熊囲い』を突破される前にな。通達は出した『死ぬか、生き延びるか、逃げるか』選べってな」


「ほぉー賢い賢いのぉ。じゃぁ次は誰かのぉ。2層、土蜘蛛かいなぁ。それとも童子かな」


「それはわからない」


「せやのぉ。やっとおもろいなってきたのぉ。踏ん張りやぁ」


「ばあちゃんもおっ死ぬなよ」


「なーに若いもんには負けはせんよ……なぁ帝よ」


「………そうだな」


 


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ