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黒鳥の夢想

 

 私は悩んでいた。陽国が遠い。回復しきった身体でも遠いのだ。しかも、トキヤが入った瞬間に鎖国政策強化で海空全部封鎖された完全に援護行けない様にしてる。ドラゴンが偵察に行ってくれたが無理だったのだ。あの、デラスティのワイバーンの攻撃も無理だったのでヤバいほど鎖国防衛が固い。内側から動かないと行けない。鍵穴があっても鍵がない。


「なんかない? カスミ」


 夢の中で一人一人に案を聞く中でヤバい人物に頼む。だからこそ、全員に意見を聞いていた中で一人だけヤバ気な提案を提示する。


「宇宙から行けばいいんだよ」


「何かいい案ない? 思いつかないの」


「はい。21のブラックジャック」


「クソゲー。あ、21のブラックジャック」


「クソゲー!! 運ゲー強すぎ。ネフィアさぁ……夢で操作してない? バグるよ確率。それよりも宇宙案聞きなさいよ」


「えー」


 カスミは人工Aiである。いや、人工知能。人になった。機械知能である。ウソもつくし、愚像崇拝するし、ウソも見破る事の出来る過去の遺物から生まれた存在である。一人の男に肩入れしすぎてるヤバい不公平な存在でもある。


「一応、人工知能だから。究極の知を目指した未完成品だから知っている。鎖国政策よりも国って星の大気圏外までは対象にならない。宇宙まで領土なんて確定できないでしょ。だから、宇宙からは穴がある」


 トランプを配り終えて、複数の人工知能がババ抜きを始める。私は一抜けである。既に全て揃った。数枚からで圧倒的な勘ではババを避ける。


「くそ強」


「まぁまぁ。じゃぁ宇宙飛行士になればいいの? アホじゃない?」


「アンティークの移動手段がある。元々、機体を運ぶためのロケットを宇宙に向ければいい。放物線を描いてホールインワン。あとは勘で、運ゲー勝てばいい」


「………」


「わからなかった? 人をロケット先端にくっつけて飛ばす。OK」


「私壊れるよ」


「デラスティ君の速度耐えられるのだから計算しても爆薬乗せたロケットでそのまま一緒に爆発しても生きてるって証明できるけど? 魔力あるうちに全部、羽根と体強化に回したらいいよ。誘導は私がする。衛星久しぶりに動かすから、錆びてなければいいね。まぁ宇宙では錆びないけどねwww、コーティングすっごいから」


 この人工知能。ノリノリである。


「カラスの大事な大事なコレクション。やっぱ飛ばしたいからねぇー。なーに保証書は切れてないよ。いま発行したから。なお保証しないけどね」


「……他に方法ない?」


「時間が大切。腕ぐらい頑張って復活させて。義手でもいいんじゃない。性能いいの作ってるんでしょう」


 私は映像で作戦内容を伝えられる。そして、勝手に動き出した計画の名前がスターダスト。


「殺す気?」


「普通なら死ぬ。カラス、迎えに来たから起きてね。断ると思って先に動いてる」


 私は夢から醒める。ソファーの上で起き上がり、衛兵が呼びに来たときには覚悟した。本気だと。慌てて最近どんどん改修工事が進んでいる港に行くと着陸場に黒い人型が口を開けて待っていた。衛兵含め職員が紙を持って急かす。


「女王陛下、早くしてください。帰港は次が詰まってるんです。順番抜かしなんですよ。サインお願いします」


「あ、ごめんなさい」


 そそくさと人型ゴーレムに乗り込み、浮遊感のあとGを感じて移動を始めたのがわかった。画面にカラスのチャットが飛び。「依頼料金とサイン」とあった。「命の保証なし」の事もあってため息を出してサインする。私が蒸気街で稼いだお金が残っていてよかった。男性の音声が流れる。


「契約成立。やることは知っているな?」


「宇宙飛ばして落下する」


「そうだな。過去の弾道ミサイルを使用する案だったがカスミの点検で無事なのを用意しても、天候不順で発射の見込みが立ってない。別の方法を用意した。悪天候でも飛べる軍機で飛ばし、途中で打ち込む」


「………」


 画面が出される。そこには頑丈そうな機体が映った。そう、鉄板を貼ったようなゴテゴテのゴーレムである。ただし、ゴーレムであるにも関わらずその防御力は異常である事が伺えれられる。ただし、宇宙用だろう飛行機の内部にロケット推進機器とともに備えつけられていた。


「えーと、はい」


「高高度をこいつで打ち上げ、悪天候の雲を突っ切る能力で成層圏近くまで行き、ハッチを外し、ロケット推進機器で機体ごと飛べ。大気圏脱出後にそっからは機体の指示に従い大気圏再突入だ。分かったか?」


「無茶苦茶なのは分かった」


「機体は壊れるが、まぁお前なら大丈夫だろう」


「安心がほしい」


「死んだら全員の人生が終わる。終わらないんだから成功している。カスミの応援だ。『流れ星になれる』だそうだ」


「え、煽ってる?」


「怒りがあるのだから元気だそうだ」


「私を過信しすぎよ。普通死ぬ」


「この世界は普通じゃない。如何に歪んでいるかは世界が知っている。ある程度の物資も一緒に用意した」


「ありがとう。下着も何も用意せず飛び出したから。でも良いの? アンティークをしてたのでしょう?」


「身を捨てた時、多くの事を知った。そして、世界には使われずに終わった機械もある。機会があるんだ。人に使われてこそ。機械だ。それに……」


「それに?」


「青い空を見たい。魔国の空も美しかった」


 画面に映るチャット文字が青く、空の映像が映る。黒い鳥は一羽で空を飛ぶ。





 無事到着。豪雪地帯、永久凍土の最果てにそれは用意されていた。旧人類が残した変異した化け物が蔓延る倉庫を用意してくれた単発のデカいデリンジャーと銃剣で仕留める中で幽霊にビクビクしながら倉庫を練り歩く。


「管理してないじゃん」


 文句を言いながらロックを開けていく。「ゴキブリみたいな物」と言われながらも口を歪ませて亡骸を見つめた。魔物レベルの大きいモンスターがグチャグチャいたのだから文句言う。


「見るだけだからな」


「そうですか……」


 最後の区画を開け、格納庫にたどり着く。非常に不思議なカタチの船に私は違和感を持つ。黒い黒い船がそこには鎮座していた。見たことのある船が。


「飛空艇? なんか? こう、人を横にした形じゃない。完全に船だ。それも『最近』見たことある」


「天使の箱舟と言われた『秘蔵品』だ。製作時期は不明、製造者も不明。だが、構造は『今の飛空艇に近い』存在だ」


「まって!? カスミ居る!!」


 私はカスミを呼ぶと「はーい」と声が聞こえた。感情豊かすぎるAiがただただ正直に言う。


「データロック開錠。魔力データで情報を抜き取ると、製造者は『私』で製作者は『ダークスティール社』。ブラックウィンドウ級一番艦『夜空』。確かに船なら悪天候は突っ切れますね。製造年月日は1年後。これはオーパーツ。虚空から生まれた技術の結晶です」


 データが目の前に開示される。パスワードと手の指紋を求められて私はパスワード「フェザー」を入力した。結果は開錠。そして、船は生き返る。あまりにも大きい船が大きく唸り出す。カラスが映像共に情報をまとめてくれる。


「3段式で行くらしい。先ず、この船で悪天候を切り抜く。雲を越えた瞬間、前面が開き。中にある骨董品が出てくる。その骨董品で宇宙まで行った後に、骨董品が打ち出される。マトリョーシカだなこれ」


「骨董品……」


「安心しろ。兵器だが、火薬は抜いてある」


 映像の名前は『ボムシャトル』『ボムブロッサ厶』と書かれている。ロケットである。ロケットである。


「燃料は全部積んである。いつでもいいようだ」


「はぁ……もう分かった。分かったは」


 物資を背負い、私は歩く。たった一人を送るためにたった一人。私を送るためにバカな物にため息を吐く。船の入り口に入り、誘導灯に導かれると船の中にロケットがついた飛行機があり、飛行機の中には一人用のロケットが入っている。


 その座席に荷物のカバンを投げ入れる。座席の計器類は簡素だし、使い捨てなので無駄な物は省いていた。機銃なんかない、ただただ燃料に火をつけるだけのスイッチと操縦桿しかなく。これがどういった兵器かと思い起こさせる。


「時刻は夜だが。別に気にすることはない。用意できたな。出発する」


 耳元に無慈悲に「点検」するカスミとカラスの声が聞こえ、画面が映し出された。「夜空」は黒い船体に多数のロケットと姿勢安定用のプロペラがついており

、太い黒い胴体からクジラを思い浮かべる。


「魔法保護装置オールグリーン」「姿勢安定魔法オールグリーン」「反重力発動」「耐重力軽減」「ハッチ解放、電磁カタパルトオールグリーン」「レール起動オールグリーン」「ロケットブースター点火」「「起動」」


 画面は船の船体と船の正面を見せてくれる。レールに乗った船が何かの力でグッとしたと思った瞬間に真っすぐ進みレールの上を火花を散らしながら走り、ロケットブースターで加速していく。湾曲したレールが上に向かいそのまま斜めで飛び上がりグングン進んだ。


「キッツ!?」


 耐重力を感じる。あまりにも圧迫される肺に魔法が聞いていないのか疑うがそうじゃない。一瞬で吹雪の中を進み切り裂き、雲を突き抜けて月明かりと夜空が画面に映った。


「夜空ハッチ解放」「ロケット点火した」


 カスミの声に画面が切り替わり、シャトルの正面に変わる。広がる星々に向かって。シャトルのロケットが点火し、飛空艇の正面から打ち出され飛空艇がバラバラになる。


「カウンターマス発動」「物質固定魔法陣発動」


 シャトルの推進力かまるで地面を蹴ったように再加速する。使い捨ての船を使っての再加速であっという間に遠い所までやってくる。大気圏を越えたようで静かな音声が響く。


「起動修正、再突入開始」「重力受入」「耐熱魔法オールグリーン」「突入温度異常なし」


 カスミとカラスの声が響く中で揺れる機体に体を預けながら。思考が流れ込んでくる。


 この機体に乗ってた人々の思い出がチカチカする。そんな中である視線に気がついた。遠い所で私をみている『天使』がただただ見ている気配がしたのだった。







「佐藤こんな夜中になんだ?」


「あれ、見て」


「……見えないが?」


「魔力で強化する」


「あれはー流れ星か?」


「違う。あれは……魔王」


「魔王!? どういうことだ!? 封鎖された筈じゃ!?」


「あれは……ああ、あれは……そっか。突き抜けやがれ『愚かな旧人類』のバカたちの発明」


「佐藤? 泣いてるのか?」


「…………ええ、泣いてる。あの兵器は本当に嫌いよ」






 





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