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日没する処の天子④


 青い海、青い空、今日は快晴であり、快晴故によく見えた。


「見えた、商船だ。海賊の商船護衛の船もある。野郎どもやるぞ」


 大陸から、大陸への商海船。リヴァイア種を避ける海路は海賊達の縄張りが多くある。魔法による海運業は女王の影響で多く生み出される。故に「無法者」も多くなる。


「トキヤ、お前ならどうする?」


「船長、皆に聞けばいいじゃないか」


「聞いているのは『一人』で大丈夫かだ」


「船長、行かせるつもりだろ」


「ああ、そうだ」


 故に海賊も多い。そして、俺たちは海賊を狙う。護衛の船が商船から離れて向かってくるのを見続け追突する瞬間に舵を切り船体を擦りつける。何人かは海に落ちる衝撃で落ちる中で、俺は走り出して大きく敵船に飛び乗る。


 多くのクルー達が武器を持ち俺を睨む中で俺は剣を抜いた。


「さぁ、海に落とそうか」


 剣に風を纏わせて俺はクルーを吹き飛ばし続ける。





 無人島と言うよりも諸島の一つの島に拠点を設けている。海賊からも盗んだ食料。それを貯蔵し、今日の勝利を乾杯する中で俺は肩に乗る赤い鳥に声をかける。


「おまえ、声でないの残念だな。知ってるんだろう俺がなんなのかを」


 俺は無人島に流れ着いた時に名前以外を全て失った。変わった赤い鳥が俺の肩に乗り、何も食わずに居てくれる。


「おうおう、一人でなに飲んでるんだよ。副船長。それとも船長か?」


「ガラフィ、俺は下っ端、副船長の器じゃない」


 ガラフィという船大工のヒゲの大男が日本酒片手に現れる。その日本酒を魔法で冷やしてやりながら悪態をつく。


「いいや、船長にもなれる。風を読み、船を操舵を任せられるんだ。自分の船を持てるぞ」


「だからやめてくれ。俺は記憶を失ってるだけ。絶対に記憶が戻ったら陸に上がらないといけないだろ」


 俺はなにか大切な物を忘れている。


「なんだーまたせてる相手がいるのかぁ?」


「わからないが、一人。金髪の美女が夢で俺に微笑むんだ。あれが誰かはわからないが親しい間ではあるだろう」


「おっ、記憶戻ってきたか。ハハハ、にしても副船長。おめぇの立ち回りさすがだったぜ。おめぇの剣技も魔法も一級。本当に惜しいなぁ」


「すまないな。ずっと船に乗れそうになくて」


 そう、俺は記憶が戻るまでの付き合いなのだ。だが、既に船員では上位に与し、多くの嫌がらせさえ返り討ちにしサメの餌一歩手前まで追い込んだりもした。短い期間での頭角に船長は何かを知っていて黙っている。


「はやいもんで、一ヶ月……戻んねぇな」


「なに、戻らなかったら新しい船と船員で海賊になればいい」


「それも悪くないな」


「そん時は船を作らせてくれ」


「ああ」


 いつかそんな日がこればいいなと思うのだった。






「女王陛下、王配の乗った船が嵐によって座礁した場所で王配の捜索は難航しており……切り上げの相談で参りました」


「……わかったわ。認可します。下がってください」


 衛兵を下げ、私は神妙な顔で話を聞き入れて残念そうな表情をする。そのまま衛兵は去り、私は耳に手を当てる。


「エルフ族長、もっと早く切り上げてもよろしかったのではないかしら?」


 連絡先の男が大きいため息で疲れた声で物を申す。


「世間体です。王配の船が嵐で座礁。捜索隊が結成されてあの海域で活動。まぁ、捜索隊も伝えてますので形だけで、測量と海図の作成がメインです。王配が生きている事を女王陛下から聞かないと……わかりませんでしたからね」


「そうですね。我が子もずっと御乳授乳以外は寝ています。ずっと意識がない状態で……パパについて行ってしまって困ってます」


 魂がない。魂が体に入っていない。そして私は感じる事が出来る。しかし、ここを離れる事はできない。この場所を護るために。


「女王陛下も大人になられた」


「……この子を護る。乳母がくるまでの間ね」


「そうです。その子が未来を紡ぐ子です。すぐに手配しております。少々お待ちを」


 私は我が子の頭を撫でながら、彼の無事を祈る。そして、背中の羽根がざわつく。血の匂い、戦の匂い。


「トラブルメーカーは本人もでしょうに」


 修羅の匂い。






 

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― 新着の感想 ―
2020年に読んで、たまに見に来るところ TS全盛期にたくさんの良作を読んだけど、なぜか印象に強く残っている作品
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