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日没する処の天子②


「ネフィア姉ぇの赤ちゃん。神でも子供できちゃうのみですね」


「悪魔、淫魔です。アンジュちゃん」


 寝ている子をつつく雷武神アンジュ。隣に海泉神ウィンディーネが赤ちゃんを見に来る。


「神でも立派な受肉した赤ちゃんできるのかぁ。アンジュも私も。アンジュも下半身あれでしょ。お盛んでしょ……透けて見えてるぞ。液体」


「ウィン、下品!! 死ね!!」


 アンジュにボコボコにされながらウィンディーネが「私はまだ、いいかな。相手いないし」と言葉を溢して窓の外を見ていた。


「案外すぐにできるかもよ、ウィン」


「試合のが大切。それよりも、それよりも。新生児がこんな場所で病気ならない?」


「病院近いし、疫病神が施してくれてるから。御守りがある」


 疫病神と聞いてアンジュが眉を歪ませる。


「疫病神ぃ。疫病神じゃない。逆に駄目でしょ」


「疫病神の獲物を横取りは出来ないでしょ。わかんないけど、病防止はできてるみたい」


 不思議ではある。


「疫病神がついてるならいいな別に、それよりもなーんか暗殺者が狙ってるらしいね。ネフィア姉」


 どこから出したかバットを肩に出すウィンディーネ。それにアンジュも剣を取り出す。


「ええ、王配狙いなのか……距離を取って事に当たってる。参加したい所だけど、立場とこの子がいて離れられない。2人に依頼出そうかなって。王配の様子見を」


「「暗殺者を倒せばいい」」


「……様子見だけでお願いします」


 戦闘なれば被害しか生まない二人に釘を刺す。そのまま様子見を受け持ってくれた二人に天楽街の金券を渡した。二人共に笑顔で受け入れて財布に挟む。


「じゃぁヨロシク」


「ネフィア姉、おっけー。このまま、おにぎりを包んで様子見しようかアンジュ」


「おにぎり、サンドイッチのが……いや。おにぎりにする。ウィンの好きな具は?」


「納豆」


「やばすぎ、嘘でしょ。食べれるのあれ」


 騒がしく二人は離れる。赤子は全く意に介さず寝続けており、夢を見続けていたのだった。





 小型のショートソードを帯剣し、様子を伺う中で俺は罠に引っかかる。罠と言うには不思議な物で、人払いの魔法陣と言えばわかりやすい。ただ、その魔法陣、技術は全くの未知な物だが。


「お覚悟!!」


 声を発し、相手に緊張を強いる所に刀を持った黒い武装を持った集団に襲われた。その集団は心当たりがあり、その集団名を答える。


「海の先のアサシン。忍者か」


 質問に回答はない。静かに殺そうと毒の塗られた武器を投げつけてくる。手裏剣と言うのだろう。ナイフも独特な形状だ。投げつけてくるのもある。火球など、似た魔法もある。


 だが。だからこそ。得意な分野を知っているからこそ。


「すまん。皆、俺の遊びに付き合ってくれてありがとう」


 一番何が苦手かを知っている。


「王配、体は動きましたか?」


「獲物が物足りない。そう、大剣がない」


 体を風の魔法で消す。音も消す。そして、その場を任せる。俺は逃げる。逃げる。


 そして、逃げた先はギルドの待合室。陽があるところだ。暗殺者は流石にこういう場所は避けるし、人払いも無理だろう。ゆっくり椅子に腰をつけて、衛兵たちに任せる。そして、両隣にヤバい娘が座り、身動きが取れなくなる。


「ネフィア姉ちゃんのお兄さま、こんにちは」


「ネフィア姉のお兄さん。こんにちは」


「……ネフィアの差し金ね。護衛にはちょっと役がデカイ」


「まぁまぁ、この世界の勇者様。不安なんですよ」


「そうそう、アンジュの言う通り」


「なら、もう……安心していいと伝えてくれ。俺に用がある人がここに来る」


 二人の視線が俺の視線と交わり一点を見つめた。飄々とした作業用服装の男がニコニコしながら近寄る。一触即発で狙われている中で近付いて手を上げる。


「視線に気付いていただきありがとうございます。王配がなんで狙われてるか。知りたくないですか?」


「アンジュ、殺る?」


「話を聞こうウィン。ここでは何も出来ない」


「ここのギルド職員ですよ。ギルドカードもあります。これが身分証明です」


 アンジュが手に取り吟味し、本物であることを示した。そのまま椅子を持ってきて対面に座った人間が名前を溢す。


「名をオガサワラ、ヨウキと言う。王配さま」


「海の先の国出身か」


「そうです。だからこそ、暗殺者集団に心当たりがある。てっきり『私が狙われるか?』と思いましたけど違ったようで……同じ境遇の奴に話を聞いてわかった。王配の父親を覚えておいでですか?」


「亡くなった親父は海の国から来た事は知ってる。だが、それが今回関係あるのか?」


「指名手配って制度知ってますよね」


「親父が指名手配犯人だった。そういう事だな」


「そうです。ただ、普通の指名手配ではないです。裏側の住人だけの指名手配だったのです。ツテに聞きました。『千家の抜け忍が見つかったそうだ』とね。昔は国の行き来いが難しかった。今はギルドカードがあればどこへでも行けます。国境開放された結果、情報が海を越えたのです」


「抜け忍とは?」


「非合法盗賊ギルドのアサシンが抜けた者のがわかりやすいですね。なお、盗賊ギルドのように入るも抜けるも自由ではなく。簡単に入る事も出来ず、抜ける事も出来ないルールがある集団がいます。そのルールを破る場合。秘密主義のために……」


「殺すわけか。でも、俺は……いや。そうか『勘違い』したんだな」


 父親に俺は似ている。しかし、調べればすぐにわかるものだ。


「でしょうね。諜報中、見つけてしまった者が報告し、慌てて集めて、下調べせずに襲ったのでしょう。王配だと知っているでしょうかね? 末端構成員が功欲しさにやらかしたのかもしれません。なぜなら異国ですから……下級者でしょう」


「そうか、ありがとう。衛兵にも同じ話をしてやってくれ。抜け忍のオガサワラどの。情報報酬は……」


「ああ、その。よろしければ水神さまにお願いしても」


 お金を取り出そうとしてやめた後に「私に?」とウィンディーネが首を傾げる。


「厚かましいのですが、このボールにサインを……それと『キュウジ君、応援ありがとう』と一筆追加していただければ幸いです。息子がホワイトのファンでして」


「ああ、いいですよ。日頃サインはダメなんですが。息子さんのためなら」


「ありがとうございます。今日の試合もよろしくお願いします」


 俗世にまみれた目の前の男に俺はため息を吐く。


「ここで父親の尻拭いになるなんて思わなかった」


「私も別組織の抜け忍で、いつ来るかわからないのに怯えて生活してましたのでわかります。ですが、それも時代なんでしょうね。大体的に発表すべきです。死んでいる事も」


「一番嫌な方法だな。過失を見せつけるわけか」


「嫌どころか……宣戦布告ですよ」


「わかった。ギルドで広報たのむよ」


 俺はため息だけを吐いて、立ち上がりネフィアの元へ戻る。耳元に「制圧しました」の報告を受けながら。





 暗殺未遂事件から数十日たったある日。ネフィアが赤子を抱き、俺は対面のソファーで眺めていた時だった。ダークエルフ族長が直接に一通の手紙が届けられる。異国の手紙であり、中身は閲覧済で封印が解けている。上質な紙に異国の匂いが染み付き、綺麗な達筆の文字に違和感を覚えながらも送り主に驚いた。


 海を越えた国の王からである故に。





 
















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