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日没する処の天子①


 私が起きた的には全てが終わっていた。反女王派閥の「流産」の願いを夢で弾き返し、逆に悪夢を見せ続け逆襲。防衛していた結果。普通に私が勝った。


 起きた瞬間は痛みはなく医者の診断後、無事の判断。そのままトキヤを呼んでくれるそうだ。


 病院の人型用の個室病室に監禁されたまま、籠に寝ている王子を見て安心しながら待つこと数時間。慌てて顔を出したトキヤが私の顔を覗き込む。


「ネフィア起きたか……大丈夫か?」


「大丈夫、かわいい王子さまも大丈夫みたいだし」


 一回も起きずグズらない。こんな子もいるのだろうか。医者がトキヤの肩を叩き「お願いします」と小さく伝え個室は二人きりになる。何か不穏空気を感じ私はため息を付く。


「ゆっくりできない感じ? 後継者消しに来る?」


「いや、そのな。子供の事で。その子。姫だ」


「………」


「……わかった?」


 私は起き上がって寝ている子を見るとたしかにあれがない。


「あれがない!! 穴がある」


「だから。欲しかった子ではないだろうけど」


「ちょっと残念がるのは違う。この子が望まれた結果。受け入れてる事。淫魔だからね」


「王配選びは苦労するだろうな。そうだろう」


「トキヤ……もうそんな話をするんですね」


「何も無かった小娘と女王陛下の実子では違いもする。隠す事もできない。わかる奴にはわかる」


「トキヤは何が言いたいの? ほら、寝てるけど抱き上げたりしないの?」


「落とすの怖い」


「ふーん、で、私には政治の話だけ?」


「………苦手なんだよ。えっと」


「昔ならもっと情熱的だった。ナイフ一本で私を組みして、世界を連れ回って遺伝子を注いだあなたらしくない」


「そうだよな。そうなんだよな。ネフィア」


「はい」


「よく頑張った!! よくやった!! 本当に……かわいい姫だ」


「そう、それ。ありがとうトキヤ。で、我が姫を抱かないの?」


「だから怖いんだって。起こすしな……」


「魔法使えばいい。ほら、起きて」


「……」


 赤子は眼を開きみじろきする。目を開けた瞬間に私は感じた。世界を見渡すように色んな所に顔を動かす。


「見えてる。この子」


「見えてるのか!? えっと、パパだぞ」


 恐れていたのが嘘のようにトキヤは抱きかかえる。指が小さくその指で何かを掴もうと動きトキヤは人差し指を近づけて握らせた。


「……はは。生きてる。満足した。ネフィア任せた」


「……はい」


 私はその子を受け取り、背を向ける人に言葉をかけずに見送った。トキヤに感じたのは感涙を静かに流す事。


「恥ずかしいよね。パパは」


 人一倍泣くのだろう。私にはばからず。手の中の我が子は泣かず天井を見上げ続ける。


「いい子ね。泣いてもいいのよ」


「……」


 本当に静かな子である。本当に我が子である。


「ごめん、ママも泣いていい?」


 腕の子は望まれた子だ。私にもトキヤにも。第二子なんだ。本当に第二子である。





 母子ともに健康、そのためにすぐに退院し、その腕に我が子を持ったまま帰路についた。そして、私は王。そのため、皆の前に現れて「元気」である話をしなくてはいけない。


 専用の発表の会場を用意していただき。各々の地域の代表者に向けて私は挨拶するらしい。会場は驚くべき事に飛空艇の甲板である。そのまま、魔法によって拡大された私の幻影に多くの目が向き、言葉を流す。


「この度、多くの方々の祝福が届きました。この場で感謝を。そして、これからの益々のご発展をお祈りします。それでは国家を歌わせていただきます」


 短めの祝詞をのべて、国家を歌う。


 それを私は王宮で眺めていた。トキヤと共にその光景を眺めつつも解説を求める。


「風魔法?」


「風魔法の幻影だな。声も同じく。ネフィアの挨拶を覚えさせた魔法陣の紙を飛空艇の甲板に貼り付け、そのまま飛空艇で各都市を回る。お前はここに居て安全だ」


「高い技術ですこと」


「野球を遠い地で見たいがための魔法だ。別に問題ない」


 目を疑うべき技術発展。禁術指定の緩和。多くの魔法が生み出され、多くの技術が生み出され、裁判で喧嘩をし、一般人が魔法使い顔負けの魔法を身に着け、魔法使いが武人へと鞍替えもする。


「そして俺も今は別の場所にいる」


「は?」


 私は近くにある、朝食の食器に乗ったスプーンを投げつける。それは空を切り、床に落ちた。


「なんで!?」


「暗殺されそうになってるからな。今、暗殺者と接敵するために動いている。ネフィアを狙っているのか俺だけを狙っているのかわからないが。政敵だ」


「ふぁああああああ、私も出る」


「だめだ。守っておけよ。もしも、俺に何があっても。じゃぁそろそろ、幻影も切るからな」


「待って!!」


 問題無用で彼は幻影を消し、腕の中で寝るだけの子を見つめる。


「……絶対に殺させはしない」


 騒いでも起きない子を見ながら覚悟を新たにするのだった。





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