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姫の誕生


 私自身が女王となった結果。私自身が鳥籠の中で生活を強いられていると思っていた。


 しかし、鳥籠の網は存外、荒く、そして目には見えないほど遠くすぎるゆえに。飛んでいっても見えないほどに遠くにあることがわかる。


 そう、鳥籠は鳥籠の中と思えないほどに広く翼を広げられる。故に「仕事」をお願いされる事もある。


 如何なる種族の抗争に降り立つ仲裁する仕事。私の知らない所で多くの戦争がある。いや、紛争と言っていい。


 基本そんな揉め事は首を突っ込まない。だが、突っ込むのが族長達である。最近で一番大きい紛争が天使の反乱だったが。あれも鎮圧され平穏かと言われれば怪しい話である。


「今回、本当に疲れた」


 そう、話をするのは「飛竜王デラスティ」であり。ワイバーン竜人種である。彼はギルド控えの公僕であり、旅商、旅をしながら物を売る者達が事件を起こしたのを解決させる仕事に戻されていた。揉め事の理由は「旅商」をやめさせるえない発展があり、暴動を起こしたのを鎮圧である。


「私が出るまで頑なに言葉を聞かないのはどうかと思います」


「女王陛下と僕ではそれだけの差があると言うことですよ。感謝感謝」


 旅商が変異する。古いやり方ではない新しい方法で。


「天使狩りしたすぐに反乱に顔を出すのめちゃくちゃしんどかったんだよぉ」


「最速だからね。送りやすいんですよ。で、解決方法はしっかり提示できましたか?」


「旅商の飛空船を外注。申し訳ないけど、やり方を変えざる得ないね」


 飛空船の技術が幅広く公開された。その後はもう、競うように研究開発販売と進み。いつしか……物品を入れる箱が生まれ。神様の見えざる手により箱の大きさが「英魔国共通規格」として大きさが決まった。


「それよりもデラスティちゃん。子供は……元気?」


「さぁ、抱卵預かり所だから。まだわからない。共働きだから構ってられない。女王立託児所に受かったからそこで。それよりも女王陛下のお腹のが心配」


 私は大きくなったお腹に手を当てる。


「まぁ、もう少しでしょう。出産予定日はだいぶ後の方で……」


 撫でるお腹に違和感が出る。そう、下半身から水が溢れてくる。床をビシャビシャにし、デラスティが慌てて部屋を出た。陣痛はない。


「え、ヤバい!?」


 経産婦用の服が濡れる。そのまま、私は立った瞬間に頭がクラクラして地面に伏せた。デラスティと衛兵が青い顔で私に声をかけるが、何を言っているか分からず。そのまま目を閉じる。だめだ眠い。





 ネフィアが倒れた。唐突に産気づき、気を失った状態で空に浮かぶ緊急時受け入れ専門の私立病院に担ぎ込まれた報告が上がる。天使が運び入れた緊急分娩所の外で待機する。そして時間がすぎる中でエルフ族長とダークエルフ族長の二方も慌てて顔を出し、俺の顔を見るなり青ざめる。


「王配!! 入ってないのですか!!」


「緊急だから入れてもらえなかった。経産婦だからと油断した。考えてみれば……産める体じゃない。女神の呪いが宮を駄目にしていたんだ。奇跡なんだよ」


「エメリア神は?」


「エルフ族長グレデンデ。奴は既に違う神を名乗ってるから手を離れてしまったらしい。土下座して仕事に戻っていったよ」


「やくただずめ」


「そう言ってやるな。気を失ったのは防衛本能かもしれない。それよりも仕事はいいのか?」


「二人とも投げて来た。後継者誕生をこの目でみたいからな」


 俺は目を細める。そして、二人が嘘を言っている気がしたので質問した。


「たまたま病院に来ていた。理由は二人とも、妻の容態は?」


「「……」」


 沈黙。そして、考えた。


「ネフィアに『二人の子供と同じ誕生日』にしたいと影から願ったな。ネフィアの予定はもっと後だ」


「確かにそう考えた事もありますが。他の方々も同じでしょう。生まれてくる子を配偶者にすれば権威が多くなる。族長の傘下が願ったんだろうさ」


 ピリ付く空気。俺は大きい大きいため息を吐き頭をかく。


「お前たちは裏で『取り決め』したのを知っている。族長のバランスは大事だ。後継者故な。だから全員が配偶者にさせない事を決めている。なら、それを知らない奴らだな」


「王配も盗み聞きやめてくださいね」


 牽制は大事だ。特に我が子が「次魔王」になるのだから。そんな、中で分娩室のドアが開き。ナーガ族の女性が声をかける。産声を聞こえないため俺は慌てて振り返り、ネフィアの状態を聞く。


「王配さま、ご安心を……生まれました。しかし、小さい産声ですぐに黙り静かに寝てらっしゃいます」


「わかった。では、お前らも安心していい。皇太子の誕生だ」


 ナーガ族とともに扉に入る。そこに汗を拭う天使も医者など色んな名医がわざわざ顔を出して安心した表情をしている。ネフィアは寝ており、子は用意された籠に護られているのがわかった。ダークエルフ男の先生が「籠をご覧ください」といい俺はその籠を覗く。


「王配殿、無事に生まれました」


「ああ、ああ」


 眠っている姿は人の赤子。まだ生まれたてゆえにホクホクした表情で眠っている。抱くことはしない。逆に怖い。


「素晴らしい姫です。王配殿」


「そうか、姫か……………は?」


 俺は喜びが冷える。赤子を確実に目で見る。姫である。


「王配殿?」


 俺の緊張はすぐに彼らに伝わる。故に俺は他言無用でお願いし、秘密を打ち明ける。


「ネフィアと俺は『王子』と思っていた。それはハッキリと調べもした。亡き第一子の魂……残滓が入っている」


「王配殿、禁術ですぞ。それは『魂過剰精神分離症』と言う病気のリスクのため駄目ですぞ」


「ああ、そうだ。俺は罪を犯して王子を望んだが。姫が生まれた。すまないやり直しを……望んだ浅はかな人間だ」


「………重々承知。何も言いますまい。しかし、生まれたのです。今は喜ぶべきです。そうでしょう。それに女王に似た姫です」


「かわいい姫さまか。父としてやっていけるのかな?」


「王配、そういうもんです。しかし、魂科の私からの意見ですと幼少の経験は非常に大切ですぞ」


 俺は覚悟する。娘がどのような成長を見せるのかを。


「頼むから……俺とネフィアに性格が似ないでくれ」


 特にそう思う。






 ニヤニヤするエルフ族長グレデンデの義兄に俺は問いかける。あまりにも気持ち悪い。


「めでたいが、お前のその笑みは気持ち悪い。グレデンデ」


「バルバトス。私はね、女王陛下を心酔してるのです。そう、崇拝。故に私はね……次期王は『女王』であるべきと思っているのですよ」


「お前!?」


「私一人ですか? 考えてみてくださいよ。『男性の魔王』だった時にどれだけ我々は憎しみ合ったのかを………バルバトス。お前も思っただろう」


「次期王は女王陛下のような方が望ましい」


「そう。我々は共犯。『人の望む姿で淫行を行う』種族が望ましいとされる姿になるのは必然。女王と王配だけでは流石に望まれた結果を覆すには弱すぎたのですよ。だから気を付けなければいけない」


「……」


 俺は次の言葉に反応を示さず去ろうとする。


「聞かないのかい? 『望ましい結果が破滅』だった場合は?」


「絶対にない。そうはさせないだろう。お前も俺も」


「……違いない」


 止められて振り向いたが、気持ち悪い笑みはない。


「あ、いましたいました!! 族長たちの奥様方が突然産気づいて!!」


 気持ち悪い笑みは無くなったが絶望したような顔で見合わせる。口々に「ヤバいヤバい」と言い合い。王配の異様な落ち着きが逆に凄かった事を感じる。


「ヤバい誕生日一緒とかどうでもいいから、容態を」


「待て、グレデンデ。お前が居ても邪魔にしかならないだろ?」


「だからといって生まれるまで静かに安心できるのか?」


「無理無理無理無理無理無理、特に異種族の子は何が起きるかわからないんだ。だから『産婦人科』は名医と言われるんだ」


「二人ともお静かに……ご案内します」


 ナーガの婦人に俺等は宥められる。考えて見れば俺たちも「初子」なのだった。

















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