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天使の反乱⑥


 誰か考えたのか「『天楽街』の族長と縁の切れた部隊」を持つ私。そんな私でも「一つ、やらなければいけない最悪な事柄」に触れようと思った。


 私の手から離れる世界。私の手で殺した世界の犠牲者たち。だからこそ……私は聞こうと考える。夢に誘い込んだ「天使」たちの恐怖の表情に問いただす。私を恨むきっかけを。


「あなたたちの中に……魔王を殺す使命の理由を知ってる者はいるの? 魔王とはなに?」


 女神が敵対し、女神を過去から未来へ送りつけて「抹消」しようとした存在。それが私である。私の問に彼女らは首を傾げるのが多い中で1人1人と手を上げて行く。発言を許すと恐怖せずにスラスラ言葉を出した。


「私、夢で悩まされてる。家族が殺されてしまった夢

を。でも私は『家族』がいない存在。人工的に作られた生き物なの。『家族の仇を取れ』って」


 その問いに他の天使、羽の数が多い故に上位者だろう者が語る。


「それは映像で教育された刷り込みだからな。実際は『第一世代』『第二世代』と『改造世代』がいる。改造は人間をベースに改造。他は人工的に作る。女が多いのは『一種の雄』で人間の子供が出来るようにだ。もちろん、天使の実験島は幾多あるし……翼が折れたら記憶を消して人間に混ぜた」


 上位者の天使は覚悟している。全員に恨まれて刺されてもいい雰囲気を持っている。


「人間と天使が混ざることで次の天使が生まれる。事故と病死の子供を引き取り『再利用して完成』する。そういう施設が何個もある。だが、圧倒的権力の鍵の女神が居なくなり稼働はしていない」


 ざわつく天使たちに上位者のその者は空を見上げる。


「ラファエル様はそれに痛く感じており『終わらせたい』と願った。故に私を含め……焚き付けた。君たちを堕天使に落とすために」


 一人の天使が手を上げて殴り倒す。それを慌てて抑える天使達は怒りより焦りが見えた。


「お前も!! 堕天使だったのかよ!!」


 私は驚く。どういう事かと彼女を見つめ続けた。知らない。知らないことが多すぎる。


「もちろん。堕天使」


「お前...…私たちが無様に負けていくのを見て笑っていたのかよ!!」


「はぁ? お前達を説得しようとした私の親友は……君たちが磔にして右手、左足。そして翼を千切り。そして処刑しようとしただろう。残念だが……無様に聞く耳を持たなかったんだよ。全員が全員、集団でいじめてたな。堕天使だと言って」


 上位者の羽の後ろから右手の義手と左足義足、金属の翼を持った天使が現れる。その登場に震えだす反乱に加担した天使達の表情には「恐怖」が張り付いた。復讐されると考えているのだ。そう、みんな処刑されると思い込んでしまう。


「脅すのなんて酷い親友だわ。私は賭けに負けたの。『説得で反乱をやめさせ、堕天使にさせる事』は無理だった。覚悟した。こんな体になっても私は私を恨まない。あなたたちも恨まない。安心して。復讐はしない」


 金属の体を撫でる堕天使は義手をガチャガチャさせて刀を出す。刀身を眺めながら「ふふ、名がある刀と一緒になれた幸せを感じてるわ」と逆に怖い事を言い出す。よく見れば翼が全部鞘である。


「事故だったら補助金でて治療で改造出来るのいいわねぇ。別に千切れても関係なかったのよ」


「カタナ、怖いから夢に出てくるな。殺戮しそうな姿を見せるな。堕天使でも怖すぎる」


「あらあら、『全員殺すべきだ』と言ってたのにお優しい事で」


「うるさい。カタナ帰れ」「はーい」


 夢からヤバそうな天使が去り、天使たちが各々の口から謝る言葉が出る。それを私は聞きながし、本質の質問をする。


「誰か、過去の私を知るものはいないの?」


 私の問いかけに天使たちは顔を見合わせる。そんな中で数人が手を上げた。その一人を指差す。


「私は生前の記憶があります。秘密結社『ツバサ』と言う組織にいました。目的は未知の事象の解明。そして、滅びる世界を生き抜くためにコロニー開発。その中で魔王が滅ぼす事を知っていたのです。最初はコロニーは未来に生き残るための場所でした」


 言い方に含みがある。そして、頭を抱える。


「ですが、『滅びる原因』がわかっている故にコロニーは複数の種類。実験に分かれました。『原因排除機構』を未来に存在させて原因を殺す。それが私たちです。だからツバサと言う名前で未来に届ける希望だったのです」


「そうだったのね……ありがとう。話してくれて」


 お礼を言った後に私は最悪な事が思いつく。


「未来に届ける希望は『誰の』希望だったのでしょうね? わかる?」


 私の問いかけに天使が震えだす。気付いたのだ。


「私たちは……私たちは……あなたのせいで作られた? 敵として? 違う!! 堕天使族……ラファエル!?」


 一人の考えが伝播し、各々が気付き、泣き出す。悲しいが私は彼女らのきっかけを知った。


「あなた達が『あなた達を作った』のですね。あなた達の『新しい出会う家族』のために」


 私は淫魔で夢魔でナイトメアとも言われる夢を司る種族。悪夢を見せることもある。本当に悪夢だ。





 夢が醒め、私は航空免許証を持って朝日を浴びれるお気に入りの王宮の屋根に乗った。そこに天使族長のラファエルがタイミングよく現れて隣に座る。


「女王陛下……天使達が泣いてます。何故ですか?」


 私は夢で聞いた話を彼女に行った。そして、彼女は唇を一文字にして複雑な表情をする。


「ラファエル。堕天使って……欲深いんでしょ」


「ネフィア様。人ぞれぞれです。だけど…………夢を叶えた天使から報告が上がってます。いろんな所から」


「どんな」


「子供が出来たと」


「………」


「槍を掴む手に力が入る。今回だって、我々は我々のために槍を握って天使を倒した」


「………」


「刀に魅入られた馬鹿もいるし、スパイ活動を喜んで趣味にする危ない奴もいる。鉄板を使って料理するのが好きな奴も、槍の腕を鍛えるために武者修行する天使も、死ぬ前の記憶から傭兵稼業に戻った奴も、衛兵に憧れて降りた奴も……演劇家、演劇脚本家になりたくて去った奴も……バカばっか。自分のために動くやつばっか」


 天使がまとまりを失っていくのを苦言を出しながらもその顔は納得した表情で私を見ている。


「でも、そんな奴らも今回は『激怒』して一致団結して戦った。各々の夢を守るために」


「欲深い生き物ですね」


「欲を知りすぎた阿呆だよ。特に小説は面白い。天使と騎士の恋愛物なぞ中々、夢があります」


 彼女は彼女を指さして笑う。自分で書いて出版してる事をほのめかして買わせようとする。


「一冊買っておりますので」


「それは良かった。ネフィア様がそこまで重く気を病むこともないでしょう。ネフィア様の罪は我々の罪でございます。我々が『今』を求めるための。そういうのは王配に打ち明ければよろしいでしょう」


「そうですね。何度も何度も……過去を殺す事は堪えますね」


 私は私の疲れを感じる。そう心の疲れを。


「子供がいる身です。大丈夫ではないのです」


「ええ、私は弱いわ。今ならあなたの槍でもヤれる」


「ヤッたその先は破滅ですね。それがわかるからこそ全員があなたの支持に回ったのでしょう」


「人気が落ちれば殺されるわ」


「いいえ『利用』します。天楽街は『うまくやりましたね』」


「……流れは王配が作ったのかな?」


「そうですね。『王配の私設部隊』ですね。どう見ても……諜報が得意なのが多すぎる」


 天楽街の裏稼業は噂の売買である。噂故に真実ではない。だが………本当にそうかは知る人ぞ知る。


「今回、一番利益上げた部隊は天使の私たち。特別に国庫から資金が入った。余ったけど帳簿的には問題ない。傭兵は傭兵。他は『族長領民の寄付』。私達がお金を貰ったらどうするか知ってる?」


「どうするの?」


「天楽街一角貸し切り。それはそれは豪勢に欲をばら撒いてる。中には溜まったツケを支払ってるおバカも居たわね。あれは説教ね」


「あまり、私は気にいしてなかったけど。私の周りは……いいえ。空に繁華街が出来るなんて思わなかった。そして、まるで……組織化するなんてね」


「ネフィア様、天使が一枚絡んでる。鉄板屋の店主。あれは気を付けてください。出張出店サービスですが……あれはヤバいです」


「マクシミリアンの女王御用達ですね。有名ですよ。あの体に悪い料理」


「そういうヤバさじゃない。あれはもう私の手を離れている」


「……わかった。気をつける」


 そりゃそうだ。サービスでお金を貰っているがそこには商売と言う手前がある。裏ではただただの噂で情報を流すのだ。うまい仕事だ。


「鉄板屋。いっぱい弟子を取るそうですよ」


「天楽街出ていくのかしら?」


 大きい組織は嫌われる。


「天使鉄板屋本店で弟子店を出すそうです。うまくいくかわかりませんが」


「まぁそこは……どうするんでしょうね」


 本当に天使は何するかわからない。いや、みんなそうだ。


「本当に自由な国ですねここ」


「ネフィア様がそういう人間だからでしょう。全部禁止で許可制より。全部解禁で駄目なら随時規制のが自由でしょう。まぁ、私もやっと羽を広げて気楽に生きていける今が好きですよ。女神は『監視者』だったので本当に堅苦しいクズでしたから。悪魔の癖に」


「………悪魔?」


「あれ? 知らなかったんですか? 対峙したのに? あれは悪魔ベースの監視者の人工悪魔ですよ。悪は人間の敵、天使は人間の味方。自分に都合がいいのを正義と言えばそうでしょう?」


「そういう考え方もあるのか……」


「そうですねぇ。そろそろ私も店に飲みに行きます。ネフィア様お酒はだめですよ」


「わかってる」


 私は頷き、気が楽になる。今回のような事件はきっと続いていくだろう。だけど……それが世界と言うものだ。


「どこまで、仕組んでるんでしょうね……魔王の私は」


 不思議となんとかなりそうな気がしたまま。王宮の外に建てられた店でどんちゃん騒ぎでうるさい天使客を眺め続ける。


「ねぇ、ミズキちゃん。見える。あれがあなたを護ってくれる組織よ。気をつけなさいね。利用されすぎないように」


 お腹を撫でながら未来の王子に問いかける。きっと聞いてるだろう。そんな中でそう言えば目の前で映像が流れており。今日はプロ試合があった事を思い出す。


「はぁああああああ? 天使族で初めてのプロ選手のくせに何空振りしてるんや!! どう見てもボール球だっただろうが!! 素人目でもわかったぞクソがあああ」


「天使族唯一のプロ選手って肩書き返納しろ!! 恥さらしめ!!」


「ええぞ、ええぞ、活躍せんでくれ!! 所詮はオークの巨体こそ志向。パワーこそ野球や!!」


「てめぇええええ何処に目がついてやがる!! さっき見た球だろおおおおお」


 お腹を撫でながら騒がしくなっていく広場に目を細める。


「ああいうのになっちゃだめよ。応援するなら青いチームにしなさい」


 王配との苛烈なチームへの英才教育を私は考えていく。きっとこれは揉めるだろうと思うのだった。


 








 













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