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天使の反乱③


 王配としての仕事は正直に言うと懐かしい。無理難題を押し付けられた黒騎士時代を思い出す。故に無理難題を押し付ける側になるのは気持ちがいい。


「で、金龍ウロ、銀龍ボロスの調査結果により。ドラゴンの墓荒らしがあった事。それが天使の無尽蔵の供給に繋がっている事。それらを叩く作戦を実施中。ここまでいいな」


 特に上がってくる情報が早く、そして対応をする。なかなか、いい教育されてる奴らだ。現場は疲労で死屍累々だろうが。


「で、お前は何用。ワイバーンの子よ」


 子供扱いに彼は嫌がるだろうが、苦笑いで「この人だからしょうがない」という表情で終える。


「いやー王配に直接会いに来たのは……増強して欲しいなって……1人なんだよ」


「ああ、デボン隊長がそう言ってたな。1人でいいだろうとの事だ。空戦はな」


「無理難題」


「やるしかない」


「王配暇そうじゃん」


「いや、最終の決め事は俺がする。悩んだら俺の所にくる」


「では、話が早いね。決定してよ、増援」


「……負傷完治した騎士団が飛び立つ。それに混じって先陣を切れ。特別顧問だ。なーに、既に話は隊長がしてる」


「話がわかってて流石お兄ちゃん」


「お前も、染まったなぁ……子供はいいのか?」


「子供は預けた。勝手に生まれるよ」


 勝手に生まれると言う事は育児場に預けられたのだろう。鳥系育児院は繁盛していると聞く。人口爆発問題が起きる。絶対に、寿命が伸びるから爆発的な伸びを見せるだろう。仕事……増えればいいな。


「生まれるか。お前も俺も父親か」


「そうだけど……教える事は難しいかなぁ」


 ネフィアが育児するだろうが忙しい身。やはり、託児所が増えるだろう。


「まぁ、こんな所で油売ってないで出撃待機しておけよ」


「いやぁ、すぐに迎撃できるからここに居させて」


「わかった。お前だけだもんな」


 精鋭による遊撃は囮として非常に役に立つ。向こうも対応に迫られており、形成逆転を感じさせる。


「ネフィア姉さんはまだ起きないの?」


「起きない。困った女だ。本当に……何処か夢で遊んでいる気がする」


「あえてかもね。王配任せで」


「そうかもな。あいつの視線を感じるから、見ているのだろう」


「ああ、やっぱり」


「ああ」


 二人で天井を見て、目を細めるのだった。









 無理難題とはこういう事だろう。僕はたった1人で迎え撃たないといけない。何故なら遊撃に全員が出払ったのだ。


 1人でどうにもならない。だが、1人でどうにかするしかない。


「あの、ワイバーンは!? 首輪つきだ!!」


「首輪つきを倒せ!!」


「どけ、俺の獲物だ」


 翼に輪っかを描いて識別した結果。それが首輪のように見える事からいつの間にか首輪と命名されてしまった。天使は僕を仕留める事に躍起になり、僕は僕でそれを迎え撃つ。


 時に、赤い髪のネームドとの戦い。天使族長の姉妹の長姉。赤い槍に赤い髪。血を連想し、燃える赤を連想する。まるで妻の竜姉を思い出す人柄。そんな彼女との数戦。


「今日は仕留めに行く。血染め天使」


「首輪ぁ、てめぇの血は何色だぁ?」


 軽口の言い合い。5回目の刺し合い。向こうは楽しんでるが僕は全く楽しくない。


「君のせいで首級とれない」


「お前のせいで、お前らの首が取れねぇ」


 自由にさせないための戦闘。距離を取って加速しての攻撃を全くさせてくれない。逆にわかった弱点は自分が空でも「遊撃者」であり、盾役が出来ないわけではないが不向きであることがわかる。


「ソニックブレス」


 喉の奥で溜めた魔力を声とともに発する。龍のブレスが吐けない自分が見様見真似で編み出した短距離ブレス。その衝撃波は遠くを攻撃できないが。


バシュン!!


 ブレスに近い放出系の攻撃を弾く吹き飛ばす消す事が出来る万能防御札になった。相手の魔力弾を弾き。圧倒的防御で凌ぐ。


「何度やっても無駄。時間の無駄」


「く、首輪ぁ」


「天使の耐久ってどれだけ?」


 僕はバカである。故に、騎士団にいい方法を聞いた。1人の騎士団員がゾンビだった故にそんな発想を聞き。驚くとともにいい案だと感じた。相手の攻撃を躱し、抱きしめる。ワイバーンと天使との体格差を感じさせない力に驚くが。


「何をする気だ!!」


「ちょっと浮気かな」


 離せないわけじゃない。身を捻り、飛び。そのまま地面へ向かって全力で飛び込む。


「おまえええええええ!?」


 飛び込み瞬間。手を離し、彼女を魔法で射出。浮く魔法を超えて二人で地面をえぐり、クレーターを作る衝撃とともに体の至る所がボロボロになる。


 一瞬気を失い。バラバラになっていない体に感謝しながら、槍を向けられる。


「勝った!! 天使をナメるな首輪」


 息も絶え絶え。苦しい中で立ち上がった天使のオーブは砕けており、ほんのちょっと自分より耐久が上回った結果だった。


 僕は敗北したが。残念ながら、騎士団は勝利した。天使の体に刺さる騎士槍。油断せず何回も突きこまれて声を発せずに魔力の散りにさせられる無情さ。


 あっという間の決着の後に僕の体がゆっくりと治って行くのがわかる。呑気な堕天した天使達が集まり、治療を施してくれていた。地上では回収班が待機しており、逐次けが人を回収し回っている。


 徹底した合理的な戦争風景である。


「いやー、ワイバーンとか龍亜人は生命力高くて治療しやすいなぁ。自決用ナイフいる?」


「殺そうとしないでください!!」


 目にくまの天使。いや、悪魔か。


「こいつは意識あり。よしよし君は大丈夫そうだね。おーい次患者見つけてこい。こいつはここで捨て置け、後で回収されるだろう。生きてる生きてる。人の姿になってくれよ。運ぶのしんどいんだから」


 戦場の軍医は最低限しか生かさない。しかし、それでいいのだろう。


「おやすみ坊や」


「軍医にかかるもんじゃないですね……」


「生きてるだけありがたいと思いな」


 僕は魔法によって意識が刈り取られる。






 起きた次の日にはベットの上で包帯が巻かれていた。砕け散ったオーブの破片から魔力が消え失せている所から、これを利用しての治療だろう。


「ああ、ゾンビの騎士さんとは絶対に戦いたくないなぁ」


 玉砕覚悟の同士討ちを連発されたらたまったもんじゃない。そう、僕は思う。アンデット系は恐ろしい。アンデット系亜人は強者ばかりだ。


「起きましたかな?」


「タイミングバッチリですね」


「たまたまです。調子は?」


「いいほうです」


「では、至る所が終わってるので一ヶ月入院です」


「……は? 僕は立てる!!」


「がああああああ、だめだ安静!! 内蔵もいってるの!! 痛みがないのは薬のお陰で!!」


「それでは空が」


「騎士団員に任せなさい。では、忙しいので」


 蛇の医者が個室から出ていく。個室故に思うのは特別待遇である。そして、僕は窓を開け脱走。そのまま、騎士団の発着場まで向かう。


 あわだたしさはいつも通りだが。練度が上がったのか的確に動いている。故に発着場の支配者に声をかける。


「あ、デラスティ殿。もう動いていいのですか?」


「ああ、医者が一ヶ月安静とか宣うので抜け出しました。管制官長。飛ぶ許可を」


「いやぁ。病人を飛ばすことは」


「そこを……なんとか」


「……ああ、ミスって帳簿つけわすれたなぁ。あー、業務連絡。デラスティ殿が飛ぶので注意を。ご武運を。天使は数を減らしましたが……まだまだ連続で来られています」


「首は譲るよ」


「そうしてください。無駄ですから」


 融通効く人達でよかった。一刻も早く速く天使を葬りたい。


「なんで彼らは戦うんだろうね」


「………恨みでしょう。家族を殺された。天使の作り方知ってますか? 公開されました」


「?」


「非常にショッキングですが。納得出来ます。人を魔力で体に改造するんです。魂を変性、遺伝子操作とかですね。ということは……あるんですよ。元々の生きていた時が。私の彼女が天使で酒の席で号泣してたときに聞きましたね。思いだすって」


「……」


「『こんな長い間辛いだけで、なんで生まれてきてしまったのか』てね。同情はいりませんよ。ただ、終わらせてあげる必要はあるでしょうね」


 重い話を振られて目を細める。そのままワイバーンとして翼を広げ、飛び立ち。情を捨てた。





「王配!! けが人が戦場を飛び回っており、若い騎士団員が真似てしまい。医療現場で大苦情起きてます。あれは傭兵だからとルール無視は大丈夫ではないのです!!」


「王配のあの知り合いの傭兵。中々、どうして……噂以上。騎士団員に出来ないのか?」


「王配。書類の決済お願いします」


「全員いっぺんに喋るな。決済書類は経理に回しておけ、税金補填だ。傭兵に関しては残念ながら黒騎士団員でお断り。負傷での出撃は認めない故に成果はゼロの処分だ。あと、余裕が出てきた部隊から基地攻撃を画策しろ。傭兵隊合同による、補給拠点の攻撃と占拠は終わってる。後はジリジリ締めていけ」


「「「了解」」」


「後は俺も出ると全軍に伝えろ。前線指揮は俺がする。ガルガンチュアを出せ。歩兵を集め占拠する」


「王配、一つよろしいでしょうか?」


「なんだ?」


「指揮系統が歪みます。全指揮を前線では無理でしょう」


「俺は『前線指揮』と言った」


「……?」


「察しが悪いな。お目覚めだぞ」


「全軍に伝えろ!! 王配が出る!!」


「全く……起きるのがちょうどいいんだからな」







 






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