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天使の反乱②


 嘘をついている。嘘をつく。例えば「女王陛下は空で戦っている」と嘘をついた。なお、真実は眠っている。いや、眠らされている。俺としては「やってくれたな天使たち」と思う。素晴らしい手段だ。


「最高指揮権は王配でよろしいですか?」


「もちろん、エルフ族長。ただ」


「わかってます、嘘ですね。女王陛下には荷が重いでしょう。それに、状況が状況です。『魂を夢で吹き飛ばされただけです』ので帰って来るでしょう」


「それもそうだな。ゆっくり帰って来るな。それまで……自由にやらせてもらおうか。甘さはない」


 急遽用意された対策本部の城の一室、日があがり被害状況を確認する中で第二波第三派の兆候が見られた。そして、それに対応するための方法を考えさせられる。エルフ族長等々情報を集める。


「有翼の亜人にも多大な被害が出ており、空戦での敗戦が続いてます」


「天使は固く、斬るには刃が太いようです。空での突きも難しいとの意見です」


 族長たちは躍起になって指示を飛ばしているだろう。そして、ここへ来て英魔族全員の弱点を露呈する。


「『空飛べない亜人にネームドの衛兵や、黒衛兵が多い』事が問題ですね。一部は空に上がれるそうですが……」


「ルシファー!! 天使英魔族として聞くが……分散配置は愚か?」


 俺は族長たちの「空戦能力を調べろ」と言った結果。オーク族長に空戦能力皆無との連絡があり援軍を決めようとしていた。


「全員に向けては絶対に無理ですね」


「首都防衛を薄くすればどうだ?」


「それならば少しは……しかし、首都ですよ?」


 そう、首都である。しかし、首都と言えど他都市も同じような大きさであり。そして、首都には比較的航空戦力がある。


「戦力バランスを整える。首都防衛は『エルフ族長、ダークエルフ族長』とし、他に行ってあげてくれ。特にオークとトロール族長領域……リザード族長とオペラハウスのエリック族長領域に多めに。セレファは吸血鬼や幽霊でスキャラ族はスライムが空を飛んで自前でどうにかするらしい」


「………ほぼ全部ですね」


 ルシファーは苦言を呈しながらも部隊編成を行う。アラクネ族長である蜘蛛の姫は有翼の昆虫亜人を集めて、彼女らの緊急を要するので故郷へと帰していた。結果、首都はダークエルフ族長の要する衛兵団頼りになる。そんな中でダークエルフ族長が会議室に顔を出す。あまりいい表情じゃない。


「王配」


「何かな?」


「衛兵団の航空戦力は発展途上です。いきなりの実戦は心許ない。既に第二波第三波で多くの負傷者をだしてます」


「わかってる。だから『今の今が相手の勝つためのタイミング』なんだ。ネフィアを一人のスパイ天使の特攻で無力化、航空戦力がない状況の有利のまま戦う。だが、逆に苦し紛れのような攻撃でもある。現に『都市機能停止』までは行っていないし、稼働している。あとお前らが無傷だ」


 俺は俺の意見を延べて大きい首都周りの地図を魔法で浮かび上がらせる。


「だからこれからは相手に被害を出していこう。向こうは戦争もド素人だ。地上部隊が全くいない。目的が不明瞭に見えるが、それは『勝つ方法』を知らないからだろう。なら、その弱点を突く。天使側もそう多くない。本拠地も割れている。衛兵諸君、いい実戦だろ? 喜べ、落とせば今日から君達がヒーローだ。お金は見込めないが」


「王配、そう楽観出来ませんが再編するまで時間稼ぎが必要です」


「では、そのためには? どうする?」


 俺は問いかけた。そして、彼らは案を出した。








「デラスティ、ボルケーノ両名の衛兵団特別部隊配属おめでとう。私は略、特空を任されているデボンと言う昆虫族長である。種族的に昆虫亜人族トンボ類に類する。隊長と呼べ」


 僕は黄色と黒のシマシマの服を来た亜人の前に自由勝手に座って話を聞く。中には天使だろう一人に悪魔の英魔族、有翼の腕効きだろう数人が集められていた。なお、断れない理由は『強制徴兵制度』のせいである。英魔族は国家のために有事、それもあまりにもヤバい時に発動する制度である。まぁ、ヤバいレベルです。


「特空は衛兵団正規衛兵による空戦戦力が整うまでの防衛、迎撃任務を請け負う。そう、傭兵だ。特別危険手当が支給され、負傷や死亡にも衛兵保険が適用され、貧乏神のおっぱいに世話になることが出来るぞ」


「お、お下品な。お下品ですわよ。デボン隊長」


「そうか、戦場に貴族令嬢様なぞいらんのだぞ? 後方でお茶でも啜るなら文句は言わんが? 慣れろ」


 空気が冷めていく。発言したのは品のいい服を着た青色と黒に斑点の羽が特徴的な英魔族で、その羽根が非常に綺麗な昆虫英魔族の女性だ。


「……お下品で、本当に最低な物言いですわね。まぁ、いいですわ『誇り』は見て取れます」


「そうか、お前は勲章メダルがほしいのか。喜べ、死んでも女王陛下による授与式がある。棺桶で参加したくないなら、生きて帰ってこい」


「そのつもりよ」


 一触即発の空気かと思えば、緩っとした空気になり、そして「はははは」と笑いながら手を叩く英魔族も現れて終始交わりのない部隊と感じた。ワインを空ける奴も居て、まぁ、凄く「アウトローな人を集めたもんだなぁ」と関心する。


「デラスティ、見ちゃだめよ」


「ボルケーノ姉さん、その冗談は笑えないよ」


 デボン隊長から一応の自己紹介を進められる。人数は少なく。自己紹介も簡素だ。「待ってました」と言わんばかりに蝶の英魔族が胸を張って名を名乗る。


「衛兵団空挺隊長、英魔族昆虫亜人族蝶族。オオムラサキ家、名はフライトですわ。私が直々に参加する事を光栄に思いなさい」


「声が大きい!! 元気でよろしい!! 次」


 ワインボトルをそのまま開けて飲んでいる悪魔族の角ありがボトルを置いて自己紹介をする。


「エルフ族聖歌隊所属。英魔族エルフ族元悪魔族のデーモン家ウルティア。デーモン家と言っても、あの反逆者たちと同じ家名なだけで縁は遠い。それに俺は今はエルフ族籍だ」


「ふん、エルフ族とはこうも品のない奴も受け入れるのだな。次」


 姿勢が僕に集まる。しかし、口を開けたのはボルケーノ姉さんだ。


「竜人族。ワイバーン家、名ボルケーノ。英魔族首都のギルド長よ」


「おう、お世話になっている。今度もよろしくな恐竜」


「一戦交えたかしら?」


「そんな回数なぞ数えとらん。腹の中の戦友によろしくな」


 ボルケーノ姉さんは無表情であるが、僕には「いつの話か、いったいなんの時だ?」と考えて悩んでいるのがわかった。デボン隊長も察してくれてるのかどうか分からないが天使を指差す。ボロボロの不揃いの汚れた羽根だが、羽根軸は大きくてゴツく腕のような羽根を持つ。


「天使は他の地へ遠征になった筈だが?」


「私は英魔族ダークエルフ族天使族。フリーランスの冒険者よ。名をミリエル。家名はない。自由に呼んでくいいわ」


「ふむ、天使のあぶれ者か」


「そう、天使はね。清くていけない。泥水のようなコーヒー。焦げたパン。パサパサな非常食を食べてない。ダニが居そうな寝床、ネズミに噛まれる恐怖と隣の野宿。ふぅ、最悪ね。でも、そんな所でも人は生きているのよ、たくましく」


 「でも、素敵ね」と言うには口元が緩んでいる。そして、彼女は俺に目を寄越した。


「最後の自己紹介は居るかしら? 有名人」


「黒衛兵のワイバーンの竜人。ワイバーン・デラスティ。いるよ。流石に」


「『空王』ね。僥倖。出会えて嬉しいわ。噂は聞いている。英魔最速」


「どうも」


 天使に対してボルケーノ姉さんが威嚇の睨みをおこなう。僕はため息を吐いた。


「デラスティだめよ」


「子供扱いしないでボル姉。自己紹介終わりましたね。どうぞ」


 隊長に話しの主導権を渡し、そのまま彼はハッキリとした物言いで命令する。


「よし、自己紹介が終わって仲良くなったな。喜べ、既に第四派第五派が来ている。奴らは継続的な圧力で我々を疲弊させようとしているが、逆に言えば全軍ではない。一人一体ずつ落とせ。落とせば地上部隊が始末してくれる、行くぞゴロツキ共」


「おい、隊長さんよ、待ってくれ。合同軍、傭兵ってこったぁー。ボーナスあるだろぉ? 一人で全員ヤッてもいいな。天使はそこの姉ちゃんたちのように可愛いんだろう?」


 自信満々に蔑む。もちろん女性陣には反感を抱く。


「ああ、もちろん。だが、お前には無いだろうな」


「………よし、わかった。隊長さんよ。撃墜数勝負だ」


「勝負なら後で好きなだけ拳でやってやる。無駄口を叩く前にすぐに飛べ」


 僕は目を閉じて頭を抑えた。「本当に大丈夫だろうか」と姉さんを見て、考えたあと目を閉じて覚悟を決める。


「やるしかないな」


 そう、やるしかない。





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