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過去から続く栄光、都市オペラハウス..


 数日後。私たちはオペラハウスと言う都市にたどり着いた。


 都市オペラハウスは芸術、音楽が盛んな都市。発祥はもっと西側のエルフ族長が治める妖精の王国等で妖精を楽しませる事とマナの木の感謝等を示すためにここの魔族がだれかに踊りと歌を教えてもらい楽しませた事が発祥らしい。


 話を聞けば今でも妖精の王国へ行く使節団を持ち。魔国は一応、不可侵を結ぶ程かの国とは仲がいい。まぁエルフ族長が治めているため隷属らしいが。


 なので平和な地域だ。マクシミリアン、帝国、妖精の王国、魔国が重なっているが西側は帝国にとって攻略が難しい地域の理由のひとつとなっている。国境が面してないのだ。


「うわぁ~!!!!!!」


「嘘だろ!? ここ、魔国かぁ!?」


 高い城壁を掻い潜って目の前に現れた町並みに私と初めて知ったとトキヤは驚きの声を出す。家は一つ一つ、手入れや住み心地を無視した装飾。芸術家が自分の考えを表に出し表現した作り。絵本の物語の中に入っている感覚の世界だ。住みにくそう。


「凄いだろ~俺らの都市は!! さぁ楽しんでくれ」


 衛兵が胸を張って自慢し私たちを通してくれた。自分達以外に冒険者を護衛につけている金持ちらしき人物が何人も馬車に乗ってやって来る。

 

「ス、スゴイ。魔国にこんな場所が………」


「帝国でも噂になってたがここまでとは…………」


 宝石等の装飾品の店が並び。仮面等も売ってあった。ここでは身分を隠すためにつけている人も多い。そして、その仮面さえ作り手のこだわりが見てとれ一種の装飾品として完成されている。


 ここでしかつけられない奇抜な物だが。皆が楽しんでつけているのはそういう事だ。


 二人で店を見ながら手を繋いで歩く。私たちも興味本意で仮面を買った。一応は人間も多いので今更だが身分を隠してみる。今更だがバレバレで刺客どもを誘い、首を金にしてるが。


「すごいねぇ~」


「ネフィア、壁にある案内の地図。見てみろ」


「図書館、博物館、オペラ座?」


「オペラ座。劇場だよ」


「面積大きい………城じゃん」


「それだけ芸術に重きを置いてるんだろ。中心だしな。都市の管理者は誰だろうなぁ」


「誰だろう?」


 私は綺麗な刺繍の制服に身を包んだ亜人の衛兵に声をかけた。彼は都市の資料集を納めた資料館の場所を教えてくれる。次いでに冒険者ギルドと安い宿屋を教えてくれ、私たちは宿屋へ向かう。


 背の高い亜人がゴブリン種だと後に知って驚くのだった。

 




 宿屋でドレイクを預け、私服に着替えた私たちは仮面をつけて都市を練り歩くことにする。


 到着が早くまだ昼下がりであり。少し割り高い昼食を食べたあと。資料館へ辿りついた。


 他にも旅行冒険者がちらほら入っていくのが見える。お屋敷のような場所を私たちはお金を払って中に入れさせてもらった。


「ご飯も高い。資料館は入場料がしっかりある」


「観光都市だな。凄い徹底ぶり」


 資料館は豪邸の屋敷をそのまま改装したらしい建物で。中央に人間の青年の肖像画と赤い絨毯。木の手すり等を見ていると帝国の流れを汲んでいることがわかる。木のいい香りがする屋敷だった。


 豪邸の中心に今度は背の低いゴブリンの衛兵が立って監視を行い、盗みがないかを巡回している。小さな体だがしっかり鎧を着こなし、目を光らせる。玄人ぽい。


「何で、肖像画が人間なのか……わかったぞ。これ、歴史が書いてある」


「どれ、どれ」


 ある、一室に壁にこの都市の出来た理由と発展が書かれている。私たちはそれを読む。


 始まりはゴブリンの小さな村だった。そこへ一人の人間が現れる。人間は帝国を迫害された芸術者。勇者として生まれたが芸術を忘れず。ここまで逃げてきた者。都市オペラハウスと言う名前は彼の夢の名前らしい。それは芸術の頂点。歌、踊り、背景、台本等全てが揃う場所。彼の夢の場所である。


 ゴブリンに彼は知恵を授け、妖精と歌などで仲良くなりドワーフが村の一員となった。ゴブリンは小手先が器用であるが物を作るのは疎かった。しかし、ドワーフは作るのが得意であり、人間は新しい物を設計するのが得意だった。彼等は互いに補い、人間が設計。ドワーフが製作。ゴブリンが組み立てを行い都市が出来上がる。その時、中心にオペラ座を作り、人間の夢は叶い。彼は、惜しまれながらこの世を去った。


 いつしか。ゴブリンとドワーフは彼が残した物を守るため、自分達は戦いが得意で無いことを物で補いながら都市を護り。他の都市と変わらないほど安全になり、戦争とは無縁となった。今日まで代わりに魔法を撃ってくれる放火砲がずっと壁の上で都市を護り続ける。


「これって。壁の上にあったアーティファクトかな?」


「あれ、放火砲って言うんだな……」


 そして色んな種族がこの都市を聞いてやって来る。一人は作曲家になりたい者。一人は画家になりたい者。一人は踊り子として活躍したい者。いつしか、逃げてきた芸術家達の都市となり今日まで発展を遂げ。オペラ座は彼の夢を叶い続ける。


「監視者はゴブリンとドワーフかぁ。衛兵ゴブリンだった理由がわかったね。トキヤ」


「人間と身長、変わらんよなぁ~」


 私たちは不思議な世界を見ている自覚があった。同じ血が臭う陰鬱な世界ではない。


「ん? 冒険者の二人よ。門兵のことか?」


 熱心に歴史を見ていた私たちの問いに衛兵が答えてくれた。


「そうそう。あれはエルフに近い種族かと間違えた」


「ああ~いいや、俺らと同じゴブリンの異常種さ。人間の血が濃いとああなるらしい。ああいう衛兵は門とか重要な場所を護るのさ」


「人間の血ですか?」


 私は首を傾げる。


「そうさ、俺らは人間とゴブリンとドワーフが混じってな。人間に近いか、ゴブリンに近いか、ドワーフに近い特徴を持って産まれるんだ。俺の息子も門兵だしな。全く似てないぞ」


「へぇ…混ざるんですね」


「まぁ、最初の人間から300年。そうなるわな。あんたら異種族同士。ちょっと気になって見ていたんだ」


「わかるのですか?」


「ああ、人間とあんたはぁ、悪魔かな?」


「正解です」


 悪魔の中の下位種である。下位種とは思えないほどに便利な体だけど。


「そうかい。異種族同士大変だろうが、頑張りな」


「はい!!」


「ありがとうございます」


 衛兵が巡回に戻る。私たちは他にも見て廻り、この都市が何故こうなったかを理解する。


「帝国は騎士が上位であるから、厳しいですね」


「騎士題材の芸術は多い。まぁそれ以外を求めるためここへ来るのか、それとも有名だから来るのかだな」


「芸術家の聖地ですね。戦争とは無縁な」


「自由な表現をこの都市は認めている。何でも」


「ええ、本当にここだけの場所ですね」


「平和が自由な芸術を産み出す」


「これ、名言ですね」


 資料室の一室に飾られている絵にそう書かれていた。絵はゴブリンとドワーフと人間が笑って立っている姿だった。





 冒険者ギルドも洒落た内装になっていた。何処の宮殿宜しく。白い内装と装飾された柱。歌う踊り子で高級感を漂わせている。お酒の銘柄もなんとも聞いたことのない名前ばかり。何年寝かしてましたと言われてもピンと来なかった。


「高いなぁお酒も」


「輸入品ばっかだからだろ」


「すいませんねぇ」


 店長が苦笑いをする。黒い肌のダークエルフの店長が切り盛りしているらしい。小さなゴブリンの女の子も複数いて客のお相手をしていた。トロールと似て、愛らしい姿でナンパもされて困っている姿が見える。


「はは、金持ちが満足する酒を入れないとうるさくて」


「安い酒は?」


「あるけど、割り高。ここ、最西だからね」


「妖精国は?」


「交易がないよ。険しいし。使節団が少し持ってくるホウズキの神酒は高級品だ。まぁもう取れるのが数個と聞くがな」


「へぇ~」


「うーん。高いかぁ~よし!! 歌ってチップ貰う‼」


「おっ? お嬢さん歌うのかい? 残念だが今の子で足りてるよ~残念」


「あう~」


「ネフィア。別にお金を気にしなくていいぞ、別に」


「そそ、気にせず頼んでよ。それにしても、君は歌が得意なんだよね?」


「はい!!」


 私は胸を張って高らかに返事をした。自信がある。愛の歌を歌わせてもらえれば誰より上手くトキヤの耳に入れられるだろう。捩じ込めるように。


「ははは、元気な人です。あそこの踊り子も挑戦するっと言ってたし。これ、どうだい?」


 酒場の店主が紙を見せてくれる。オペラ座の歌手募集と書かれていた。歌手と言っても演劇もしなくてはいけないし、募集と言っても選考に合格した人しか採用しないらしい。一ヶ月選考し、演劇の練習を始め春に講演らしい。選考にはオペラ座の怪人も現れてくれると書かれている。


「へぇ~」


「オペラ座の怪人?」


「知らないのかい? 最近この都市に来たのか?」


「そうそう、今日来たばっか。資料館楽しかった」


「おおおお。お客さん資料館行ったんだね!! 素晴らしい!! なんとなしに声をかけてみたけど大当たりだよ‼」


「この都市好きなんですね」


「大好きさ。奥さんだってゴブリンの彼女だし」


 指を指した先に可愛らしいゴブリンが手を振る。トロールと似通った真ん丸な顔とちょっと見える八重歯が可愛らしい。少女と言われればそうだろう。


「で、オペラ座の怪人は?」


「あ、すまない。オペラ座の怪人は数年前から活躍している男優で。仮面を付け替え役になりきって演じ、誰よりも歌や仕草がうまい人さ。劇場の女優が彼に惚れたりするけど振られてるね」


 店長が熱を持って語り出す。


「へぇ~そんなにすごい?」


「ああ、凄い。他の男優も素晴らしいのだが彼は何故か他の男優が不得意な役もなんでもこなせるし………そう!! 悪役だ!! 悪役として演じさせたら彼は右に出るものはいない!! 嫌われ者の苦悩や………おっと………熱くなってしまった。奥さんにまた怒られてしまう」


 反省と頭をかく店長に私は目を輝かせる。楽しそう。


「トキヤ!! 私、見たい!!」


「見に行きたいな‼」


 トキヤも興味を示したのか頷いてくれる。


「ああ、残念だが。お休みなんだ。女優が決まる4月まで」


「他に居ないのか? 女優」


「いるが、お休みさ。女優も少なくてね。毎日公演出来ないんだ。オペラの怪人は毎日出てくるけどね。だから怪人って言われてるのさ」


「ん? お休みなのに冒険者多いよ?」


「ああ、それは。選考会はお金を払えば入れるから。ちょうど受付は明後日からだ」


「行こっか?」


「行こうぜ~」


「ついでに歌って楽しんでみるね」


「オススメするよ。オペラ座を」


 私たちは明後日。オペラ座に観光することにした。観光し、楽しみが終わったら北東へ向かおうと相談し、その日は依頼を見ずに帰った。


 長くは滞在しないだろう。ランスロットが先についているだろうから、数日後。楽しんだら都市を出ようとこのときは思うのだった。








 






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