臭う、悪政の結果
私は女王陛下である故に「その立場で仕事を求められる事」がある。儀式、祭りの演舞などの奉納。または「族長の力を越えた物の始末」などだ。黒衛兵の手に負えない物も担当させられている。
そして、そんな中でもとびきり厄介事は「マクシミリアンとの同盟」である。エルミア・マクシミリアン女王と知り合いである事での同盟はこの大陸で英魔国を強固にしており、圧倒的力を諸外国に見せて威圧感を持たせていた。
逆にマクシミリアン国は復興により膨大な「資産価値」を高めているために英魔国民も出稼ぎに出ている。そんな国との同盟は多くの問題が出てくる。
「マクシミリアンの国の犯罪者を処刑しろ」
「引渡しはするが!! 処刑の処分は重いだろ!?」
「国境の警備負担はどうする?」
「折半だ」
「いや、もう全撤去で予算を消そう」
「だめだ、治安。旅行客の安全のためには……」
「裁判所の両国ないすり合わせを……」
そう、今は私の空の宮でマクシミリアンと英魔国での貴族と公僕たちで会食含めた会議が開かれていた。それは揉めに揉めており、折半案を出しては融通の効く場所を探っては決めていく。一部の族長。それも球団持ちの参加する大行事に私も出向いた。
なぜ球団持ちなのかと言うと。マクシミリアン女王の肝いりの案件が大問題なのだ。
「マクシミリアン国代表のチームでリーグ戦参加を決めていただきませんか?」
そう、族長が行っているガス抜きのスポーツリーグ参加表面を『女王』が宣言してしまったのだ。立場の強制力は強く、引くに引けないマクシミリアンと利権と化した球団経営権力者の族長たちは悩んでいた。族長たち代表としてオーク族長が答える。あきらめさせたいような一言を放つ。
「英魔国内は広く、あまりの長旅で既に大変な所にあと1球団追加は非常に面白くない」
「新技術、空船、飛行挺による移動が予定されて解決済みと聞きます」
それに関してダークエルフ族長が答える。
「飛行挺技術は『戦略的技術』なため……同盟国だろうと易々と解放させるわけにはいかない」
ゴトッ
エルミアが机に大きい金塊を置く。その印字は「古代のマクシミリアン国王」のマークがついている。それは金塊との価値もありながら、歴史的価値も生んでいる。
「今、私の懐は潤沢でしてね。『金の繋ぎ目は縁の繋ぎ目』ですわ。研究費、開発費。そして技術の解放もします。どうでしょうか? ああ、これは皆さん一人一人に用意してます」
「賄賂か、受け取れない。な、皆?」
複数が大いに悩む素振りを見せる。
「流石は英魔国内族長。金で動きませんね」
エルミアの本気度を見せつつ、食い下がらない。
「技術的な問題は大丈夫そうね」
棚上げし、吸血鬼のセレファ族長が唸りながら口に出す。聖霊付きの彼の背後で立つ人形のインフェが吸血鬼に覆い被さる。
「資金面は美味しい話だが。球場問題がある」
「突貫工事で来年竣工予定。モデルはあなたの所と同じよ」
「金があっていいなぁ……マクシミリアンは」
「飛行挺、購入金額出しましょう」
「……すまない皆。私はマクシミリアン女王につく」
セレファ族長は頭を下げて参加許可を出した。それに対してスキャラ族長が続ける。
「私も……参加認めます。スラリン大隊長から『貿易間関係悪化懸念』を回避しろとの事なので」
「ありがとう二人とも。ではあと4人ですね」
マクシミリアン女王は不敵な笑みを溢す。しかし、それを蜥蜴の亜人であるリザード族長が嘲笑う。
「ククク、選手など。厳しいだろう。最下位にわざわざ成りに来るのか? つまらないチームはいらないぞ」
「ご安心を。マクシミリアンのチームは毎年変わるかもしれません」
マクシミリアン女王の言葉に皆が反応する。「どういう事だろう?」と興味を示す。
「マクシミリアン国内でリーグ戦をしております。そして……そのトップのチームが英魔国リーグ参加資格者となります。また、枠は少なくしており………他チームから成績優秀者には『傭兵』として徴集出来るようにルールが作られてます」
理解をしたオーク族長が質問を投げ掛ける。野球になると頭の回転がよくなるかれが笑みを向ける。
「それは……英魔国内リーグと被らないかい?」
「被りません、マクシミリアンファイナルリーグは被らない時期に行います。被るリーグはマクシミリアンセカンドリーグです。ファイナルリーグ出場権利はセカンドで決めます。まぁ、一国代表チームなので優勝しちゃいますね」
「ほう、言ったな。言ったな!!」
オーク族長が「面白い」と思い笑顔で親指を立てる。
「そのチームが見たい!! そして、圧倒的な敗北を見せたい。俺は参加許可を出す」
3人の参加を勝ち取ったマクシミリアン女王。私はその女王の表情に汗が見えてくる。苦しい展開なのは彼女が一番わかっていた。だが、国民のために考えた策なのだろう。沈黙を保っていたエルフ族長が口を出す。
「戦争したら、参加は出来なくなる。蜜月はすぐに終わる」
緊張が走る。それは『同盟破棄』の臭いを出していた。圧迫した発言にマクシミリアン女王は笑う。
「マクシミリアン族長とでも言えばいいのでしょう? 結局、私たちは……そこの女王陛下に生かされただけ」
その言葉にエルフ族長が慌てる。
「ま、待ってください。それはマクシミリアン国が英魔国内と言うような話ですよ!?」
「元々、族長もそんなもんでしょ。英魔国は便宜的にそう言っているだけで共栄圏が本当の構想なはず。道路、空論、海路。全部繋がっているし、マクシミリアンはもう英魔国の文化圏でゆっくり接収されるでしょうね」
「しかし、それでは国が無くなる!!」
「エルフ族長のあなたが心配するのね。大丈夫、マクシミリアン国は残り続ける。英魔国が腐った時は勝手に分裂するわ。今日の会議もそのための物でしょ?」
「そこまで覚悟を世論も味方に?」
「もちろん、マクシミリアン女王の私が言うのだから。ね、傍観中のネフィアさん」
話を振られる大きいため息をつく。
「えっと……そんなに帝国が嫌?」
「個人の意見では滅ぼしたいほどに。あなたが『やめた』から『やめた』の。続けてくれてもよかった」
「はぁ、エルフ族長……私は参加お願いしようと思います。同盟の鎖としていいんじゃないでしょうか?」
私が言葉を溢し、エルフ族長は小さく頷く。残り二人、リザード族長とダークエルフ族長だけになる。
「あとお二人だけです。どうでしょうか?」
「同じ共栄圏に与すると言うので技術供与による飛行挺作成。それを球団専用に用意することを決めればよろしいです。リザード族長は?」
「ワシは……もう皆が賛成に回ったから賛成でいい。まぁ、一つお願いするのは『マクシミリアン国内リーグ』の選手を傭兵として雇えるようにしてほしい」
リザード族長以外の族長がざわめく。それは『引き抜き』である。
「ワシのチーム事情でどうの打撃が悪くてな……強打者が欲しい」
「それは……マクシミリアン代表チームが……」
「うむ。弱くなるが……『ワシのチームが強くなる』から関係ないの」
リザード族長は狡猾に提案し、他の族長も『いいな』と賛成する。私はそれが最悪な戦力奪取に繋がるとわかる。故に妥協点示す。
「全部奪ってしまわないように枠を設けるべきね」
「おお、女王陛下の言うとおりですな。マクシミリアン女王は金持ちでしょうが『貯蓄』でしょう。私らは『売上』で出せるでしょうね」
「………ふふ、わかった。持ってけ泥棒たち」
マクシミリアン女王は苦しい表情で認め、族長たちは事細かな球団運営の相談を始めた。そして、私はそれらを聞き取り『認可』の判子とサインを行う。そして、私は王配に連絡する。
「来年から、マクシミリアン参加だって」
「ふーん、よかったじゃん最下位じゃなくなって」
「それ、あなたの好きなチームじゃない?」
「ぶっちぎり最下位に言われてもなぁ」
私は連絡を切る。そして、スキャラ族長を睨み付けて口に出す。
「最下位」
「は、はい。面目ないです!!」
「来年期待します」
悲しいかな。消化試合となった球団があることがかなしい。
*
ある程度のまとまりを見せ、妥協点を私が決めていき会議は深夜を過ぎてやっと終わりを見せた。深夜になってから疲れからか妥協する方々の多いなか、私は元気であるが……叱りを受ける。
「あなた、身が重いのに……寝ないと。私が無理矢理呼んだのだけど……ごめんなさいね」
「不眠症きみなので気にせず」
「そうなの? それは不安ね……」
「一応、処置してますので……一旦お風呂で暖めてから冷やして眠ります。それよりも、なぜ私をわざわざ呼んだんですか?」
私は会議に必要だったかと言われればわからないのだ。「いらないだろう」と思っていた。
「『船頭多くして船山に上る』と言う言葉を知ってる?」
「知ってます。エルミア女王」
「では、理解できますね? 結局最後はあなたが『いい』と言うと凄く通りがいいの。2日3日かかる所だったわ」
私は意味を崩して考える。確かに我が強い人が多く、それを丸めるには私を利用した方がいい。私は難しい判断が多いが決めてしまえば修正して上手くやってくれる事は英魔国が存続している事で示されている。
「そうみたいですね。女王なんてお飾りでなにもしないでいいと思ったんですけどぉ……忙しいです」
エルフ族長構想の権力剥奪は半分成功、半分失敗と言える。私の居る宮の空島は今は「天楽街」と言う場所となり、第一首都空港新設など。島の開発、増設、改修工事で毎日毎日うるさくなっている。そして、賃貸料が月々で支払われる事や、街の私の自警団結成による武器所持など。どうやっても「権益」がやってくるのだ。
「そうよね、忙しい。私も英魔国内とここまで陸、海……そして空の道を使っての交易が激しくなるとは思わなかった」
「私もです。ユクドラシル商会トンヤの夢も叶った話でしょうね」
「問題は関税で……ああ、ごめんなさい。もう、仕事の話は止めましょう」
「はい」
私が頷いて、そのままお客様であるエルミア女王を寝室まで案内する。警備員は自警団所属の天使が二人で控えており、私は「お疲れ様」と言いながら女王をお願いする。
「それでは……おやすみなさいませエルミア様」
「ネフィア。ここだけの話……いいかしら?」
天使たちが耳を塞ぐがそれは「しなくていい」とエルミア女王の許しが下る。
「世間話よ。皆、忙しく見えてないだろうから教えておくけど……帝国内で英魔国の息がかかっていた種族が騒ぎを起こそうとしてる。人狼亜人族って知ってる?」
「……確か、『帝国に帰りたい』と言っていた種族ですね」
私は思い出す。都市インバスでの銀狼の種族を。
「あれの人狼の銀髪の姫が私の親族と婚姻してたからわかったの。遠い遠い土地の事だけど……血なまぐさい事件が起き続けてる。それはどんどん表へと現れるでしょうね。政変を起こそうとしているのかも」
「寝る前に最悪な話を聞かされました」
「ふふ、ごめんなさいね。でも、私も当事者になってしまったからね。人狼を帝国に送ったのはあなたたちでしょ?」
「約束でしたから……」
頭を押さえながら深呼吸する。そして、考えて答える。
「エルミア女王の帰国日に合わせて……私を迎えてくれませんか?」
「え?」
「実情をみないとわかりません。責任の一旦は私に有ります。杞憂ですめばいいのですが」
「わかった。お客様としてお迎えするわ」
私は大変面倒な事がずっとつきまとう自身の境遇を呪うのだった。




