強引な身請け
揺れる馬車の中で両手をもがれたアームが私の隣に座り込む。彼女は他の子と違い、強い「我」を持ち過ぎており、シィとは何故か犬猿。ワン姉様も犬猿。ニィ姉様も苦手と言っている。
しかし、私には従順であり。比較的穏やかに見えた。そして、彼女は異様に賢い事がわかった。
「今日も何かをお話を聞きたい」
「例えばどんな?」
「これからの展望、なぁにをすればいいの?」
「……」
私はそれは「言っていいものなのか?」と悩む。何故なら、彼女を信用するには多くの邪魔がある。だが、私はそれは「チャンス」でもあると考えた。
「あなたと私だけの秘密。または隠し事なら……話せます。それを聞いた瞬間……周りの子達のような生活は無理です」
「じゃぁ、サン姉ちゃんと一緒の生活になるんだね。くっそおもしろそう」
「……おもしろそう?」
「姉ちゃん、臭う。これから先にずっとずっとエライ事になるって思う。勘だけど」
「それは具体的に?」
「具体的にぃ~そんなのバカ戦闘狂だよ」
「…………」
「滅茶苦茶ショックな顔をしてるぅ~。でも、私を倒したんだからそうでしょ? 武人のような臭いもする。卑怯な戦いの中にも芯がある。他の子より血の臭いがすごいする。そう、集めてる感じ」
「はぁ……私は……そんな者では……」
「姉ちゃんの理想は『姉ちゃんの視点』。あの義手義足作成者の理想を全部事細かく知ってるならいいけど。姉ちゃんは知らないでしょ?」
「………否定はできません。少しだけ知っているぐらいです」
「なら、どうやって姉ちゃんはそんな感じになる」
私はアームが語ってる話に無邪気ながらも鋭いナイフのように突き刺さる。
「努力でしょうか?」
「努力しても、ここにいる子たちは無理だったよ?」
「それは個人では無理でしょう」
「そうだよ。個人では無理だよ」
「……アーム。何が言いたいの?」
「お姉ちゃんの手伝いしてあげる。あの3人より、絶対姉ちゃんに従った方がいい。臭う、出世コース。すでに4人の夢魔が四天王となるような、そんな雰囲気」
「何処まで考えれてます?」
「私たちを捕まえて、4人に飼育任せる。お義母さん、最初の娘。そして他の姉妹。疑似家族の掟を徹底的に入れて『管理』がしやすいようにする。そして、4人の姉ちゃんたちの妹分が世界に散って……繋がりを持ちながら暗躍する。なら、サン姉ちゃんにつくよ」
「……お義父様の計画ですね」
「やっぱそうよね? まぁ所詮、飼い主が変わるだけで駒だよ」
「自由意思のある駒ですよ」
「難しいよぉ教育ぅ。だって『個人の裁量権』を任せられるレベルってねぇ」
「アーム、偉いね。なら、私の妹分になってそのままお願いね。私はきっと忙しいから……」
「うぇ、間違えたかも……暴れまわれるから……選んだのに」
「暴れて迷惑かかけて怒られる。それでいいんです」
私は思う。そんな自由さえ、なかった子なのだから。
「………ああ、サン姉ちゃん。察した」
「何かしら?」
「問題児ばっか受け入れじゃん」
「そんなことは……」
「だって、私が妹だよ?」
私は頭を抑えながら笑みを溢す。
「ええ、分かってる。しぇんせぇいのように拾っていきます」
拾ってくれた事を思いながら、私の役目を考える。
*
馬車の旅は思いの外、順調である。食糧運搬車が運ばれており、合流。順次、送られる物資の多さに驚くばかりである。保存食糧ばかりではあるが、肉類など高価な物も流れており、非常に潤っていた。故に元気が出れば暇が出来るため、私たちは「妹分」として面倒を見る。
名前をつけ、完全な階級社会のような様相を得る。アームの言っていた。誰に着くかも分かってきた。
ワン姉様とニィ姉様はお義父様の力になりたいために騎士を目指しており、そういう才子を見定めていた。戒律、軍律を重きを置き。結果、優秀な子よりも非凡な子の面倒見をするワン姉様。それに漏れた子を拾うニィ姉様。
シィに関しては魔法知識、魔法力などを重きを置いており。童話などを聞かせてあげて興味を持つ子を集めていた。本読みの子が多くいる。
だが、それらを全く興味示さず。従わず、暗い子。一人がいい子などが生まれ、そして……悲しい事に「他の子からの目線が痛く」なる。
故に問題行動を行いやすくんるが、そんなことなく私の元に来る。会わない子は一人一人が我が強く。非常に気難しい子ばかりである。なお、喧嘩ぱやいのか……アームと殴り合っている子もいた。
元々、「戦うために」産み落とされた子も多いのだ。では、その子たちに私は「何をすればいいのか?」を考えて導く。
「アーム、あなたのその正面から突破する行動。非常に頼もしい。ですので、先人を切る。挑発する事を一緒にしなさい」
「………サン姉ちゃん。そこは怒らないんだ」
「戦争があります。ならば、誰よりも蛮勇が時に必要です。あなたには『その必要な場面』を学びなさい」
「うえ……勉強かよ」
「勉強ではないです。感覚で感じなさい」
「えへ、姉ちゃんやっぱいい。自由にやらしてくれる」
アームを特訓したあと、私の元には欠損した部位の子達が集まり、私の瞳を覗く。アームや私の義手義足を見て、自分たちの失った物が帰ってくるような気がしているのだろう。それに対して私は嘘を言う。「名工がいます」と嘘を言う。
私の知る先生は行方不明。故に、私のような動きを出来る義手義足が用意できるかは未知数だった。お義父様にも話はしているが。「検討中」の言葉のみ。
「アーム、あなたの夢は?」
「姉ちゃんに勝つこと」
「叶うといいわね」
「……無表情で言われると本当にぶっ飛ばしたくなる」
八重歯を見せながらゲラゲラと笑う彼女に数人の夢魔が近付く。そしてそのまま喧嘩して、元気を発散し、馬車の移動時間には馬車でぐっすりと眠った。
そんな生活は数週間で終わりを迎える。そう、私たちは首都に着いた。そして多忙な日々が訪れる。
*
到着後すぐに私をエルフ族長のお義父様が呼び出す。執務室ではなく倉庫に呼ばれた私は目を疑う。
「お義父様、なんのご用ですか? これらはいったい?」
倉庫の中には多くの簡易的な義手が所狭しと並んでいた。取り扱いに関した資料もあり、私を多いに困惑させる。アーム用の巨大な拳が岩のように鎮座している事からも誰の仕業かを察する。
「流石に驚かないか。ある奴が持ってきたんだ。たぶんサンの探し人だが……フィアに夢を探って貰ったが、代理人は夢と記憶が消えててわからなかった」
「……そうですか。残念です。しかし、わかりました。私がしなければならない事があるんです。宿題ですね。これらは」
「そうか、わかった。サン……問題児ばかりで困ったら相談しなさい」
「お義父様。お義母様に相談します」
「……うん」
私は倉庫を後にする。私は先生に教えて貰った事をそのまま教える立場へと変わって居ることに気付けたのだった。
「いつまでも逃げられるなんて……思わないでくださいね? 先生」
静かに情熱だけを燃やす。




