強制されない輝く傑作品
私は何人かを見捨て、一人だけ拾い。都市の北門までやって来た。そこでは数人の悪魔が忙しく動いており、数人の夢魔を導き馬車に乗せて行っている。商人が言っていた傭兵だろう彼らが暴れた雰囲気はなく。首を傾げた。
「サン、傭兵戦うつもりだった? 残念だねぇ」
「アームちゃん、どうしてかな?」
「傭兵はお金で雇われる。危険性が高ければ高いほどにいい。でも費用対効果で仕事を選ぶ。だから……寝返った。気をつけなよ~お金の切れ目が縁の切れ目だよぉ~ふひひ」
「肝に命じときます」
アームがケタケタと笑い。その笑い声に周りの悪魔たちの視線が集まる。そんな中で、3人の姉妹が私を見つけて駆け寄ってきた。
「サン!! 遅かったな!!」
「サンちゃん。大丈夫……じゃないね。その子を引き取るわ」
「……なんでサン姉ちゃん。そいつ捨てて来なかったの?」
三者三様の反応に背中のアームが答える。
「あ、雑魚ども。サン置いて逃げた奴ら」
「よいしょ」
ピリッとする空気に私はそのままアームを降ろした。「ぐへ」っと鳴いた彼女に対して私は近くのエルフの兵士にお願いする。
「へへへ、怒った? いい表情じゃん」
憎まれ役をする彼女はそのまま担がれていく。ピリッとした空気で3人が私に問う。
「なぜ、助けたの?」
「せぇんしぇいの被害者です。武器としてしか使われて来なかった彼女に義手の本当の使い方を教えたいです。私の一人よがりです。責任は取ります」
「まぁ、こういっているし。いいんじゃないか? 俺も再戦したい……負けちまったからな。ニィ、シぃ。いいな?」
ワン姉様の圧力に二人は黙り、私はお辞儀する。そして、頭を回転させる。
「アームのご主人である奴隷商人は仕留めました。また、『雇った傭兵』を向かわせた旨も聞きました。今のここの状況では戦闘の形跡はないですが?」
私の質問にはニィ姉様が苦笑いで答えてくれる。
「お義母さんがお義父さんの懐から大金出したのよ。雇い返したのね。今は傭兵同士で呼び合って仲間たちを回収してる。見捨てた子も背負って運んでる」
「……」
「だから、安心していいよ。馬車も買い込んでるし、後はここを発つだけ」
「こんなにうまく行くものなんですね?」
「お金の力です」
「でも、どうしてお義父様はそんなお金を?」
「魔国統一魔王になろうとした時に用意した準備金らしいですね。それよりも腕……大丈夫?」
「腕と足はもう交換が必要で……あっ」
ガシャン
私は気が抜けた瞬間に手足の感覚がなくなり、手足の義手義足がパーツが砕け、割れ、チリチリに地面にばらまかれる。今まで耐えてたのが弾けるように私はペタンと座った。いきなりの状況に姉妹は驚く。
「……ダメそうです」
「はぁ、そうか。殿は任せろサン。行くぞニィ、シィ」
「さんおねちゃんと一緒がいい!!」
「サンちゃん、行きましょうねぇ~」
ワン姉様はそのまま姉妹を連れて前線へ向かう。そして、私の目の前に一人の女性が立つ。
「サンちゃん……お疲れ様。首級おめでとう」
「お義母様」
「いまから殿戦に私は参加します。なので……全指揮権を委託します。では、頑張ってね」
私の頭を一なでして立ち去るお義母様。その背は何処か既視感があり、だけど初めて見る姿だった。夢で見た、誰かの面影を。先生と見た夢を思い出す。
「ああ、先生……やっと終わるんですよ」
座る私に傭兵の悪魔が背負い馬車に連れてきて貰い義手義足を換装する。戦闘は無理でも動けるまでのなり、私はお義母様の言伝を遂行するために馬車間を動き回るのだった。
*
「エルフ族長……急報です」
「何かね?」
「無事回収でき、帰還中のことです」
「そうか、わかった。では問うが……いつの情報かな?」
「すいませんでした。3日前に伝令がお越しになりました」
「わかった。では、出迎え準備を怠らずにな」
「はい」
私は報告に上がったエルフを見つめたまま。部屋の窓から空を見上げる。そして、耳元に囁く声が聞こえた。3女の声は聞き取りやすく、そして女王陛下となられる彼の者を思い出させた。
「お義父様、早馬で先に病気患者を護送してます。出迎えは治療出来る用意でお願いします。また、食も細く。胃に負担のない食事も必要です。携行品では固く。水で溶かしてやっとです」
「わかった。用意しよう。だいたいの人数は?」
「数えた人数は当時、354名……他は絶命しており見捨てております」
「思った以上に少ないね。万はいただろう?」
「『売り物前』『非売品』『商談中』の夢魔だけです。すでにご主人のいる夢魔は『自分の足で来ない』場合は見捨てる事になっています」
「わかった。そう命じた。伝令、今来たよ。殿とは合流できたかい?」
「お義母様はまだ都市に残っております。逐次……解放するとの事です」
復讐なのか、フィアからの連絡はない。ただ、暴れ回っているのかもしれない。囮として。
「わかった。では、帰ってくるのを楽しみにしよう」
「はい」
囁き声がプツンと切れる。そして、私に新しい時代を感じさせる。3日かかっての伝令が、この一瞬で解決するのだ。
「夢魔はこれから……魔国に分布し、独自に発展し『特権』を持つだろう。情報の速さと早さ。全てにおいて『必要不可欠』になる」
莫大な戦争資金を失った。しかし、私は得るものがあった。新たな時代への金鉱山を。笑いが止まらない。
「では、そろそろ魔王には引退して貰おう」
私は計画を予定する。簒奪予定を。
*
「ふぅ……報告大丈夫でした」
揺れる馬車の上で私は隣の子と顔を見せ合う。アームは危ないと思われており、両腕がない状態だ。
「なんで、そんなこと出来るの?」
「家族だからです」
「家族? ご主人様じゃない?」
「ええ、家族です」
「…………」
彼女は不思議そうな目で私を見つめる。それに対し私はお義母様の表情を思い出しながら優しく微笑む。
「こ、こわ!? こわい!? え、なに!? 私にも恐怖ってあったんだ」
「…………」
アームの反応に私は素直に傷つくが。指摘されたことに感謝を示す。鏡で練習する必要があるようだ。
「家族ってそんな表情するんだ」
「……しませんよ? どんな表情でしたか?」
「え? 口裂け、怒り顔」
「怒っていいですか?」
「え、怒ったんじゃないの?」
私は彼女の頬をつねり、大きくため息を吐いた。「この子は苦手かもしれない」と思うのだった。




