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機械仕掛けの壊れた売人と傑作品


 機械仕掛けの売人、下半身は右足だけ。上半身の左半分と右手の一部。眼球と背中も、先生の手が加えられている人。先生は私のように失った四肢を復元代用できる方。そして、大きくなった聡い私が予測出来る事がある。


 復元代用品を武器として売買し、改造を施して「兵士」にする事も行っていたと思えるのだ。


 後ろの子は「改造された子」。前の売人は「自ら改造された方」だろう事が雰囲気で感じ取る。


「人形遊びが趣味だったとは知らなかったなぁ~夢魔を改造するのは『好き好んでやっていた』のだろうな」


「……」


「お前のご主人はよくやってくれた。夢魔の再利用、兵士化を簡単にしてくれたからな。何処にいる、技師は?」


「私も知りません」


「ふん、そうか。まぁ、いい」


 激しい歯車の軋む音と共に巨体が迫り、腕についた鋭利な剣を覗かせる。仕込み剣は熱を持ち、赤熱した。


「脳ミソだけ残ればいい。おい、アーム。寝てないで抑えろ」


「……げほ……かは……ひゅ……」


 私の衝撃波で呼吸系にダメージが行ったらしく、喋られないようになっている。それでも立ち上がろうとする彼女に彼は冷たく答える。


「なんだ、壊れたか。じゃまだな……」


「……」


「じゃぁ俺一人で殺るか。商売道具も奪い返さないと行けねぇ……全く。傭兵め、金だけもらって仕事しねぇ。だが、金ヅルを見つけたのはうんがいい。『機構兵団』を発注出来るってもんだ」


「『機構兵団』?」


「先生に聞いてないのか? 改造された夢魔を使い。この都市を治める。その後……『魔王』に取り入り、我々がお金を貰い量産していく……予定だった!!」


 剣が迫り、そのまま切り払われる。アームから離れ、私は様子見をする。


「だが!! 奴は逃げた!!」


「……」


「ろくな奴に技術を教えずにな!! だから、探し……見つけた」


 私は避ける事に徹する。両腕から出される赤熱した仕込み剣の先から火花が飛び散り、それが指向性の魔弾として私を襲い、皮膚が焦げた。残った武器は片足の杭のみ。戦うための義手じゃない事がここまでの不公平を生み出す事に私を苦しめる。「先生はそんな人ではない」を叫びたいほどに。


「戦うための物じゃなく。愛でるために用意された物で勝とうなど、無理な話だ。多くの機能を台無しにしてその細さだ」


「……フォルムは関係ありません。質量が重い場合、機動性に問題が出ます」


「威力は出ない」


「……それはどうでしょうか?」


 私は意固地になる。否定をするために。


「……その杭を使うか?」


「はい」


 私は誘いに乗る。信じた武器を打ち込むために近づき素早く裏返して蹴ろうとした瞬間だった。目の前にアームと言う女の子が捕まれ盾にされ、私はそれを蹴ってしまう。そのまま距離を離し、苦しむアームに笑う商人。


「こいつは俺のだからこうやって盾になる。そのまま腹を裂いて攻撃しなかったな? 何故だ? お前は『見棄てただろ』?」


「……」


「助からない、苦しんでいる物を見捨てただろ?」


「…………」


「こいつも助からない。なら、殺しても良かっただろ?」


「わからないんです。ええ、わからない」


 挑発に私は『怒り』を覚えず、『悲しみ』も覚えず。ただ、静かな『敵意』だけが湧く。


「一瞬だったから、やめましたけど……助からないわけでもなく……取捨選択をするなら。見込みがあるのかもしれません」


「人形みたいな回答だな。ふん、こんなものがほしいならくれてやる!!」


 大きくアームを投げつけてくる。私はそれを体で『受け止めてしまい』一緒に道路を転がる。そのまま、大きい足が倒れた私を踏みつけようとしており、巨体に似合わない素早さに驚かされたまま。私は足を振り上げて杭を打ち出す。


 股間を狙った杭はそのまま当たらず避けられて空に飛んでいく。


「あっぶね」


 距離を離せた隙に転がって壊れた義手で体を持ち上げて立ち上がる。変な方向に曲がった義手だが……まだ稼働する。


「時間稼ぎの臭いがします。余裕が見受けられます」


「そうかそうか……わかったか。まぁもう遅い。君が率いれた彼らは『金で買った傭兵』だ。今頃、ノコノコと君たちを蹂躙しているだろう。ここでは寝返りは許さない。甘いんだよ」


「……そうですか」


 私は大きくため息を吐き、お義母様からいただいた魔石を震える義手で口に含んで噛み砕く。熱い、熱い魔力と魔法のイメージが沸き上がる。魔法の才が薄い私には非常に今は大切な『強化剤』である。


「なら、気にせずにボスを仕留めれば解決ですね。しぇんせいは……あなたとの取引をやめたんです」


「それは俺が決める。今更、あいつが真っ当に生きれる事はない。お前は知らないからそう言える。アームの腕も、『あいつ自身が斬ってつけた』。失敗したのは捨ててな!!」


「……」


 胸がいたくなる。罪を見せつけられていたくなる。想像が豊かだからこそ……邪念がつきまとう。


「あいつはなぁ……夢魔を改造するのも殺すのも下品だったぜ?」


 だが、それよりも強くなる想いもある。


「それがなにか? 関係ありますか?」


 私は考える。「ああ、私はなんて醜く。そして、酷く……いい子ではないのでしょうか」と。そして、私は願う。信じている。私の義手を。







 お腹を蹴られ、酷い痛みが落ち着き。体の節々が壊れているのに意識はハッキリとして、転がっている。ただご主人様と同じ義手の夢魔が相対しており……変な空気が一瞬で熱をおびたのがわかった。


 私は……変な子だ。他の子と違い過ぎて目立った結果。腕を失い強くなった。そんな私をこき使うご主人様に私はいつもいつも楽しませていただいていた。


 多くの強敵と戦ってきた。壊す感覚は凄く震える。壊されるのもワクワクした。だが、、今は違った感覚があった。焦燥が私を包む。


 私を一撃で屠った夢魔が金色の髪を靡かせ、義手を撫でた時。動かなく壊れていた筈の義手が拳を握る。ご主人様は気付かない。私はわかる。「空気」が変わった事を。


「ご主人様? 逃げた方がいいよ?」


「なんだアーム。復活したなら手伝え?」


「……うん」


 動かない体を動かしたい。震えるひざが憎い。美味しそうな臭いがするのに「噛みに行ける体がない」。非常に悔しい思いをしながらも目の前で起きた事は非常に魅力的に見えた。


 夢魔でありながら、炎の翼が一瞬で生まれてその炎が壊れた右義手に集まる。その瞬間、壊れていた義手で一本一本の炎の糸が義手を支えていき、纏まり一本の腕として形を作る。失った拳さえ、炎が壊れたか部品を集めて組み立てる。それは左手も同じようで歪な義手が誕生する。しかし、その劇的な変化が起きている筈なのにご主人と夢魔は静かな会話を続けていた。


「見えてるの私だけ?」


 それを見えているのは私だけ、私と夢魔だけが状況を把握する。





 腕が熱い。そして、鮮明に腕が「ある」事に私は気が付く。砕けた部品がただくっついただけの左手。つたない補強だけの右手。その2つに私は頷き。足を動かした。


 素早い動きに……彼は私を見失う。正面から戦うのは愚策。動きについて来るには「重い」のだ。


「ちょこまかと!!」


 動きを見て、腕を信じて私は背後から近づく。


「そこか!!」


 大きい大きい鉄球のような右拳が私めがけて振り下ろされ……腕の関節部分に私は右拳を当てる。振り下ろす腕の関節に食い込み、球体の関節が砕けてその先が千切れて飛ぶ。ハンマーのように振り下ろしたゴーレムのような腕は壊れ、商人は驚いた表情でそのまま後ろに下がった。


「な、なにぃ!? 壊れただと!?」


「誰でもそうですけど。関節はどうしても弱いんですよ」


 まだ拳は握れている。砕けた腕も何故かある。私は悪い子。そして、託された子。


「く、くるな!!」


 逃げる商人の足の義手を蹴り壊し、体重を支えきれずに倒れる。そのまま私は一本一本義手、義足を壊していく。忌々しい物を先生の代わりに精算する。


 うるさい商人の命乞いを私は雑音として聞かず。残った部分は首だけになる。腕は壊れきっており、ねじ切れるほど力がでない。足もリミットが来てガタガタである。ただ、物を掴むだけなら出来そうだ。


「良いところにありますね」


 なので丁度良く落ちていた戦斧を拾い上げて振り上げる。四肢をもがれて動けない商人は何かを言っているが聞き取れない。


「シェンセェイは嫌だったんですね……こんな使い方されるの」


 そう、思い込みながら私は振り下ろした。





「おい!! 止めろ!! 動けるんだろ!?」


 私は一部始終を見ていた。義手が直ったと思った時には動き出し、躊躇なく相手の不得意な機動力による翻弄を見せた。そして、的確に四肢を破壊して無力化する。


 ご主人は叫ぶが一切何も感じていないような表情で義手義足を壊す。先に壊すのがいたぶっている訳でなく。ただ、狙いのような……今さっきまで全く違う様子に背筋が冷える。


「良いところにありますね」


 そんな私の目の前でご主人が殺されようとしていた。命乞いや私に助けを求めるが、私は痺れて動けない。脳が熱くなる。弱そうな見た目なのに、壊れた両腕なのに、壊れた人形のような感情の読み取れない姿なのに。私には強い意志、強い人に見える。


 鼓動が高鳴り、ヨダレを垂らす。


「シェンセェイは嫌だったんですね……こんな使い方されるの」


 それはきっと義手義足を作った名工の事を言っているのだろう。私は理解する。そして、斧を高く上げて振り下ろした。処刑人のように断頭し、斧を手放した瞬間。彼女の両腕はバラバラと砕けて、異音を発する。ご主人様はそのまま絶命し、私だけが転がっている。


「ああ、ああ、弱いなぁ」


 転がりながら、大きいため息を吐いた。壊せると思ってた夢魔はどうみても一癖も二癖もある。


「……アーム。立てる?」


「?」


「ご主人はお亡くなりになりました」


「助けるの? 見捨てればいいじゃん。他の人と同じようにさぁ~敵だよ」


「あなたは生き残れそうです。それに……目的は夢魔解放です。そこにはあなたも含まれます」


「あの両腕がいいんだけどなぁ。まぁ……面白そう」


「そうですね。飽きさせませんよ」


 壊れた義手で何とか私を背負おうとし……私は立って背中に飛び乗る。ご主人様よりも面白そうな人に見え、私は壊れた肘で捕まった。


「ねぇねぇ、名前教えてよ」


「サンライトです」


「私はアーム!! よろしくぅ!! 新しいご主人!!」


「……ご主人様ではないです」


 背負われて初めて知った事がある。人肌は違う気持ち良さがある。








 











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