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晩餐


 早朝、お義父さんの前に私たち姉妹は並ぶ。各々の武器と軽装鎧を着て、直立不動で立つ。私はいつもの使用人服。理由は鎧を着る事が出来ないからだ。


 質量ある武器故の質量過多。体の成長期である。これ以上、義足の負荷がかけられないのだ。鍛えられない事がここで響く。ただ、鏡を見つめて髪を解くのは好きである。金色の汚れのつかない長い髪が好きだ。しぇんせぇいに見せてあげたい。


「サン……上の空だが、話を聞いていたかい?」


「はい、遊撃隊として戦う旨はわかりました」


 上の空だったが、私の耳に内容は入っている。


「……何か質問を思い付いていたのか?」


「はい、お義父様。4人で本当に『務まるのか』と思っております」


「それに関してだが。遊撃隊とは別に支援者部隊と聖歌隊面々が出る。数は多い。そう、護衛の任務を遂行するために囮と敵を撹乱が君達の任務だ。終わり次第、護衛に参加して都市を脱出。そこからは首都まで長い道だ」


 黙っていれば知り得た情報だった。上の空はいけない。今はお義父さま直々の最終確認会議だ。


「首都にはフィアを含めて待機組がいる。後は彼らに任せればそれで終わりだ。非常に厳しい任務、そして……売人などから奪う行為。夢魔解放に政治的目的を達成するために暴力を使う。『非常によろしくない作戦』だ」


 「非常にやりたくない」と言わんばかりの言い方に私達に情があることが伺い知れる。危ない事を知りながら送り出すのだ。


「わかっております。ねぇ皆さん?」


「はい、サン姉ちゃん。わかってる」


「そうね。ワン姉さんも私も元々、暗殺者です」


「はは、現場離れて腕鈍ってるかもしれないね」


 緩い空気。身を引き締め直さないといけないのに私たちは笑みを溢す。


「……すまない。笑って送り出せばいいのに。すまない……私のために死地へ行けと命令するのを」


「そんなことないです、お義父様。私たちは最初から目的のために集められた。そんな私たちにここまで愛してくださったお義父様に『答えたい』と思うのが私達です」


「サンに言われてしまったね。ワン姉さん」


「いや、私は口下手だからそう言うのはサンに任せる」


「シィもサン姉ちゃんに任せる」


 私は青い宝石の右目でエルフ族長をお義父様を見つめ、代表として伝える。


「4人全員で帰って来ます。お義父様」


「ああ、待ってる。君達の夢のためにな」


 胸に当てる敬礼をし、私たちは部屋を出る。そして、そのまま私は義手を触りながら絶対に生き残らせると一人で決めるのだった。






「シィ姉さん起きて」


「ん……」


 私は夢を見ていたようで会議の内容を反芻していた。緊張しているのだろうと自己完結し、起こしてくれたシィを見る。


「じゃぁ、戦前に何か食べたい物ないですか?」


 お義母様の口から言われ、ワン姉様が元気よく手を上げた。馬車の中で用意は難しいだろうから、寄った小さい村で頼むのだろう。


「お肉が食べたいです!!」


「はい」


 お義母様は茶色の紙に魔力を込めた指でメモを取る。次にニィが手を上げる。


「シチューが好きです」


「ニィ姉ちゃん……昼食だよね」


「好きなのだからいいじゃない」


「じゃぁ、私はサン姉ちゃんを食べればいいの?」


「シィ、ごめんなさい。四肢は既に……」


「サン!! やめてよ、その冗談。背筋が冷えるぞ」


 少しばかり、過激過ぎたようだ。シィも黙ってしまった。


「な、内臓食べます……」


 いや、覚悟しなくていいよ……シィ。


「レバーですね」


「あっ違う。お義母様!!」


「しってます。なんですかシィ?」


「えっと……えっと……オムライス……」


「オムライス?」


「お義母様のオムライスが食べたいです」


「ふふ、わかった。最後にサンは?」


「私もオムライスがいいです」


「サン姉ちゃん?」


 私はシィを頭を撫でる。


「あっずるい。じゃぁ、私も!! お義母さんのオムライスがいい!!」


「俺もお義母さんのオムライスがいいなぁ」


「あら……いいの? シェフも呼べますよ? お店だって寄りますよ?」


「「「うん」」」「はい」


 お義母様はメモを置いて袖を捲る。満面な嬉しそうな笑みを私たちに向けて。


「わかった。今日の夕食はオムライスにします。保存庫に確か……いっぱい用意したので食べて皆さん……頑張ってくださいね」


 私たちはなんとも子供ぽいのを願い。そしてお義母様は叶えてくださった。







 懐かしい夢を私は見ている。それはずっと昔に見た光景だ。


「グレデンデ様、お味はどうですか?」


「美味しい。美味しいがそれがどうしたんだ?」


 4人でお義母様とお義父様の様子を伺う。非常に面白い光景である。「お義父様は気付くだろうか?」と私は思う。


「いいえ、なんでもございません」


「……自分を含め6人分作るのは大変だったろう」


「そうですね。でも……たまにです。毎日じゃありませんし……よくわかりましたね」


「味付け、うまくなったな料理」


「……はい」


 私は姉と妹と顔を合わせる。そして……頷く。すごくすごく温かいと。私はこの夢が好きだった。


 お義母さんの姿が恋多き乙女の姿に見れ、私自身の胸を熱くする。私もいつか……料理を出せる日がこればいいなと憧れるのだった。



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