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日常..


 酒場の一角、ある日。親友と一緒たむろしていた。


「トキヤ、話がある。君にしか聞けない事なんだ」


「なんだ?」


「君はどうやって指輪を選び。贈ったんだい?」


「そっか、そっか。おーいリディア!!」


「やめ!! やめろぉ!!」


「あー何でもない何でもない」


「くっ……君って奴は………油断も隙もない」


「指輪かぁ~そうだな。指の大きさは分かるか?」


「分かる。こっそり調べた」


「探しに行こう。一人で入る勇気もないだろ?」


「ありがとう。よく察してくれた」


「そりゃ長い付き合いだし。おーいお二人!!ちょっと二人で出るわ」


「はーい。いてら~」


「いってらっしゃい」


「仲がいいな彼女らは」


 優しく彼女らを見る。ネフィアに価値観を教えてもらいながら頑張って人に近付こうとするアラクネの姿は可愛らしかった。確かに長髪で上半身のスタイルもいい、変な話が。人間のようで違うギャップが好ましかった。


「ネフィアはランスをよく知ってるし、緩く生きてるようで女としては完璧にこなしてるから先生と弟子みたいなもんだよ」


「お、男だよね? 聞けば……だが……」


「男だった。俺が女にした」


「君は変わり者だ」


 そうだろう。だが、あんなに可愛ければ関係ないだろうと思う。


「蜘蛛を嫁にするやつに言われたくない。胸だろどうせ」


「親友であろうとバカにすると怒るぞ?」


「リディアに指輪の事をバラすぞ?」


「足元見るのは本当に得意だね」


「元黒騎士だからな」


「ああ、本当に黒い」


 昔からの付き合いかたに懐かしさを覚えながら酒場を後にした。





 残された私たちは酒場で勉強をやめて彼らを見た。


「本当に仲がいいな~彼はランスロットは本当にトキヤ殿が好きなんだね」


「分かるんだ」


 結構、分かりやすいかもしれないが。リィデアは魔物だった。そこが分かるのは成長している証だ。


「分かる。私に向ける笑顔より、子供っぽい」


「そうだよね。トキヤもそう。昔はさ、ずっと堅い表情だったんだ。そう、使命感が顔に出てたかな? 今はやっと。彼の本心からの笑みを見ることが出来るようになったね」


「でも、仲がいいのは妬けませんか?」


「妬けないかな。ランスロットには同情できるから。もし、運が悪かったら彼は死んでいるしここまでの冒険者になってない」


 現に仲間を殺して国外追放で免れてるのは運がいい。処刑されてしかるべきだ。


「全部、親友のお陰ですよね。妬ける」


「大丈夫。あなたの夫さん。女の体が好きだから………むっつりさん……だね」


「どこが好きなんです?」


「胸と腰、あなたのお尻とか、そのちょっと変わった趣味のお持ちですよ」


「お尻? このお尻?」


「そそ」


「教えてください。彼を食べられる機会です」


「あら、食べちゃうの?」


「はい、魔物ですから。私から、行こうと思います」


 意味はなんとも淫乱な事だろう。食べるとは元魔物らしい。


「ふふ、じゃぁそうねぇ~彼は胸が大きいのが好き。対比で少し細い腰とかも堪らないらしい。それとね、こう。上半身が綺麗な、あなたの下半身の矛盾が皇子なのにこんな魔物に愛を誓うと言うことが『帝国の冒涜的で黒い感情が心地いい』と言う変態さんです。そう背徳感に囚われてる」


 婬魔の能力で相手の好みを探れるのだ。素晴らしい。


「ふむふむ。攻め方は?」


「好きに攻めればすぐ。魔境に王子は堕ちると思うよ?」


「わかりました。今夜頑張ってみます」


「ふふ、足あげ運動はしなくていいよ?」


「やりません‼ もう、あんな恥ずかしいことはしません」


「そそ、面白い求愛行動だったよ~何度もするのに気付かれてなかったけどね」


「ああああああ!!!」


「ははは」


 顔を押さえるリディアと私は酒場で笑い合うのだった。




 宝石店。ランスロットが目まぐるしく見回した。


「ど、どれがいいんだい?」


「やっぱ、わからないか………皇子の癖に……宝石は見てきただろう?」


「そ、そうだが。あまり、こう。女性に贈るってことは初めてでして………それも指輪となると」


「モテるから貰ってばっかだったな」


「き、君もじゃないか!! 貰ってばっかりなのは!!」


「俺はまぁ悲しませる事ばっかだったさ。『好きな人がいる』てね。それでも気を引こうとするのは悲しくなるね。滑稽滑稽」


「酷いな、君は………」


「酷いさ。だからとっとと新しい人を見つけろってね。思うよ」


「優しいのか酷いのかわからなくなるな。で、宝石はどれがいいんだい?」


「俺は赤いガーネット。炎のように身を焦がす恋だったからな。お前の嫁さんの髪色でアメジストでもいいのでは?」


「紫水晶、アメジストか………よし!! それで行こう!!」


「決めるのが早いな」


「僕は何をあげた方がいいかわからない。諦めたよ。すいません、この宝石で指輪をお願いします」


「はい、かしこまりました。夕刻までに仕上げますね」


「ランス、いつ渡すんだ?」


「今夜、夜にしようと思う」


「そっか、末永くな」


「はは、君もね」


 親友同士で仲良くなと言い合うのだった。



 酒場に戻ると……喧嘩していた。


「いいえ!! ランスロットの方がお強いです」


「そんなことないトキヤの方が‼」


「ただいま、ネフィア。いったい何を言い争ってる?」


「リディア、ただいま。どうしたんだい?」


「「こいつが!!」」


 両方が指を差す。


「よし、先ずはリディア殿から話を聞こう」


「リディア、話してくれ」


「こいつが、自慢で世界最強の騎士は主人言い出すんだよ‼ 違うと思うの!!」


「違わない!!」


「ああ、なるほどねぇ」


「僕もトキヤは強い騎士だと思うけど。やはり騎士を真似る魔術師の方だと僕は思う」


 ランスロットの評価は正しい。現に風の魔術使いだ。


「まぁ、魔術師だからな。騎士はおまけだ。憧れ。だから世界最強はこいつでいいよ」


「と、トキヤ!?」


「ネフィア、何処の世界に暗殺が得意な騎士がいる? 騎士道は持ち合わせていない」


「トキヤ。僕はそれもどうかと思うよ。魔術師だけど暗殺が得意は流石に違うかな? 君は職を替えるべきだ」


「例えば、なんだよ?」


「勇者かアサシン」


「ああ、私もランスロットの意見の賛成です。魔王を倒せる者と言う意味で彼が最適ですね」


「勇者ねぇ~昔から、しっくりこない」


 勇者なんて職はない。結局、英雄と同じだからだ。英雄的な事をしろと言うのだろう。


「トキヤ。私って倒されたよね。夜……暗がりの中。私を倒し、女にした勇者。流石だよ……勇者は魔王を倒せる人。押し倒され負けを認めさせる素晴らしい技術者」


 技術者言うたぞこいつ!?


「ね、ネフィアさん!? それって!! 私はそんな事で倒せるなんて言ってませんけど!?」


「ネフィアさん!? そ、それは!! その!! やはり………ああ。僕は何て事を考えるんだ!!」


「…………ネフィア」


「嘘は言ってないでしょ?」


「ほっぺ、つねるぞ?」


「何で!? 私、婬魔!! 言っててもおかしくないよ!?」


「都合の良いときだけ婬魔のふりをしない!!」


「いひゃいいい!! ひたいい!!」


 俺は柔らかいネフィアの頬をつねる。


「もうちょっと。時と場所を弁えろ!!」


「痛たかった………ヒリヒリする。時と場所を弁えたらいいの?」


「ああ、いいぞ」


「わかった。時と場所を弁えたらいいんだね。そういう辱しめを行う行為だから大丈夫って事だね?」


「おう、もう一回痛めてやろうか?」


「どうぞ。痛いの気持ちいいから。演技だよ~もっとちょうだい」


「お、おう!? お前!?」


 背筋が冷えた。こいつマジかよ!?


「冗談でした。まだ痛いのはなれない~」


「焦った」


 痛みも快楽とか無敵にしか思わなかった。


「まぁ追々ね?」


「真っ当でいてくれ………はぁ………」


「無理、だってなんでも愛おしいから」


 昔のこいつが見たらどう思うか………ああ、真っ当に生きてくれ。


 俺は心から願うのだった。





「はぁ……二人ってスゴい所まで………」


「そ、そうだね………部屋は狭くないかい?」


「大丈夫。トロールの種族は私より大きいみたいだから」


「たまたま、宿屋にトロール用があって良かったね」


「ええ………」


「………………」


「………………」


「あの!!」


「ちょっといいかな!!」


「「……………」」


「えっと。ランスロット何?」


「リディアこそ」


「ええっと………ランスロットが先にどうぞ」


「リディア。僕は紳士になろうと努力しようと思う。なのでここは女性に譲ろうと思う」


「ランスロット。都合が良いときだけって言葉をトキヤが言ってたね」


「………………」


「さぁ!! 言うのです‼」


「………これを君に」


「小さい石?」


「に、人間は奥さんになる人に指輪を贈る風習があるんだ。これはその指輪」


「えっえっと………」


「左手をお嬢様」


「こ、こう?」


「これが、親指、人差し指、中指、薬指、小指で薬指に嵌めるんだ」


「あ、ありがとう。よくわからないけど………なんだろう………胸が熱い」


「うん。僕も暑い。つけといて欲しい。それは君が僕の奥さんだという証拠になるんだ」


「これが、うれしい!!」


「僕の用事は済んだよ。さぁ、君の用事は?」


「私の用事は、これ………」


「えっ!? どうして服を脱ぐんだい!?」


「ランスロット!!」


「えっ!? えっ!?」


「いただきます」


「ま、待ってくれ!! 心の準備が!!」


「待たない♥」


「あー!!」





「ねぇ、トキヤ。今ごろ二人。何してるかな?」


「指輪を渡してるんじゃないかな?」


「指輪?………もしかして今日、買いに行ってたの?」


「そうそう」


「へぇ~さすが王子さま………覗いてみる?」


「音を拾うだけにしなさい」


「はーい………音拾い………あっ」


「どうしたんだ? 口を押さえて赤くなって」


「ト、トキヤ…………」


「………もしかして」


「そ、そう。食べられてる……」


「お、おう。聞くのもダメだったか……てか、お前。何故赤くなる」


「他人のとか上級者だよ~無理…………自分の声だって無理なのに」


「無理なのか?」


「すっごい恥ずかしい。終わったあとに頭を抱えるぐらい」


「へぇ~………なんだ。可愛らしいじゃん」


「と、トキヤ?」


「ちょっと。いいかな?」


「えっ………んぐ!? ん……んんん……ん……………ぅ」


「よし。いい顔だ」


「卑怯、こんなキスされたら………」


「されたら?」


「…………いわない」


「言わすまで、するだけだ」


「け、けだもの」


「逃げれるぞ? 逃げるのか?」


「うぅううううう………えっと。や、優しくお願いします」


「わかった。激しくな」


「ちがーう!! ああ!! トキヤがスイッチ入ってる!! い、苛めないで‼」


「無理」


「…………ああ、今日も泣かされちゃうんだ……ああ」


「昼間の威勢はどうした?」


「粉々になりました………」


「昼間は元気な女の子なのにな。夜は無垢な少女か?」


「…………トキヤがそうやって教育したぁ~」


「してない。勝手に弱ってるだけだ」


「むぐぅ」







「ランス、お前。起きてから鏡見たか?」


「なんだい? 何かついてるかい?」


「ランス、見てこい」


「リディア。やり過ぎです」


「だ、だってですね!! ま、魔物ですから………ごにょごにょ」


「わかった。見てくるよ」


「リディア。昨晩楽しみすぎ」


「ごにょごにょ」


「ネフィア。お前もな」


「わ、わたしは~そのぉ~婬魔だし~」


「そうだな。婬魔だな」


「トキヤ。やめて……そんな笑みで私を見ないで」


「ネフィアさんもお楽しみで?」


「も、もちろん!! 私が主導権を握ってね!!」


「……………にやぁ」


「ネフィアさん? 汗かいてますけど?」


「はははは………ベットの上じゃただの少女です」


 ランスロットが鏡を見た。


「あああああああああああ!!」


「ああ、ランス。頭を抱えてどうしたんだい? キスマークがいっぱい、つけて」


「何故、皆が僕を見ていたかわかったよ!! リディア教えてくれよ………」


「恥ずかしくて、すいません………」


「ネフィア。回復魔法」


「はーい」


「………慣れてますね」


「ネフィアがな。つけまくるから」


 アラクネが申し訳なさそうにネフィアに頼んできた。


「ネフィアさん。私にも魔法を教えて貰ってもいいですか?」


「いいですよ。魔法では無くて奇跡ですが。魔法です」


「???」


「あまり気にしなくていいです。愛する人にだけの特別製の魔法なので効果は高いと思います。風穴空いても大丈夫です。実証済み」


「お願いします」


「ランス。やったな!! これで心置きなく楽しめるぞ‼」


「トキヤ。君………奥さんと似てるって言われないかい?」


「キスマークつけていた奴に言われたくない」


「…………ぐぅの音もでない」


「まぁ、仲が良いのは良いことだ」


「そうですね。良いことです。昨日、ありがとう」


「お安い御用さ」


「本当に僕は頼ってばっかりだ」


「ランス、親友はそんなもの」


「そうですね。そんなものですね」


 俺たちは奥さんを見続ける。自分達は似た者同士。どうしようもない程。姫様が好きなんだろうとわかり合った。







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